好きな人が善でも悪でも
最後の審判が起こっている
空が割れた
天使と悪魔が降りてきて、町中で叫んでいる
「善なる者はこっちだ!」
「悪なる者はあっちだ!」
僕はぼんやりしていた
スマホを握りしめ、通知を待つ指先が震えている
さっきのダイレクトメッセージ
「いま審判されてる笑笑」
そう送ってきた君から、もう返信がこない
アイコンは小さな自撮り、名前は「めたも」
地面が揺れる中、僕は君の姿を想像する
小さな画像で顔しか見た事がないのに
でも実際に、見た事がある気さえする
君が善か悪かなんて、僕にはどうでもいい
こんな事になる前に、好きだと言えばよかった
会ってみたかった、触れてみたかった
天使が叫ぶ
「そこの者!汝はどちらだ、善か悪か!」
僕は答えられない
だって、今はそんな場合じゃない
「めたも」から、まだ返信がこない
世界の終わりが近づいている
最後に僕は言わなければならないのに
悪魔が叫ぶ
「汝の罪を告白せよ!」
しつこいので僕は言った
「アイコンだけで女の子を好きになったこと」
悪魔は首をかしげ
「それは罪なのか?」
なにも分からない、君から返信がこない
君が善か悪かなんて、僕にはどうでもいい
君が善でも悪でも、何も変わらない、好きなんだ
「めたも」に、ただ、会いたかった