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140字で唸らせる「超文章塾」 第2回【イベントレポ】

「140字で唸らせる『超文章塾』」とは?

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2019年10月に実施した第一回の人気を受け、待望の実施となった「140字で唸らせる『超文章塾』第2回」。
「超文章塾」は、編集者・作家の川崎昌平さん、文筆家・書評家の三宅香帆さんに、事前に提出した文章を添削してもらえるというなんとも手厚いイベントです。
第1回の「好きな本のレビュー」に続き、第2回の事前課題のテーマは「好きな映画のレビュー」。
寄せられたレビューは、恋愛映画からアクション映画まで幅広いジャンルの映画を対象とした、個性豊かなものばかり。様々な文章に対するお二人の添削が見られるのはもちろん、普段観ないような映画の情報を知ることもでき、とても充実した時間となりました。

オンライン講座の受け方

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「小学館カルチャーライブ!」初のオンライン講座でもあった今回の講座。
まずはオンライン講座の受講の仕方をおさらいしましょう!

1. 受講申し込み後に送られてくるメールに記載の視聴用URLにアクセス
2. 同メールに記載されているパスワードを入力し、「動画を見る」をクリック
3. 「▷」ボタンをクリック! 開始時間になると講座が開始されます

講義動画視聴までのステップはこれだけです!
動画は同様の手順で講座終了後1週間は何度でも視聴することができるので、講座実施時間に予定があっても後から受講でき、またメモを取り忘れたところを見直すこともできます。もちろん、一時停止もできるから忙しい人にもぴったり。

川崎さん、三宅さんによる課題の添削・解説

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講座では川崎さんと三宅さんが手分けをして、受講者全員の課題を一つ一つ添削・解説してくれました!
解説内のアドバイスはどれもためになるもの、かつ自分ではなかなか気づかないものばかりで、とても学びの多い1時間半となりました!
そんななかでも特に、みんなやってしまいがちな落とし穴へのアドバイス、そして「これを知っているとより面白い文章を書けそう」と感じたアドバイスを抜粋してご紹介します!

・「読者を迷子にしない」工夫を
映画『架空OL日記』のレビュー

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添削前:
夢が覚めるまでおなじ銀行員でいつづけたい。ジムも通いたい、冒険してお店開拓したい、支店長を懲らしめたい、価値観を共有できることのよろこび。
職場が同じだからおなじ価値観なのと架空OLだからおなじ価値観なのとはおなじなのだ!いまだけは架空OLでいさせてほしい。大好きだ、升野さん!

添削後:
いまだけは、自分も架空OLでいさせてほしい。
そんな夢を見てしまう映画。夢が覚めるまで、彼女たちとおなじ銀行員でいたい。ジムも通いたい、お店開拓したい、支店長を懲らしめたい。そうやって価値観を共有できることのよろこびを感じたい。
架空OL日記を作ってくれてありがとう。大好きだ、升野さん!

愛の強い作品を紹介する時は、少ない文字数のなかに伝えたい魅力すべてを詰め込もうとし、結果、言葉を省いてしまいがちです。
しかし、その作品特有の言葉がでてきたり前提があったりする場合は、言葉を省略しすぎるとその作品を観たことがない読み手を混乱させてしまう可能性もあります。
このため、特有の言葉や設定が伝わるよう適度に補足をすると伝わりやすい文章になるそうです!

例えば添削前の文章では、「誰が誰とおなじ?」という疑問が湧いてしまいます。
これに対し、添削後の文章では「自分も」と追加することで「誰が誰とおなじ」なのか、そして「架空OLと」と書くことでおなじでありたい対象がどんな設定の人なのかが分かるようになっており、読者が迷わずに読み進められるだけではなく、映画の設定までイメージできる文章になっています。

・句読点を入れて文章に濃淡を
『ビューティ・インサイド』のレビュー

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添削前:
外見より中身が大切というけれど、中身が同じならどんな見た目でも愛することができるのだろうか?
朝起きたら外見が変わってしまう男性と平凡な女性とのラブストーリー。
愛することの難しさを考えさせられます。でも同様に愛することの素晴らしさも教えてくれる作品です。

添削後:
外見より中身が大切。ってみんないうけど、中身が同じなら、どんな見た目でも愛することができるのだろうか?
朝起きると外見が変わってしまう男性と、平凡な女性の、ラブストーリー。
愛するって難しい。でもやっぱり愛するって、すばらしい、かも。そんなことを教えてくれる作品です。

句読点や接続詞は「そこで一息いれてね」という合図。目を向けてほしいと思う箇所の手前に句読点をいれることで読者の読む速さをコントロールできます。
また、その前をしっかり読んでほしいというメッセージも伝えることができるため、強調したい部分のあとで一度区切りを入れると注意をひきやすくなるのだそうです。

実際に添削前の文章と比べると、句読点をより多く使用した添削後の文章は、感想がより印象に残る文章になっています。
強調のために句読点を使う、というのは普段あまり意識していないことだったので、目からウロコの学びでした!

・ありがちな表現は読み飛ばされがち 書き手ならではの表現で
『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』のレビュー

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添削前:
きみも、すみっコ?――不思議な絵本に吸い込まれてしまったすみっコたちと、そこで出会った迷子のひよこ?の物語。ひよこ?の居場所を探すため、すみっコたちは絵本の世界を奔走します。ただの子ども向けアニメと侮るなかれ。癒しあり、笑いあり。そしてラストは涙あり。スタッフロールまで必見です。
添削後:
きみも、すみっコ?――不思議な絵本に吸い込まれてしまったすみっコたちと、そこで出会った迷子のひよこ?の物語。ひよこ?の居場所を探すため、すみっコたちは絵本の世界を奔走します。ただの子ども向けアニメじゃありません。あなたが忘れた〈すみっコ〉に、もう一度出会うための旅なのです。

「癒しあり、笑いあり。そしてラストは涙あり。スタッフロールまで必見です。」という表現は「様々な要素がつまっている」ということが分かり、「最後まで目が離せない!」と思わせてもくれる便利な表現です。
ただ、こうしたありがちな表現はよく見かけるがゆえに読み飛ばされてしまうことが多いのだそう。このため、おすすめ作品の紹介文を書く際は特に、その作品ならではの表現やレビューを書いている人自身のお気に入りポイントを入れた方が読み手に魅力が伝わりやすくなります。

添削後の文章では、常套句に代えてこの作品ならではの表現が入ったことで、「<すみッコ>って何だろう?」とこの作品により興味を持てる文章になっており、私自身「観てみたい!」と感じる文章になっていて、独自の表現を入れることの効果を実感しました!


この他にも普段うっかりやってしまいがちな書き方の落とし穴とその対処法を次々に紹介してくださり、よりよい文章を書くためのコツがぎゅっとつまった時間でした!
特に講義中を通してお二人が何度もおっしゃっていた、「書き手ならではの表現で書きましょう」というアドバイスは、作品のレビューや紹介文を書く際には大事なことなのだ、と勉強になりました。

受講者から活字を愛するお二人へ、「書く」ことに関するお悩み相談

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添削・解説終了後は、受講者からの質問タイム。
チャットでの質問はオフラインの対面での質問よりも気軽にしやすく、「これなら普段は緊張して質問しそこねてしまう人も質問しやすいかも!」と感じました。

Q1.
あらすじとおすすめポイントの分量バランスが難しかったです!
意識しておられるコツなどありますか?

A1.
川崎さん:あらすじと愛を語る部分のバランスですね。あらすじをみんなが知っているような有名作品であればあらすじをぎゅっとコンパクトにして、知らなさそうな作品はあらすじの分量を多く、というような感じですかねぇ。

三宅さん:読者が読んだとき、どこがわかりづらいかを考えながら書くのが大事だと思っています。読者からみたらどこがわかりづらいのかを普段から考えるクセをつけておくと、「大体これくらい書いたら読者にも伝わるな」というのもわかるようになる気がします。

Q2.
私は大学生なのですが、文章を書くお仕事に就くのに必要なことはありますか?

A2.
三宅さん:どうですか?大学講師の川崎先生。

川崎さん:出版業界に学生を送り込んだこと、あります! 文章を書くお仕事に就きたいということであれば、これはもうひとつ。「書きまくる」。これしかないです。
「書きまくる」上でのコツがあるとすればですね、最初のうちは今日の課題のような短い文章を書いてどんどん人に見せていくことが大事ですし、発表していくことも大事なんですけれども、書いた文章に対するリアクションや反応に振り回されないことも大切です。

三宅さん:ああ~、なるほど。

川崎さん:ここまでいうと、この会場にいる編集者の方々が笑ってしまうかもしれないですけど、20代のうちは他人の意見に耳貸さないで書きまくってていい。30歳になってから、「ここは俺、やっぱり駄目だった」って気づければ、取り戻せるから。三宅さんのように大学中にデビューしたとなると、話は別かもしれないですけど。

三宅さん:私は今の言葉深く心に刺さりました。確かに。

川崎さん:あとはどんどん現場に飛び込む! 今の時代は文章を書くお仕事って本当にいっぱいあるから。現場で、たたき上げで、お金をもらいながら勉強していくという手もあります。

三宅さん:一回バイトでライターさんをやってみてもいいですよね。あとは文章をいっぱい読むのも大事。

川崎さん:読むのは大事ですよね。読まないと書けないですからね。良いことをおっしゃる。三宅さんの本を買って何を読んだらよいか、何を読みたいかをちゃんと自分のなかにストックして、「読みまくる、書きまくる」。以上。

三宅さん:川崎さんの文章もぜひ読んでください(笑)

Q3.
何かをお勧めするときの最初の一文は大事だと思うのですが、すぐに使えるテクニックなどはありますか?

A3.
三宅さん:私がよくやるのは「疑問文から始める」、ですね。めっちゃ書きやすい。

川崎さん:問いかけるってことですか?

三宅さん:そう。最初の一文で問いかけるんですよ。それで、その答えを先に出さずに、考えながら書いていくんです。で、その答えが出たら文章終了ってすると、自分もわかっていない問いかけから始めているから読者もわからなくて、「何それ?」って思うじゃないですか。そして、面白い問いかけからどうにかして答えを出そうと思って書いていくと、意外と文字数が出来上がる、というような。

川崎さん:それだと読者も自分ごとのように読んでくれるかもしれないですしね。

三宅さん:川崎さんは何か書き始めのポイント、ありますか?

川崎さん:僕なりのテクニックがあるとしたら、「何が変わったか」を書く。例えば何か映画を勧めるんなら、その映画を観る前と観た後とで自分がどう変わったかを書くようにしています。そうするとそのあとの自分がどういう文章を書こうか、ということも決められますし。変化したくてみんな何かしらの表現にふれると思うので。

三宅さん:なるほど。読書感想文とかにも使えそうな書き方ですね。

Q4. 本や文章を読むときに意識していることはありますか?

A4.
川崎さん:僕はもう、「否定から入らない」という1点ですね。読むときに先に「面白くないでしょ~?」とか言っちゃうと全部つまんなくなっちゃうので。お金を払って映画とか本とかの芸術表現にふれているので、「絶対にこれは面白い」って信じてふれるようにしています。そのうえで「う~ん……」みたいなこともあるんですけど(笑)。最初は「どこか面白い所があるはずだ!」と目を血眼にしてみる。

三宅さん:なるほど。確かに私も面白い箇所を探しながら読んでる感じがしますね。

川崎さん:僕ほどすごいピュアに本屋で平積みの帯みている人もいないと思いますよ。
「違ったら許さないからな!」くらいの気持ちで見てますからね(笑) まあ一応プロの編集者なんで、「まあこういう事情でこの紹介文にしているんだろうな」と気づく帯文とかもあるんですけど、そこはもうぐっと飲みこんで、面白いであろうということを信じて読み始めます。


イベントの内容は以上です!
第1回に引き続き、受講者の文章を最大限に活かす愛のある添削とわかりやすい解説だけではなく、Q&Aを通してお二人が文章にふれる時の姿勢も聞くことができ、文章を書くためのコツをたくさん学ぶことができました。

川崎さん、三宅さん共に「第3回目も開催したい!」とのことだったので、お二人の添削を受けてみたい方はぜひ参加してみてください。
最新情報は小学館カルチャーライブ!のHPTwitterFacebookInstagramを見てみてくださいね。

カルチャーライブ!今後のお知らせ

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【『ルポ百田尚樹現象』刊行記念 戦後75年と歴史認識 ~いま百田尚樹と「つくる会」を語る理由~ 石戸諭×江川紹子】
●日時:8月22日(土)13:00~15:00
●受講料:
<一般受講券>1000円+税
<サイン本付き受講券>2000円+税
※最新刊『ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』(1700円+税)込みの料金です
●詳細・お申し込みはこちら

「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二氏、藤岡信勝氏、小林よしのり氏)と作家・百田尚樹氏に取材を重ねてきたノンフィクションライター・石戸諭氏が、新刊『ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』を上梓。この刊行を記念したオンラインイベントを実施します。私たちは今後、歴史認識問題とどう向き合っていくべきか? ジャーナリストで神奈川大学特任教授の江川紹子氏とともに語ります。

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0912 村野弘味_fb

【突然ですが占います!】
<突然ですが占います!>
●日時:9月12日(土)13:00~14:30
●受講料:3000円+税
●詳細・お申し込みはこちら

世界を一変させてしまったコロナショックの中で、心が折れそうになっていたり、将来への不安で押しつぶされそうになっていたりする方も多いのではないでしょうか。そんな今の状況にぴったりな講座を、開運鑑定士として絶大な人気を誇る村野弘味さんをお招きして開講します。本講座では、受講生の方から寄せられたお悩みを紐解きながら、幸せへの道標を探っていきます。さあ、まずは開運の第一歩を踏み出してみませんか?

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ここまで読んでいただきありがとうございました!
みなさまのご受講をお待ちしております。

編集/小川利奈子 文/三橋七緒
2020.8.20 作成

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