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コーチングやトレーニングの評価指標及び構築指標『KWICS』

計画・実行・評価・改善。
継続的に生産性やクオリティを向上させることを目的としたマネジメント手法はPDCAサイクルとして広く認知されている。元々は生産管理や品質管理の改善のために提唱されたものらしいが、そのフレームワークの実用性から多岐にわたる分野で応用されている。

サッカー指導の勉強をしていれば必ず聞いたことがあるであろうこのPDCAサイクルだが、
これと似たようなフォーマットでサッカーのトレーニング・コーチングに焦点を当てたフレームワークが存在する。


KWICSという指標

日々のトレーニングを構築するための判断材料となり、事後のフィードバックにおいて主観性だけに頼らず評価していくためのモデルとなる基本的指標があるが、これをドイツでは「KWICS(クヴィックス)」と呼んでいる。

DFB(ドイツサッカー連盟)が開催している指導者養成内にてサッカー指導者に向けて言及されているものだが、内容を見ていく限りスポーツ全般、その中でも特にオープンスキルの必要な球技系の種目に強くリンクしているのかなという感じ。場合によっては教育の分野にも部分的に当てはまる指標と言えそうな印象がある。

このKWICSは...
K → Kontext (コンテクストあるいはコンテキスト、英:context)
W → Wiederholungen (繰り返し、反復、英:repetition)
I → Intensität (強度、英:intensity)
C → Coaching (コーチング)
S → Spaß (喜び、楽しみ、英:enjoy、fun)
上記のドイツ語の頭文字をとった造語である。

以下少し内容を掘り下げて見ていく。

Kontext(コンテクスト)

直訳では「脈絡、文脈」や「前後関係」といった意味になるが、ここではトレーニングのオーガナイズを意味する項目になっている。
・トレーニングの主となる目標や目的、それに向けたオーガナイズの最適化と適合性のバランス
・セッション毎のルール、基準、選手数やゴール等の設定がサッカーの競技特性から離れていないか
どうか
・重要なポイント、強調したいテーマを踏まえた流れになっているか
・トレーニング用具(マーカー、パイロン、ビブス等)を有益に使用できているか

などが評価項目になっている。


Wiederholungen(繰り返し、反復)

この項目では単純な繰り返しや反復回数のことではなく、「判断を伴っているアクションの回数や時間」を数多くこなすことができているのかが焦点となっている。
無駄な時間を撤去できているのかという点や、“重要性の高いポイント“と“それほど高くないポイント“に対するアプローチやフォーカスバランスもあげられる。


Intensität(強度)

トレーニング全体や各セッション毎の目的に応じたプレー強度の関係性。つまり、トレーニングにおける技術-戦術的目標に対してコンディショニングの側面からもアプローチすること。
正しい負荷調整。


Coaching(コーチング)

・言語アプローチ(内容、長さ、修辞、具体性等に注意を払って説明できているか)
・伴奏者としての存在(トレーニングを見る際にどこに立つのか、トレーニング内容とその主目的に正確にフォーカスできているか、選手のモチベーション管理)
・修正能力とコーチングポイント(選手へ質問するのかヒント提示するのか、フリーズ・シンクロ・ミーティングのバランス)
・要約能力
・セッション間におけるコーチングポイントに関連性・連続性があるか
・選手との関係性(称賛と批判のバランスは選手の個性や状況を鑑みて慎重に行う、信頼関係の構築、非言語的コミュニケーション:アイコンタクト、ボディランゲージetc)


Spaß(喜び、楽しみ)

・トレーニングフォーム(ゲーム形式とドリル形式、対人形式のバランス)
・指導者としての立ち振る舞い
・自由度(選手が自由に判断してプレーできる頻度。ルール設定でガチガチに固めていないかどうか)
・雰囲気


このように各項目の概念が細分化して規定されている。

もちろん、「この指標に沿ってトレーニングの構築をしてください」という事ではなく、あくまで「評価基準の1つとしてこのような考え方もありますよ」といったニュアンスで紹介されているものであるから、DFBも「トレーニング時にお試しあれ!」みたいな言い方だった。
それでもPDCAサイクルに比べると規定が細かくされているから、フィードバックやプランニングに関してはPDCAよりKWICSの方が客観性が高くなると感じるし、覚えておいて損するものではないだろう。

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