米国IPO週報番外編:SVB破綻について
先週末は多くの方からSVB破綻についての問い合わせをいただきました。そのときのやりとりをご参考までに共有させていただきます。
私も内情は分かりませんが、現地での報道やSVBの投資家向け資料から、今回の破綻について下記のように理解しています。
・昨年来の米国VC市場の調整で、SVBの顧客であるVCファンドやスタートアップの預金が減少している(ベンチャー投資が減速しているため、VCファンドのキャピタルコールがなかなか進まず、スタートアップも預け入れより引き出しが上回っている)
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・SVBはそれに合わせて資産を圧縮して流動性を確保する必要があったが、そもそも満期保有債券の比率が高く売却可能な債券が限られていた上、金利上昇で債券価格が下落していて売却損も発生してしまう
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・公募と私募の組み合わせで、つなぎ資金の調達を計画するが実現できず、身売りも検討し始めた
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・預金者の間で警戒感が高まり、一種の取り付け騒ぎになり破綻した(VCや起業家のコミュニティで悪い噂が一気に広がった)
SVB破綻のインパクトとしては、下記のような経路があると考えています。
・似たような銀行への警戒感が高まり、連鎖的な取り付け騒ぎが起きて、金融システムひいては経済全体に波及する(今のところは暗号資産やスタートアップなど特化型の銀行が破綻していますが、カネ余りで膨張した預かり資産の運用を債券に頼っている銀行は多いらしく楽観はできないと思っています;米国政府はこのようなシナリオを防ぐために、預金の全額保護など、現在進行形で次々と対策を打ち出しています)
・今回の破綻の原因の一つでもある米国VC市場の調整がよりはっきりと世間で認識されリスク回避の傾向が強まる(どのような環境でも個別企業のファンダメンタルズはそれぞれですが、一般のマインドが一時的に冷え込むのは避けられないのではと覚悟しています;投資信託やヘッジファンドのベンチャー投資からの撤退が進んでいましたが、そのような動きがCVCなど企業のオープンイノベーションの取り組みに波及するか注目しています)
・SVBやその同業者によるベンチャー融資が滞ることでスタートアップの資金調達の選択肢が狭まる(政府が主導しているSVB救済買収のスポンサー探しは難航しているようです;SVBの本業であるベンチャー融資や個人資産運用の直近期の業績はさほど悪くありませんでしたが、ポートフォリオの現状、不正会計の有無、政府緊急融資の返済見通しなど、その精査や条件交渉にはかなりの時間がかかりそうです)
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米国IPO週報(無料ダイジェスト版)では、日米で活動する新規事業開発コンサルタントが米国市場で資金調達したばかりの有望企業について毎週アップデートします(IPO、M&A、VC投資)。忙しいみなさんのために必要最小限の文字数でNYSEやNASDAQの成長株やスタートアップのトレンドをお伝えできたらと思っています。米国株に投資されている方にはもちろん、起業家、ベンチャーキャピタル、事業会社で新規事業の立ち上げに関っている方にも、ヒントがあるはずです。
https://www.mag2.com/m/0001614315
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