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2023/11/27週|Brian Chesky’s new playbook (ブライアン・チェスキーの新しいプレイブック)からの5つの学び

AirbnbのBraian Cheskyが出演した11/12の以下のpodcastからの学びが直感や定説に反するものもあり深かったのでまとめていきます。

#マーケティング   #プロダクトマネジメント   #経営   #人生

的なキーワードに関心のある方向けかなと思います。

以下引用表記の部分はBraian Cheskyの発言とテキスト化したものとなります。

5つの学び

🗽❶同じ方向に向かって一緒に漕ぐようにデザインする

Braian Cheskyは、組織について、拡大の過程で分化が進みながら、かつ依存関係があると、政治的になり官僚主義的(誰が何をしているのかを把握するのが難しい状態)な状態になっていく、と指摘します。

人々はそれぞれの方向に進み、それが説明責任の欠如を生む。説明責任が欠如していると、自分がやっていることは重要ではないという意識が生まれ、それが自己満足を生む。そして、急成長していた会社が突然、動きの遅い大きな官僚主義になってしまう。 これが一般的な流れです。

Airbnbも上記のような状況に陥っていたとし、「一緒に働く方法」を目指し、下記の3つを施したといいます。

  1. プロダクト・マネージャーの製品開発責任と、プロダクト・マーケティングのはマーケティング責任を組み合わせた

  2. プロダクト・マネジャーが行うプログラム・マネジメント機能の多くを、実際のプログラム・マネジャーに委ねた

  3. グループをより小さく、よりシニアの集団にした

ここの前提の考え方としては、「製品の市場の専門家でなければ、製品を作る専門家にはなれない」というものがあるとのこと。

全員が製品についてどのように話すかを理解しなければなりません。基本的な考え方はこうです。製品についてどう話すかを知らなければ、製品を作ることはできません。製品を作る専門家になるには、その製品の市場に関する専門家でなければなりません。

加えて、上記の考えから、組織が健全に回っているかどうかをチェックする方法として、下記のようなものを紹介しています。

組織の健全性は、エンジニアリングとマーケティングがどの程度親密であるかという一つの単純なヒューリスティックだと言ってきた。マーケティングは多くの会社でウェイターのようなもので、エンジニアはシェフのようなものです。実際、ウェイターは一日中お客さんと話していて、モノの売り方も知っている。だから、エンジニアには、自分たちが作っている製品についてどう話すかを考えていてほしい。これが私たちが抱えていた問題でした。

今日のこのインタビューで私が言ったことがひとつだけあるとしたら、良い候補は、みんなが同じ方向に向かって一緒に漕ぐようにすることだと思います。そうでなければ、なぜみんな同じ会社にいるんだ?

🗽❷権限委譲のパラドクスと「スタートアップに戻る」

Braian Cheskyは言います:創業当初はマーケティングもデザインもオペレーションと、エンジニアリング以外はなんでも少しずつやっていた状態から、徐々にプロダクトから手を引いていった。
権限を委譲し、チームのスピード感を担保しようとしたが、、なんと奇妙なことに事態はどんどん悪化して、どんどん遅くなっていった。

この経験や、他社の研究、パンデミックで事業の危機に陥ったこともあり、最終的には、CEO自らが再び手綱を握り、船を動かして、何が起きているのかをコントロールする必要があることに気づいていったと述べます。

まず最初にしたことは、私たちがやっていることをすべて書き出してグーグルシートにまとめることだ。その結果、みんな自分がやっていることをすべて書き出すことすらできないことがわかった。

私は基本的に、リーダーには「リーダーは細部に宿るものだ」と言った。マイクロマネジメントと呼ばれる否定的な言葉がありますが、マイクロマネジメントとは、何をすべきかを正確に指示することと、細部にこだわることの違いだと思います。細部にこだわるというのは、責任ある会社の取締役会がCEOにすることです。
だからといって、取締役会が何をすべきかを指示しているわけではない。しかし、もしあなたが詳細を知らなければ、人々が良い仕事をしていることをどうやって知ることができるでしょうか?偉大なリーダーの仕事は、人を雇い、良い仕事をするように力を与えることだと思われている。しかし、もしあなたが詳細を知らなければ、彼らが良い仕事をしているとどうやって知ることができるでしょうか?

チームのリーダーからなるべく少ないレイヤーにしたかった。私たちはファンクショナル・モデルに移行しました。スタートアップに戻りました。 だから私たちは、部門リーダーを置くつもりはないと言った。デザイン、エンジニアリング、プロダクト、そしてプロダクト・マーケティング、マーケティング、コミュニケーション、セールス、オペレーションなど、スタートアップのすべての機能を持つことにした。

意思決定の権限を委譲するのをやめ、一つの共有意識を作り上げ、会社のトップ30、40人がひとつの継続的な会話をするように伝えたのち、1 ~ 2年は以前のやり方よりもずっと大変だった。
が、しかし、ひとたび曲がり角を曲がると、突然、みんなが同じ方向を向いて漕ぎ始める状態となり、細かいことをやればやるほど、自分の時間が増えていく、結果としてはCEOの関与度が下がり、離職率も下がり、社内の衝突も減ったという状況が起きている、と述べています。


🗽❸マーケティングとは教育である:パフォーマンスマーケティングとブランドマーケティングの違いとそれぞれの役割

上記の❷の期間の中で、2010年代にGoogle Adsに10億ドルを投資していたという発言があります。
その中で、「指標を達成することに執着するがあまり、長期的な投資をしていなかった」と振り返っています。

パフォーマンス・マーケティングとブランド・マーケティングの違いの例えがわかりやすいです。

私はパフォーマンス・マーケティングをレーザーだと思っています。実際、私の共同設立者であるジョーは、レーザー、フラッシュ電球、シャンデリアという比喩を使っていました。
部屋を明るくしたいなら、パフォーマンス・マーケティングはレーザーです。部屋の一角を照らすことができる。たくさんのレーザーを使って部屋全体を照らしたくはないでしょう。
シャンデリアを使うべきで、それがブランド・マーケティングだ。しかし、レーザーを照射して需要と供給のバランスを取る必要があるのなら、パフォーマンス・マーケティングは実に有効だ。

Steve Jobsは「マーケティングとは価値観について」と表現していましたが、Braian Cheskyは「マーケティングとは教育」と考えています。プロダクトならではなの、ユニークな利点を人々にインプットしていくプロセスであると。
また、多くの企業は自分たちが作って届けている新しいものについて人々を本当に教育はしていない、と話しています。
パフォーマンス・マーケティングは価値あるものではあるが、蓄積的なメリットを生み出さない。そこについては教育に資するようなマーケティングが必要になると言うことですね。


🗽❹「どうすればこれを10倍にできるか?」…ゼロを加えよ

Airbnbには「ゼロを加えよ」という格言があると言います。会議で目標が提示されているといつもBrian Cheskyは「どうすればこれを10倍にできるか?」「このアイデアを10倍にするには何が必要だろう?」という問いを投げかけると言います。

この練習は、もし人々が目標を達成したいと言ったら、よし、私はゼロを加えたから、その目標を達成しなければならない、と言うためのものではありません。それよりも、10倍大きくなるにはどうしたらいいか、10倍良いことをするにはどうしたらいいか、という練習なんだ。
というのも、人を追い込むと、その人は問題について違った考え方をすることがあるからです。
そして、問題から抜け出せる最善の方法のひとつは、10倍のスケール、10倍の改善、10倍のスピードを想像することだ。問題に対して違う考え方をしなければならない。そして、問題に対して違う考え方をするということは、問題を深く理解しなければならないということだ。そして問題を深く理解するためには、その問題を構成要素に分ける必要がある。
これを第一原理思考と呼んでもいいかもしれない。
この問題を構成する基礎的な要素とは何か、そしてそれをどのように再構築することができるのか。 少なくともチームにとっては概念的にゼロを加えることで、問題を理解しやすくなります。もうひとつは、創設者やリーダーにとって最も重要なことのひとつは、チームのペースを決めることだと思います。チームのペースは最も重要なことのひとつだと思います。

リーダーの仕事とは、テンポを設定し、何かを第一原理的思考に落とし込む。そうすれば、遅々として進まず、魂を砕くような官僚組織とは正反対になると思う。

🗽❺燃え尽きずに幸せに生きるための工夫について

後半の方では、下記のような燃え尽きずにいるためには、など人生についてのTIPSを語ってくれています。

・幸せの秘訣は、健全な人間関係
・何事も新鮮な目で見て、判断しすぎないこと。
・学ぶこと、成長すること、好奇心。常にハングリー精神を持ち、もっと良くなりたいと思うこと。私はまだそれを成し遂げていないと感じること。なぜなら、私が「まだできていない」と言うのは、もしできてしまったら、その時点で私は終わってしまうからだ。アーティストであることを感じたいんだ。ボブ・ディランはよく言っていた。
"アーティストというものは、常に何かになっていく場所にいなければならない。"
常に進化し、学び、成長し、キャンバスは大きくなり続ける。山頂は高くなり続ける。

感想メモ

podcastのホストも言っていましたが、逆張り的な発想がいくつかあったのが興味深く、特に❷について非常に強くそれを感じました。

組織が多くなっていく過程で、前提のコンテクストの共有が薄くなったり、そもそも考える脳が増えていくので、放っておくと「同じ方向に向かって漕ぐ」から離れてしまいがちなのは言われてみればそうなのですが、定説的にはそこにはあまりスポットライトが当たらず、むしろ意思決定単位を小さくして自律的に進められるようにすることのみが奨励されがちです。それによってAirbnbでも官僚主義的な側面が増大し、むしろスピード感を損ねる結果になっていたというのはなるほどと感じるメカニズムでした。

それに対してAibnbの場合は、意思決定の権限を下ろすのを辞める、すなわちCEOが自ら詳細を理解して方針を立て直し、ディレクションを行い、少人数の頃のような全体として一貫した意思決定ができる状態まで再構築したのだなと理解しました。
そのプロセスを経ることで、その後のCEOの関与度は下がり、狙っていた通り各機能が自律的に動くことができるようになるので、Braian Cheskyが言うように「細かいことをやればやるほど、自分の時間が増えていく」と言う状態になるのだと思われます。

もう一つ。
パフォーマンス・マーケティングは非常にROIの良いものではありますが、感情の蓄積面では同じような課題感を持っています。自分も数字によるROIを気にする(説明責任もあるので)必要は当然あるものの、パフォーマンス・マーケティングのみでマーケティングに求められる役割が全て満たせているかで言うと、それは片手落ちな状態ではないかと言うことで、目的や時間軸を複眼的に持った考え方をより意識していく必要がある点、改めて感じました。

ローンチに取り組むとき、私たちが最初にすることのひとつは、ストーリーを考えることです。そして、ストーリーが製品を決定することがよくあります。なぜなら、最終的にはストーリーを人々に伝えなければならないからです。しかし、ストーリーはまた、まとまりのある製品を開発するのにとても役立つ方法でもあるのです。

お読みいただきありがとうございました🙇‍♂️


📓この記事について

株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
タイミーは、すぐに働けてすぐにお金がもらえるスキマバイトアプリです。

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