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バーティカル領域の「リグア」社のマーケティング分析

(作成日:2020/03/29)

バーティカル領域のマーケティングは、その業界のオペレーションまで、深く入り込んだコンテンツやソリューションが重要になります。


よく参考になるのが、以下の企業やサービスです。
・船井総合研究所:各バーティカル業界へのコンサルティング
・トレタ :飲食業界
・弁護士ドットコム:弁護士業界
・インフォマート:主に飲食業界
・ホットペッパービューティ:美容業界

トレタ 社長の中村さんもnoteで、このように仰っています。

バーティカルSaaSが目指すのは、まさに各産業の「革命」。
産業のメカニズムを一変させ、それによって社会や経済のあり方すらも変えてしまおうというのがバーティカルSaaSのミッションです。
そして、その変化の大きさこそがバーティカルSaaSの醍醐味だとも言えるでしょう。いわば「狭く深く」、しかも決定的に社会を変えていくことがバーティカルSaaSのアプローチなのです。

一方で、実は、バーティカルSaaSの課題解決のアプローチ方法やマーケティングは、結構共通している面があると思い、今回まとめました。

(株式会社リグア 社は、有価証券報告書などをみるとSaaSというより、ソフトウェアによるリースや買い切りなのではないかと想定。)

接骨院向けにサービスを展開し、先日上場した「株式会社リグア」社です。

今回、接骨院向けにサービスを展開しているリグア社とアトラ社の資料を参考に作成しました。
成長可能性に関する説明資料
新規上場申請のための有価証券報告書 Iの部
アトラ社 2019年12月期決算短信補足資料
アトラ株式会社
鍼灸院・接骨院の支援事業を展開している東証一部上場企業。

株式会社リグアとは?

接骨院向けにサービスを展開する株式会社リグア(LIGUA)。
2004年に設立され、2020年3月に東証マザーズに上場しました。
2020年3月時点で、社員数93名の会社です。

リグア社は、接骨院を中心としたヘルスケア産業の経営支援に貢献する
問題解決型コンサルティングカンパニーとして、様々なサービスを展開しています。

ちなみに、リグア社の社名の由来は、LIFE GUARD≒健康を支援するという意味です。


今回、焦点を当てるのは、「接骨院ソリューション」事業です。

左側が、「接骨院ソリューション」事業のビジネスモデルです。
顧客は、全国5万件の「接骨院」です。

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「接骨院ソリューション」事業とは?

主に「ソフトウェア」「機材・消耗品」「教育研修・コンサルティング」「請求代行」の4つで成り立っています。

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以下の左のグラフが金融事業を含めた全体の売上の推移です。
右のグラフが「接骨院ソリューション事業」の売上と内訳です。

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2019年3月期の売上高は約18億円(前年比+23%)。
2020年3月期は3Q累計で売上高は約15.3億円。

CAGRが「40.3」%という右肩上がりで成長しています。
また、「療養費請求代行」サービスを展開する平成30年5月1日付で株式を取得し、子会社化した株式会社ヘルスケア・フィットは、接骨院における事務負担の軽減を目的としたサービスを展開。
2020年3月期時点で、前年比2倍の成長になっています。

このサービスの背景として、接骨院の「事務作業の簡略化」や保険診療における現金化に時間がかかるための「早期現金化」への対応です。

接骨院や鍼灸院向けに事業を展開している「アトラ株式会社」の資料がわかりやすく解説していました。

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接骨院の業界について

外部環境について整理していきたいと思います。

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接骨院数と柔道整復師数が、右肩上がりに伸び続けています。
一方で、1院あたり療養費が減少しています。

人口減少社会において、供給過剰になる可能性があります。

※療養費とは、
被保険者が保険証を持たずに医療機関等にかかった際に、窓口で療養にかかった医療費の全額をお支払いいただいた場合に、後日、申請に基づき、保険給付として認めた費用額から一部負担金の金額を除いた金額を、療養費として現金給付すること(参照先:東京都後期高齢者医療広域連合

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保険収入が減少し、自費施術や物販による収益が重要になってきています。
これは、接骨院だけではなく、医科や歯科などでも同じ傾向です。

人口減少社会に突入し、新しく患者さんを獲得するのではなく、今、通っている患者さんの健康を守るために、ようやく接骨院や医療などでも、情報管理を行ういわゆる「CRM」が重要になってきています。
※余談ですが・・・
病気を患っている人を「患者」と呼ぶので、予防のために通う人はもはや「患者」ではないですよね。新しい呼び名を作りたい・・・。

まとめると

・人口は減少していくため、新規で獲得していくことが難しい
・一方で、接骨院や柔道整復師は増えつつある。
・保険収入が減少しているため、自費や物販が重要
・現状、保険の対象にはならない予防のために定期的に通う人々を増やし、自費や物販の売上を確立していく必要がある。

患者情報管理「Ligoo POS & CRM」及びレセプト計算システム「レセONE」

患者情報管理システム「Ligoo POS & CRM」及びレセプト計算システム「レセONE」について。

「レセONE」は、平成31年2月より販売スタートし、既存取引先への展開中心ということです。

接骨院ソリューション事業の社員数は、55名。

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CRM(レセONE含めて)の導入数ですが、全国50,077院ある中の1269院への導入となっています。

市場の「2.5」%ということで、まだまだ未開拓です。

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プライシング

CRMに関しては、記載がなかったのですが、過去の実績から予測してみました。

CRMがいわゆるSaaSのサブスクリプション型なのか、あるいは、リース型(6年など)なのかが不明でしたので、サブスクリプションだと想定した場合で予測。

ちなみに、「レセONE」は以下に記載しましたが、「リース」と想定。

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※有価証券報告書より
・ソフトウェアの売上は、初期導入に伴う売上として、接骨院への導入時に発生する初期設定売上と導入後1ヶ月間のサポートによる導入支援売上があります。
・「レセONE」は、平成31年2月より販売スタートし、既存取引先への展開中心

1院あたりのいわゆるMRRが下がっています。

「レセONE」の価格帯はこちら。

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月額の運用保守費用と記載があるので、おそらく5年や6年などのリース契約で本体価格を分割になるかと想定されます。

マーケティング コンテンツ編

主なコンテンツを記載しました。BtoB×SaaSであれば、一般的なものとなっていますね。

導入事例

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・利用しているシステムやサービスを「タグ」として記載している。
・「地域」や「利用システム・サービス」などで検索できるようにはしていない様子。

お役立ち資料

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・接骨院の「経営」や「マーケティング」などに関する内容。
・店舗ビジネスを展開している他業界と共通の悩みや課題解決の資料も配置。

動画

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・自社のシステムの活用方法などに関する動画。
・セミナーで開催した内容を動画コンテンツにもしている。

マーケティング チャネル(ディストリビューション)編

リード獲得に向けた「チャネル(ディストリビューション)」です。
バーティカル系のサービスやSaaSでは、特に勉強会や研究会を展開しているケースがほとんどです。
公開情報だけですと、「販売代理店・パートナー制度」が見つからなかったのですが、おそらく展開されているのではないかと想定しています。

広告
SNS広告(Facebook・Instagram など)やリスティング、リタゲの展開。

メール・LINE公式アカウント・Facebook
コンテンツの展開として、メールよりも、LINE公式アカウントでも配信。
飲食系のサービスもLINE公式アカウント経由でコンテンツを配信している企業もあるので、店舗系や小規模ビジネスだと、相性が良い可能性。

Youtube
開催したセミナーやサービスの紹介、事例インタビュー、機材の使い方などを紹介。

セミナー・勉強会
自社主催や他社との共催などで、定期的に実施。
月に数回以上、全国で開催。

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展示会
「東京ビッグサイト」で開催される展示会への出展などを行っています。

勉強会・コミュニティ

Million Dollars Club」や「GRAND SLAM」といった経営や幹部育成などのテーマごとに複数回参加必須の勉強会やコミュニティ運営的に開催。

バーティカル領域では、鉄板であり、互いに切磋琢磨して学びあい、ここから紹介による流入拡大や事例モデルになっていきます。

この辺は、カスタマーサクセスとの連携になるかと思います。


今後の展開について

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基本的には上記の資料の通りです。

CRMとレセONEに関しては、セグメントとターゲットが異なるため、レセONEを優先的に展開しつつ、CRMを導入できる先を増やしていくのではないかと思います。
その背景としては以下の3つ。

①「保険診療」を実施している院は、全国すべてが対象。つまり、全国5万件が対象となるのが「レセONE」

②CRMは、課題意識や患者数、危機意識など、まだまだ業界自体への啓蒙活動が必要であり、いわゆるターゲット顧客が5万件よりもかなり少ない。肌感としては、20〜30%?ぐらい。複数店舗を展開している法人の方がニーズが高いと想定。

③患者データの蓄積と接骨院経営に関する分析など、経営に関する自動サジェスト(例:次の患者さんには●●を提案してみましょう!など)などの機能の進化ができれば、CRMの導入効果の実感を早く感じてもらえるため、導入数の急拡大に貢献できる。

また、販売代理店・パートナー制度も、既にあるのかもしれませんが、マスでの展開を考えていく上では重要になってくるのではないかと思います。


システムだけではなく、接骨院の経営に関する課題をトータルでサポートし、解決していくのがリグア 社の事業です。
あくまでも、システムは、ツールの一つでしかなく、定量的に分析し、PDCAを回すための再現性のあるものです。

非常に勉強になりました!

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