コラム 創造 ”オフグリッド住宅”
ウィキペディアによれば、「オフグリッドとは、電気、ガス、水道など生活に必要なライフラインの一つ、または、それ以上を公共事業に依存せず、独立した方法で設計された建物の特徴やその生活様式を指す」とあります。今回、太陽電池を使った「オフグリッド住宅」の設計を行っているので、採算や安定性などを考えてみたいと思います。
オフグリッドには2種類あります。1つは自家発電で足りない電力を電力会社から買う方法、もう1つは完全に自家発電だけで必要な電力を賄う方法です。この2つについて考えてみます。
北陸の住宅事情としては土地に余裕があるため、住宅や車庫の屋根に太陽電池を設置することで必要な発電量は確保できると思います。完全に自家発電だけで電力を賄う方式で蓄電池容量を計算してみました。連続して太陽が出ない無日照日を5日として計算したところ、蓄電池容量が巨大になりました。蓄電池寿命を10年とすると、普通に電力会社から電力を買う方が安くなる計算です。今回の設計では、10年間で、設備費用が電力会社から電力を買う場合と同等 以下になるように設定します。
今度は無日照日を3日で計算してみました。蓄電池寿命を10年とすると、採算的には電力会社から電力を買うのと同等になりました。但し、4日以上連続して太陽が出ないと電源喪失になります。北陸の冬ではよくあることです。そこで妥協案を考えました。無日照日を3日として蓄電池残量が少なくなったときだけ電力会 社から電力を買い蓄電池を充電する方式です。1kWhあたり18円とすると、1日10時間充電に使っても180円です。 冬期間これが5回あったとしても900円です。これで巨大な蓄電池を4 割削減できます。この辺りが現実的な仕様では ないでしょうか。太平洋側では、この仕様で完全オフグリッドが可能となり、電力会社との契約は不要になります。また、災害時に停電しても通常の生活ができます。昔は太陽電池の価格が高価で、100Wあたり10万円程度していましたが、現在は国産の太陽電池でも1/4程度になっています。寿命や性能は分かりませんが、輸入品では1/10のものもあります。
北陸の冬は太陽が出ないので、風力発電機も効果的だと思います。冬の夜間風が強い日が多いので、1kW程度の発電機でも10時間で10kWhの充電が可能です。約1日分の電力量になります。
蓄電池は直流ですが、商用電源や太陽電池、風力発電など、電圧の違う色々な発電システムを融合させられるようになったのは、高効率のインバーターができたからです。太陽電池などは常に発電量が変化しますが、これを無駄なく蓄電池に充電できるのもインバーターのおかげです。昔は太陽電池電圧と蓄電池電圧を合わせてシステムを設計していましたが、インバーターのおかげで、これが自由に組み合わせられるようになったのです。
一戸建ての住宅ならエネルギーの自給自足は可能です。ZEH(ゼッチ:ゼロエネルギー住宅)の性能を備えた住宅との相性も良く、このような自家消費システムがこれから普及すると思われます。私がこのシステムの設計を始めた 理由は、温暖化が影響しています。 化石燃料を使わず、電気代も気にせず、夏季にエアコンを遠慮無く使い涼しく過ごしたいと思ったからです。
2022年11月18日発行
(出典:帝国データバンク 帝国ニュース北陸版)
ありがとうございます。起業以来、下請けと工賃仕事をせず自分で考えたものを世に出して生きてきました。その経験をノンフィクションとして書いています。