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若者が集まる溶接会社の秘密 | 有限会社セイシンメタルプロ大多和社長インタビュー

静岡の誇れるものづくりを、もっと発信していこう!
地元の人々にものづくりの魅力を、もっと知ってもらおう!

工場を一般開放し、見学や体験をおこなうオープンファクトリーイベント「ファクハク」は、そんな熱い想いのもとに開催されました。

今回は、そのプレイベントに参加した工場の一つ、火花飛び散る有限会社セイシンメタルプロにおじゃましました。

同社は「金属の創造力で豊さを追求する!」をテーマに、テントハウスやガレージ、オーダーメイド家具などを製作している金属加工のプロ集団です。

静岡みんなの広報はセイシンメタルプロ大多和社長に、自社でDIY教室を始めた理由や「遊びながら仕事をする」コツについてお話を伺いました。

▼プレイベントの様子はこちら▼


鉄で遊ぶワークショップ

ここは受付やカフェコーナーとして使っている部屋です。通称「てつのあそびば」。

カフェコーナーの「てつのあそびば」

ファクハクの時も最初はここに来てもらいます。「工場の中にこんなところがあるんだ」って、みなさん驚きますね。

自社でDIY教室もやっているのですが、これを始めたきっかけがファクハクの想いと重なり、参加を決めた次第です。

ものをつくる喜びを知ってほしい。溶接を身近に感じてほしい。そしてゆくゆくは、ものづくりに関わる人を増やしていきたい——そんな想いでDIY教室以外にも、市内の小学校で溶接体験を開いたり、大学のキャリア教育で講師をさせてもらったりもしています。

普段あまり人前に立つことがないので緊張しますが、そうやってものづくりの楽しさや、楽しく仕事をしている大人の姿を示すことで、僕たちの仕事に興味を持ってもらいたいと考えています。

ファクハクのワークショップでは溶接を体験してもらいました。

内容は、ネジを固定するために用いるナットやワッシャーを組み合わせた「メタルフラワーづくり」です。ティグ溶接という火花の飛び散らない溶接ですので、初心者の方でも安心して体験していただけます

メタルフラワー

「もっと本格的なものをつくりたい!」と思われる方のためにDIY教室も準備しています

こちらはスチール素材を使って、テーブルや棚、ちょっとした小物なんかをつくれるようにする予定です。

最近人気のキャンプグッズもつくれます。これは鉄の廃材を利用した焚き火台、こっちはロケットストーブ。

焚き火台(左)ロケットストーブ(中央)薪スタンド(右)

体験教室の申し込みは年配の方が多いですが、最近だと女性の方にも興味を持っていただけているようです。先日も若い女性の方が溶接体験に来てくださいました。

体験会は商工会のイベントでもちょくちょくやっていて、ありがたいことにご好評いただいています。このような体験を通して、ものづくりの魅力がちょっとでも広まってくれればいいですね。

この仕事も捨てたもんじゃないな

就職活動の時、だいたいの人が名の通った会社に就職を考えるじゃないですか。親御さんだって、子どもが自分の知っている会社に入ったら安心するでしょう。

つまり、就職先のほとんどは“会社を知っているか否か”に左右されます

知らないことには、当然、この業界に入ってこようと思う人も出てこないわけですよね。とくにうちのような中小企業は、はなから選択肢に入れてもらえません。

実際、この会社もつい最近まで、僕を含めて二人しか社員がいませんでしたが、ここ5年くらいで若い社員が続々と入ってきてくれました

一人目は、本当にある日突然、「ここで雇ってほしい」と言ってきて。

最初はびっくりしましたが、彼が呼び水となって、彼の友人や知人が入ってきてくれました。そこから一気に会社が若返りましたね。

正直なところ僕は、「こんな仕事を若い人がやりたがるわけがない」と思っていました。僕自身、若い頃はこの仕事を好きではなかったということもあります。夏は暑いし、怪我をすることもあるし……。

でも、今いる社員たちは楽しんで仕事をしてくれているみたいです。これもやっぱり、ものづくりの魅力のおかげだと思います。

それからかな、「この仕事も意外と捨てたもんじゃないな」と思うようになったのは。もっと多くの方々に僕らの仕事を知ってもらいたいと思うようになりました。

最近では情報発信のためにホームページやPR動画をつくったり、ブログを始めたりしました。

初めはみんな面倒くさがって更新をやってくれませんでしたが、最近はおもしろがってやってくれるようになりました。大きな進歩です。

遊びながら仕事をする

先ほど工場で見てもらったのはテントの骨組みです。

弊社は主に倉庫、ガレージといった大きなものから、オーダーメイドの家具みたいな小さなものまで、さまざまなものをつくっています。

ただ、こちらは商品でも試作品でもなんでもありません。趣味です(笑)

ドラム缶のソファー

手が空いた時は、各々が好きなものをつくる時間に当てているんです。これも社員が空き時間でつくった鉄の恐竜。器用なもんですよ。

鉄の恐竜

仕事で培った技術で、僕らは遊んでいるんですね

弊社のモットーは「遊びながら仕事をする」です。仕事の中で遊ぶコツは、自分の頭で考えて行動することだと僕は考えます。だって、遊びは誰かに指示されてやるものじゃないですよね。

社員に仕事を任せちゃえば、彼らは自分で考えなければいけないわけです。その中で、自然と楽しく仕事をする方法を思いつくんです。

たとえば、3年ほど前に入った社員は、最初はあまりやる気がなくて……。最初はどうしようかと思いました(笑)。でも、今は楽しんで仕事をしてくれているみたいです。彼は変わりましたね。それも仕事を任されるようになってからだと思います。

僕らの世代といえば、親方の後にくっついて、怒鳴られながら仕事をするのが当たり前でした。僕も毎日毎日怒られながら、指示されたことを粛々と処理する日々を過ごしていました。仕事はキツくて辛いもの——そんな考えが一般的だった時代です。

でも、それじゃあ仕事がイヤになっちゃいますよ。僕だってイヤでした。

だから、その反動で「若い人たちには楽しく仕事をしてもらいたい」と考えるようになったんじゃないかな。自分の頭で考えて仕事をすることに、仕事の醍醐味があると思うんです。あれをやれ、これをやれ、だけでは面白くないですし、やっぱり怒られたくもないし。

だから、社員が失敗しても怒らない。意見やアイデアは、なるべく尊重するようにしています。

たとえば、一つのものをつくるにしても、いろんな方法があります。時には、社員の選んだ方法が遠回りなことだってあるわけです。

そんな時は、「こっちの方が本当は楽なんだけどな」なんて心の中では思いつつ、しばらく様子を見ています。で、自分でやった後に、「こんなやり方もあるよ」と教えてあげると。自分で選んで、とりあえずやることが大切だと僕は考えます。

失敗も勉強のうちだと思って、優しく教えて、上手くできたら褒める。それでやっと覚えていくんですよ。

厳しく教えるのと優しく教えるの、どちらがいいかなんてわかりませんが、やっぱり、楽しいに越したことはありません。なんせ人生の三分の一は仕事をしている時間ですから、楽しくなくちゃダメですよ

自分の天職なんてわからない

最初に就職した会社で、「この会社に入って良かった」って思える人は少ないですよね。無理もないですよ。社会のことも企業のこともあまり知らない学生のうちから、「自分の天職はこれだ!」なんてわかるわけない

それは大人になっても同じ。たぶん、ずっとわかりません。

もちろん今働いてくれている社員たちにとっても、セイシンメタルプロが天職かなんてわからないと思います。

ただ、楽しく仕事をしたい人はうちの会社に入ってもいいんじゃないでしょうか。もちろん、ものづくりが好きな人も。

ものづくりにちょっとでも興味のある方はファクハクに遊びに来てください。楽しい溶接体験を用意してお待ちしています。

溶接というと少し難しそうに感じるかもしれませんが、小学生でもできちゃうくらい簡単です。ぜひ、金属の花を咲かせに来てください!

お知らせ

静岡のものづくりの魅力を伝えるファクハク公式noteは毎週火曜日に更新です。最新情報や関連企業の情報をアップしていきますので、こちらもぜひチェックしてみてください。

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