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【私の感傷的百物語】第九話 怖いビデオゲームの思い出 前編

僕はテレビゲーム(ひと昔前はピコピコとか言いましたね)、携帯ゲームに熱中した世代です。「スーパーファミコン」が発売されたのが1990年らしいので、僕と同い年ということになります。それこそ、過去に色々なゲームが発売されていますので、僕が知っているものはほんのわずかでしょうが、その中でも怖かったビデオゲームをいくつか挙げてみたいと思います。

もともと、僕自身はビデオゲームをあまりする子供ではありませんでした。正確に言うと、やらせてもらえなかったのです。と、いうのも、七つ歳の離れた兄が家のゲーム機を占領してしまっていたため、僕はと言えば兄にお菓子を持っていくついでに、その後ろに居座って、追い払われるまでテレビ画面をずっと眺めていたのでした。

自分でゲームができたのは、兄のいない隙をみてゲーム機の電源を入れた時か、仲の良い従姉妹が家にやってきた時くらいのものでした。そんな中で一番古い記憶にあるのは、有名な「ドラゴンクエストⅤ」です。物語序盤、主人公は幼馴染と近所の廃城へお化け退治に行くことになります。夜を待って、村をそっと抜け出す際などは、えも言われぬドキドキとした高揚感があったものでした。しかし、城に入った途端、不気味な音楽と稲妻の閃光、そしてお化けの敵が次々と現れて、僕を怖がらせてきました。特に、「グワーン」というイントロから始まるBGMは恐ろしくてたまりませんでしたが、同時に妙に印象に残ったものです。後年、作曲したのが有名なすぎやまこういち氏だと知りました。オーケストラアレンジされたCDも買ってみましたが、件の曲のタイトルは「死の塔」とあり、「なるほど」と納得したのでした。

幼稚園の頃には、すでに3Dポリゴン映像が楽しめる「プレイステーション」が発売されていました。丁度、当時よく一緒に遊んでいた近所の子の家で、現物を初めて目の当たりにしました。僕は興味津々でしたが、中に入っていたソフトは、これまた有名な、ゾンビ(?)と銃で戦う「バイオハザード」。まだパニック映画すらろくに観たことがなかった僕は激しい衝撃を受け、しばらく一人で眠れず、寝ても怖い夢を見ました。プレステでは、「ゲゲゲの鬼太郎」、「クロックタワー2」、「サイレント・ヒル」等の怖くて面白いゲームがずいぶん出ましたが、こうしたゲームを実際に観たり遊んだりしたのは、発売してからずいぶん経った後になります。

小学校になって、「ポケットモンスター(ポケモン)」が大ブームとなり、僕もご多分に漏れず、携帯ゲーム世界で不思議な生き物、ポケモン探しにいそしみました。このゲーム中で「シオンタウン」という、死んだポケモンを弔う町があって、BGMは不協和音交じりの不気味な曲で、実際に幽霊が襲ってくるイベントもありました。僕はシオンタウンに滞在するのが嫌で嫌で仕方なく、一刻も早くここから出たいと焦りながら遊びました。しかし、今思うと、非常に雰囲気が出ていて、何とも味わい深い陰鬱さが漂っていました。

プレイステーションの発売から数年後、さらに性能が向上した「プレイステーション2」が発売され、僕の周囲はみんなこのゲーム機で遊んでいました。案の定、我が家ではプレステ2は兄の持ち物でしたが、リアルになったキャラクターが動き回る画面は、眺めているだけでも十分にワクワクさせられたものです。ただ、この「リアルになった」というのが曲者(くせもの)でして、怖いゲームたちも、ものすごい勢いで進化をしていたのです。
特に、高校時代に知った「サイレン」というゲームは、青春時代の僕のトラウマとなり、憂鬱で体調を崩し、日常生活に支障が出るほどでした。ストーリーは、とある日本の山村で特殊な宗教儀式が行われていたのですが、失敗して村が呪われてしまい、住民や偶然訪れていた人々が次々にゾンビのような化け物になっていく、というものです。こうして書くと、なんともありがちな話ですが、「狂いながらも、日本語で話しかけてくる死者」は、今までの奇声(または外国語)を発しながら襲ってくる化け物とは明らかに違っていました。また、舞台が日本、それもひなびた田舎町なのも、そういった風景に愛着を抱く僕にとっては、親しみ深い原風景が崩壊していくように感じ、戦慄を覚えました。一時は、本気でサイレンを製作した会社に抗議しようとしたり、このゲームを「大好き」と公言してはばからない怪奇マニアSDK君と大喧嘩になったりもしました。ただ、あらためてインターネットの動画サイトでこのゲームを観てみると、不老不死という理想に対する懐疑の眼差しと、極限状態に置かれつつも、それぞれ劇的に行動する登場人物たちの姿には、評価できる部分があると思います。

さて、僕の経験した、主だった怖いビデオゲームは、こんなところです。プレイステーション2以降、あまりビデオゲームをやらなくなったため、最新のゲーム事情に関してはまったく分かりません。ビデオゲーム自体への興味から、その作品のルーツとなった創作物や伝承などに、自分の関心が移ったためかもしれません。ただ、過去に経験してきた前述のゲームたちは、僕の思い出の中で、今も陰火のごとく、青白い光をキラキラと放っているのです。


今も手元に残っている怖いゲーム、
プレイステーション版「ゲゲゲの鬼太郎」。
キャラゲーだと油断させて下手なホラーゲームよりよっぽど怖い。
学校編、肉人形編は、大学生の時友達と一緒にやっても怖かった。

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