旅人の手記
帰りたい。
早くどこかに帰りたい。
街の音も人の声も、雑音にしか聞こえない。
私はちゃんと人の形になれているだろうか。ちゃんと笑えているだろうか。
疲れた。ひどく、疲れた。
ただいま、と言って、おかえり、と返ってくる場所に帰りたい。
けれどそれがどこにあるのか分からない。
寝不足の頭にコーヒーを無理矢理流し込み、考える。私はどこに帰ればいいのだ。どこに帰りたいのだ。
そこは今まで出会った場所か、それともまだ知らない場所か。
何も分からない。疲れた。眠い。
迷子だなあ。私、方向音痴だし。地図読めないし。
とりあえず、目に入った道を行こう。いつかどこかに辿り着くはず。いつでも中指に指輪はしておく。臨戦態勢を取れるように。
でもいつか、同じように迷子になっている人と出会って、
指輪を外して握手できたらいいな。
2021.02.12
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。