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趣味の原点。

 思い起こせば、昔から本が好きな子どもだったと思う。

 小学生のころから、読書好きの親に連れられて、町立の図書館へ通っては絵本や紙芝居を借りていたのを思い出す。けれど、そのあたりの話はまた今度することにして。

 私の人生を変えた一冊は、とある漫画、コミックスだった。

 「TWIN SIGNAL」という漫画をご存じだろうか。1992年から2001年まで、『少年ガンガン』や『Gファンタジー』というコミック雑誌で、大清水さち先生が連載をしていたロボット漫画である。

 ガンダムとは違うからね?

 いわゆるロボットアニメのような、人が搭乗するようなものではなく、自律したAIをもつ人間型ロボットの人との交わりや、その存在の是非を問うようなテーマを持った漫画なのである。SF要素も強く、大清水さち先生も詳しかったようで、小説版のあとがきでもよく触れられていたように思う。当時難しすぎて、その部分についてはさっぱり解らなかったのだけれど。

 内容については語らないようにしていくけれど、とにかく今の自分を形成するにあたって大きな存在であり、私の人生の転換となった作品であることに間違いはない。語らない理由?未だに好きすぎて止まらないうえに知ってる人のほうが少なそうだからだよ。

 連載誌から想像されるように、ジャンプなどの王道というより、もっとファンタジー寄りで、どちらかといえば女性読者が多めの作品であったようで、ただ、当時の私は全くそうとは知らずに単行本を集め、ついには本誌を買ってリアルタイムで読むようにまでなっていた。基本的に単行本派の私がコミック雑誌を買っていたのは、後にも先にもこの時だけかもしれない。

 より厳密にいえば、私の人生を変えてしまったのは、この本だけの力ではない。それより以前からはまっていたパソコンの所為でもあるし、広がったインターネットという情報の海がもたらしたオタク文化の数々の所為でもある。

 高校一年生の夏、私は、その存在を知ってから行きたくて行きたくてたまらなかった、オタクの祭典である「コミックマーケット」に一般参加を果たす。「コミックマーケット」、通称コミケは、いわゆる同人誌即売会というもので、書店で売られているコミックスを一時作品とした、二次創作出版物を個人で販売する会、その中でも最も大きなイベントだった。

 東京で行われる、国際展示場、同じものを好きな人が集まり、好きな人同士で語りあう、それはもはや夢のような場所で、中学時代は憧れを募らせたものである。そんな憧れの場所に初参加をして、真っ先に向かった先が「TWIN SIGNAL」の販売スペースだった。

 熱に浮かされていてよく覚えているようであまり覚えていないのだけれど、とにかく一人で仲間もいなくて、それでも浮足立ってただただ楽しかったことだけは覚えている。そしてBLというジャンルもそこで知ることになる。解せぬ。

 結果として「TWIN SIGNAL」好きがあつまるサークルにも参加して、何度もみんなと顔を突き合わせて、ご飯に行ったり合宿に行ったり、会誌の原稿を一生懸命仕上げたりと、ある意味一番オタクしていたんじゃないかと思ったりもする。この中でできた友人で続いている人は今のところひとり(しかもTwitterでつながっているだけ)しかいないけれど、あの時楽しかったことはとてもよく覚えている。とともに、本当に人間関係を維持できないんだなぁと自分の億劫さに少しげんなりともしている。

 今のオタク生活の土台を作っているのが多分このコミックスの存在であり、これがなくても遅かれ早かれオタクになっていたような気はするけれど、実際のところこの「TWIN SIGNAL」がこの人生のきっかけになったことは変わりがない。連載はずいぶん前に終了しているけれど、実は第二弾がスタートしている。クラウドファウンディングから始まった企画のようで、もちろん微力ながら応援させていただいている。願わくば、大清水さち先生の納得のいくようにできますように。


 文筆乱れてお目汚し。失礼致しました。

 本城 雫


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