自分ごとになった世界は、色鮮やかで、この上なく面白い。
『近況報告がしたいんです』
相手は、私がカフェで1日店長をしていたときに、インターンをしていたなかじまくん。プロハ夢手帳のインタビューライティングをきっかけに出会った大学生で、今は外構/エクステリアの現場仕事で毎日頑張っている。
私が神田のカフェで1日店長としてランチ営業をすることになったときに、Facebookに近況を書いたら、やってみたいと連絡をくれた。
バイト代を出すことはできないので、ホールの接客をしてもらう代わりに、ごはんをつけるということで来てもらった。
接客となると、私は鬼になる。
なかじまくんの接客経験は、ホテルでの配膳派遣。聞くと、数か月で辞めてしまったらしい。宴会場は戦場だから、周りよりは割と高い時給で、手軽に始められるのだけど、いかんせん続かない。ホテルの現場で働いているときに、見てきた状況でした。
私の経歴は、有名ホテルの宴会場(と宿泊、各レストラン、ビアガーデン)での現場と、ウェディング。全国転勤のあるリゾート業での旅館サービス。しかも、ブライダル・料飲の専門学校で学んでいた経歴も併せ持ち、求めるスキルがおそらく人より高かったのは、間違いない。
接客のいろはから、敬語の使い方、立ち居振る舞い、お客さんへの目線の配り方、タイミング、仕事のやり方、段取りの方法、時間の使い方。
たくさん言ったし、多分手伝いたいと言ったことを初日にしてなかじまくんは後悔したと思う。だけど、営業が終わって、まかないを食べながら、仕事についてのフィードバック。今まで言われたことのないことばかりで、目からうろこのことが多かった、と彼は言う。
「明日はどうする?」「来週はどうする?」
毎回営業が終わって聞くと、頑張ります、と毎回来てくれた。
もちろん、15席を1人でやろうと思うと、オーダーが立て込んだらつらい。彼のおかげで、どうにか営業していたのは、間違いない。
大学4回生だったなかじまくんは、就職が決まっていなかった。
やってみたいことはたくさんあるけど、ビジネスにならない。休学して、もう1年学生をしようかな、と言っていたので、私はこう言った。
「たぶんさ、学生でいたい、って働きたくないからでしょ。配膳を辞めたときと一緒。しんどい、楽したい、って思ってるから何も続かない。本当にやりたいことって何?」
確かそこで出てきたのは、世界一周。
そのためにはいくら必要で、どうしたらそのお金は確保できるのか。
目標を決めたのだから、どうやったら達成できるのか。
一緒に時給計算をして、それならいつまでに達成できるかを試算しました。
そこで、知りあいづてに紹介してもらった会社が外構の仕事。
たしか当初は半年くらいで働いて世界一周に行く、と言っていたような気がするけど、今も彼はがんばって働いています。
つい先日、ついに辞めたいと社長に相談したらしいのですが、その理由は、しんどい、が出てきたからだったそう。慣れてきたら、やっぱり楽をしたくなる。そのときに私がカフェで言った言葉を思い出し、怠け心が出た自分を奮い立たせ、もう一度仕事に向き合ったそうです。今は実家の庭を、培った技術を使ってきれいにしているそうです。素敵。香川に外構出張してもらおうかな(笑)
カフェで伝えた言葉の節々は、当時のなかじまくんにとっては「なんでこんなことを言われなきゃいけないんだろう」とわからないままだったそうです。だけど、外構の社長にも、私と同じことを言われ、どんな仕事も、臨み方や姿勢の基本は一緒なんだということに気づいたと言ってくれました。
「自分事になった仕事は、とても面白い」
少しだけそれに気づいてくれたことに、嬉しさを覚えました。
目の前のお客さんを全力で、そして少しでも期待を超える仕事をする人であってほしい。
そして、自分で立てた目標や夢も、目の前のことに飲まれ過ぎずにちゃんと叶えてね。人生は1回だけ。
何のためにやっているのか、どうしてやっているのか、なぜ失敗したのか、どうしたら次はうまくいくのか。いっぱいこれからも考えてほしいな、と思いました。
会いに来てくれてありがとう。