見出し画像

大阪・ちとせ温泉さん (生野区の銭湯)


 ひらがなで「ちとせ」。もとは漢字の屋号らしく長看板に「千歳温泉」と。むかしからの細い道路に「ゆ」の文字がうかぶ。夕暮れに湯けむりに。
(1298文字)



ちとせ温泉さん

 ここは、大阪コリアタウンの近所。銭湯が三軒あります。むかしからの労働者のまちです。いちにちの終わりは「お風呂屋さん」へ。

ちとせ温泉さん
大阪市生野区鶴橋5-12-12
第1・3火曜定休
15:00~24:00


●もより駅は……
JR大阪環状線・大阪メトロ・近鉄電車
各線・鶴橋駅…徒歩約10分



年の瀬に

 あわただしい日常。一年の短さよ。
子どものころは、おおみそかに「ゆく年くる年」というテレビ番組がありました。どこのチャンネルもおなじ。さいごに除夜の鐘の音。
お店も会社も冬休み、ゆく年や、くる年に感謝をしながら。

おとなになってくるにしたがって、季節感、とりわけ年末感はうすくなりました。便利な世の中になり……テレビがおなじ番組を放送する時代は終わりました。

ちとせ温泉さん、千歳飴みたいで可愛いな。なんか年末年始っぽいし。
勝手に温存していた銭湯なのです。


「一年のあかを落とす」

 そして師走。わたしは銭湯で「一年の垢を落とす」ことに。
こんなこと、令和のいまは言いませんね。いつから言わなくなったのかな。

むかしは年末に大掃除と、家のメンテナンスを家族総出でやりました。
住む家も洋風になり、「ふすま・障子しょうじの張り替え」などの「ふすま・しょうじ」は、すでになく。電灯はLEDライトに、電球の取りかえもなし。こまごまとしたことは忘れました。おせち料理も作らなくなり久しい。
年賀状も、ほぼ書きません。

じつは「一年の垢を落とす」なんて……わたしは、なんの苦労もなく、働いてもいません。それでも年越しの感覚と後悔だけは残っているのです。



千歳橋のむこう

そう……わたしの家から、ちとせ温泉さんに行くには、橋を渡るのです。平野川に架かる「千歳橋」をこえて。

この平野川は、かつて流れが、ぐねぐねと蛇行していました。風雨の季節は水害が多かったのです。

大正時代に平野川を、まっすぐに改修。河川工事の労働者もこの地に住み、鶴橋の市場・商店街も発展しました。
いまも銭湯は、このまちに欠かせない存在なのです。



湯船もたくさん

ちとせ温泉さんには、湯船がいっぱいあります。ささやかな、たのしみ。おおきなおふろ。とても天井がたかい。

サウナは22:00まで。ご注意ください。
要バスタオル。貸しバスタオル50円。

薬草ふろ・スチームサウナ・電気。
いっぱいの湯船で、一年の垢を落とそう。年の瀬にぴったり。
ぬるめの湯船があって、赤ちゃんのオモチャが置いてあるのもいい。

千歳橋を渡って、ちいさな道をまっすぐに。自転車置場もないころからの銭湯。

まちが暗くなってきた。
はんたいに、こころは あったかく。


ちとせ、やちとせ……。
つぎの年も、またつぎも。
番組の「ゆく年くる年」は終わったけれど。

どんなひとにも
川が流れていくように……


あしたはやってくる。



毎週土曜日は
「銭湯」の日

いつも こころに うるおいを
 水分補給も わすれずに


さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。



#年末の過ごし方

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?