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この家どうするの?(39)葬儀屋さん今昔18「どうしたものか」

 やっと、葬儀屋さん編・本題です。現在の葬儀もろもろ。個人の体験や感想です。つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1023文字)



まちの葬儀屋さん

A葬祭さんの自社ビル。20畳ほどのお部屋に棺桶ひとつ。いまでこそ、家族葬・直葬の時代だが、父とわたしだけでは広すぎて。
むかしからの、まちの葬儀屋さん。

もの言わぬ父。棺桶の前で鉄パイプの椅子に座るわたし。出棺まで……どうしたものか。
思い出したように立ち上がり、顔の扉を開けた。


透明アクリルケースのようなカバーがついている。最近は、最後のお別れで、ドライアイスを吸い込む「後追いの悲劇」もあるという。


扉を閉める。父は孤独死。警察が来て監察医のもとに行き、A葬祭さんがお迎えに行ってくれたのだ。そしてA葬祭さんに置いてもらって、火葬のきょうに至る。


やっぱり父だった。


祖母もこちらで

ちいさな町工場の経営者・祖母の葬儀も、A葬祭さんでお世話になった。フロアはちがうし、もっと広いお部屋だった。お通夜から、それなりに式がすすんだ。


たくさんのオプションがあった。焼香も時間がかかった。お坊さんがきて、すわっている時間が、やたら長かった。棺を父と、叔父と先代の葬儀屋さんの社長と息子さんが霊柩車れいきゅうしゃに……。


あのとき。「次は父だ」という確信と自覚があれば、祖母の葬儀のダンドリを目に焼きつけてたはずだ。たしか平成7年、わたしは結婚していたが、まだ子どももいなかった。いつの間にか令和になっていた。そりゃ父も死ぬだろう。わたしも婆さんになったし。



葬祭屋さんの社長さん

むかしの記憶をたぐっていたら、50歳くらいの男性がやってきた。電話でしかお話ししていなかったが、きっと社長さんだ。

「父がお世話になり、お迎えも行っていただき……急に親戚5人来ますがスミマセン……本当にありがとうございます(……もごもご……)」


「おはようございます。長女さんですね。ご親戚のお別れ、大丈夫ですよ。出棺は昨日お伝えした時間通りに。」


「あの、じつは平成7年に祖母もお世話になってて、それで今回もA葬祭さんにお願いしまして……」


いやな仕事させてすみませんと言っていいものか? これがお仕事だし。なにも考えてなかった。
妙なコトバやお礼しかでてこない。
モゴモゴしてたら、複数の足音が近づいてきた。


遠い親戚5人がやってきた。



つづきます。

いつも こころに うるおいを
 水分補給もわすれずに 


さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。

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