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【読書感想文】はみだしの人類学

人との関係は、面白くもあり面倒でもある。
私は仕事をするとき、チームの一員として動くことが多い。しかし、同僚や上司やクライアントと口論になるたびに、「ひとりでできる仕事をしたい」と考える。
ひとりで仕事をしたい。ひとりで生活したい。ずっと猫とだけ遊んで暮らしたい。できれば猫になりたい。
そんな欲求を抱えながら、コミュニティに所属して生きている。

そんな私が最近読んだ本が、松村圭一郎さんの『はみだしの人類学』である。

(私を含めて)人類学に明るくないひとにも分かりやすく書かれている良書だ。この本では、まさに私が悩んでいた「わたしと他者の関り」について論じられていた。

『はみだしの人類学』要約

本書では、人とのつながりは「存在の輪郭を強化する」働きと、「その輪郭が溶ける」働きの二つの作用を持っていると語る。
「輪郭を強化する」とは、他者との関りのなかで、わたしや派閥やコミュニティの輪郭について気づかされることだ。例えば、A派とB派について考える。A派だけでは、その考えの特異性を理解することは不可能だ。B派と意見を対立させることではじめて、自身の輪郭を鮮明に意識することができる。
「輪郭が溶ける」とは、他者と関わることで、異なる思考や習慣を知り、それがお互いに理解して馴染んでくる、ということだ。はじめは馴染めなかった文化でも、時間を重ねるなかでそれが染みつき、自分が変化してく。これを「輪郭が溶ける」と表現している。

「わたし」の輪郭は、固定されたものではない。やわらかな膜のようなもので、浸透しあう柔軟なものなのである。


『はみだしの人類学』感想

まず率直に、「人類学者って楽しそう」と感じた。
わたしと他者の比較という学問的な側面も魅力的だし、何よりある文化圏に長期滞在する体験をしてみたい。人類学の他の書籍も読んでみようと思う。

また、「つながり」を広く捉え、そこから得られるものを考えるきっかけにもなった。
私たちは「つながり」の中で生きている。コロナ禍で、ひとと会う機会が減った今もそうだ。仕事もそうだし、それ以外でも、映画や本やYoutubeを鑑賞して、人とつながり、共感している。
そして、その中で、相互に影響し合い、また、自分のアイデンティティを形成しながら生きているのだ。


休み明けから仕事がんばろ。では。

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