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【質問箱】脚本家が憧れるドラマ3選


こんにちは。皐月です。
今日はVR会議に向けて、お借りしているVRゴーグル「OCULUS QUEST」を体験していました。

自分の部屋の床、活動できる範囲を設定して操作するVRは初めてだったので、しょっちゅうエリアに出ては画面が停止するメカ音痴がさく裂しています。


LEGO MOVIEなどのVR体験コンテンツなども観れるようになったし、7月に発売されたリトルウィッチアカデミアのゲームもあるから、借りている間にできることをやってみたいな~と妄想しています。

このnoteは質問箱に寄せられたお題に合わせて更新しています。
以外にも多くの方にご連絡をいただき、なかなか回答される日が来ない!という方もいらっしゃると思うのですが、一つずつ答えていくので、いましばらくお待ちいただけると嬉しいです。

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さて、本日のお題は

「脚本家として影響を受けた、また好きなドラマはありますか?」

です!

脚本家として影響を受ける、というと、3つくらいジャンルがあると思っていて。

・脚本家になろうと思ったきっかけの作品
・好きな脚本家の書いたドラマでも一番憧れる作品
・自分が目指している作品

このあたり、それぞれ変わってくるかなと思います。
なので、好きなお笑い芸人さんを語ったときと同じく、上記3点について少しだけおしゃべりできればと思います。

脚本家になろうと思ったきっかけの作品【白夜行】

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脚本:森下佳子さんがTBSで書かれていたドラマ版『白夜行(2006)』が、私が脚本家になろうと思い立つきっかけになったドラマです。
主演は山田孝之さんと綾瀬はるかさん。他にも、今をときめく田中圭さんや向井理さんたちも出演されているミステリードラマです。

とにかく暗いドラマが好きだった小学生~中学生の時期。
両親もドラマ好きなのもあってか、色々なドラマを常に鑑賞していた私ですが、この『白夜行』だけは観ることを長らく禁止されていました

それは、あまりにもセンセーショナルな物語であり、まだ価値観が固まっていない子供が観ることで、悪影響を受けるかもしれないと両親が判断したためです。
(同じく中学生まで観ることをゆるされなかった作品は『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』です。あれも性描写と残虐描写を両親が子供に見せるべきではないと判断し、14歳になるまでは観てはいけないと言われていました)

中学生になり、いよいよ録画していた『白夜行』を観ていいと言われ、ドキドキしながら再生した瞬間、鮮烈なファーストシーンに度肝を抜かれました。

あまり書くとこれから観てみようと思う人へのネタバレとなってしまうので、基本的な人物設定の解説のみにとどめます。
これは、自分の父親を初恋の少女のために殺してしまった少年が、二人で父親殺しの時効の日に「日の元を手を繋いで歩く」のを目標に、犯罪を隠すための罪を重ねて行ってしまう悲しい恋の物語です。(つまり罪が許される日はどんどん先延ばしにしているのに、それに気づかないふりをして二人は15年後を切望している、という構図。悲しすぎる)

もともとは東野圭吾さん原作の小説であることを知った私は、少ないお小遣いを使って小説版(辞書くらい分厚い)を読み、2度驚くことになります。
ドラマ版ではひたすら犯人側の目線で描かれていた『白夜行』、小説版では刑事視点で描かれていたんです。
※その後高良健吾さんと堀北真希さん主演で撮影された映画版『白夜行』は、小説の内容に即した描き方になっています。

そもそも、これまで観てきた原作アリの作品は、すべて原作の世界観をなぞる形で制作されたものが多かったような記憶があります。そんな中で、そもそも主人公の視点を敵側に置き、映像にする。そんなことをしてもいいんだ……という驚きが一つ。

そして、そのドラマにより、小説版の犯人のキャラクターにより感情移入できるようになっている。森下佳子さんの手腕に脱帽しました。

ドラマはドラマとして犯人視点でストーリーを観て、小説では刑事の視点でストーリーを追うことができる。どちらも新鮮な気持ちで体験できてしまう新しいエンターテイメントのあり方に、私は憧れていきます。

「私も脚本家になって、面白い作品を原作とし、映像にする中で作品世界を壊さずに新しい面白さを作ってみたい」

素晴らしいものを拡散する新しい宣伝方法、それに関わりたい。これが、本格的に脚本家を目指すために私が目標とした大好きなドラマ『白夜行』への思い出です。

好きな脚本家の書いたドラマでも一番憧れる作品【世界一難しい恋】

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脚本家をしていると、「好きな脚本家は誰か」という質問をよく受けます。
あまりにもいすぎて選べないな……と思いつつ、「好きだと思って調べるとこの人だった」といつも驚くのは金子茂樹さんです。

初めて金子さんのドラマを見たのは小学生の頃の『危険なアネキ(2005)』。未だに打ち合わせで例に出すほど大好きなコメディ作品です。
他にも『プロポーズ大作戦(2007)』『コントが始まる(2021)』など、愛らしいキャラクターを描きながらも、人生とは何かいつの間にか考えさせられている金子さんのオリジナルドラマに、いつも元気をもらっています。

そんな金子さんの作品の中で最も大好きなのが『世界一難しい恋(2016)』という、日本テレビで放送されていた大野智さん、波瑠さん主演のラブコメドラマ。

恋愛をしたことのない不器用で不愛想な社長が、不愛想・真面目でカタブツの中途社員を「社長の隣に置くのにちょうどいい女だ」と照れ隠しの言い訳をしながら、全然うまく行かない初恋に翻弄される物語です。

ちょうど、20歳を超えたあたりから自分の観たいドラマの性質が変わりました。
それまでは『白夜行』や『コードブルー』のような、シリアスで緊迫感があり、お客さんが泣いてしまうような物語を作りたいと思っていたのですが、自分でアルバイトをしたり、色々な人と関わるようになって疲弊していくと、「家に帰ってまで悲しい気持ちになりたくないな……」と思うようになっていきます。

私にとって、ドラマは家に帰ったらすぐにチェックする「衣食住」と同列のものだった20代前半。母も疲れて帰って来ることが増え、自分と同じように、ドラマで気分をアゲたい人のために仕事をしたいという気持ちがムクムク湧き上がってきました

そんな時に思い返すのがこの『世界一難しい恋』。
人間関係がまったくうまく行かず、アルバイトばかりして、脚本家に本当になれるのか分からないお先真っ暗な中で、何度も失敗しても好きな人に向かっていく社長の姿が私に勇気をくれました。

今でも、書斎のDVD棚から引っ張り出して、原稿が行き詰ったときに観ています。多分人生の中で一番観ているドラマなんじゃないかな……。

自分が目指している作品【アンブレイカブル キミー・シュミット】

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最後は、脚本家として自分が「目指したい」と思っているドラマですかね。
「目指したい」というよりは「こうであろう」という方が言葉としてふさわしいかもしれません。

それは、『アンブレイカブル キミー・シュミット』です。
大好きな映画『ミーン・ガールズ』の脚本も手掛けていたティナ・フェイさんのNetflixオリジナルドラマ作品。全51話、長い?あっという間に見終わると思います。

ティナ・フェイさんの作品と言えば、パワフルでちょっとやりすぎなくらいキャラの強い女の子たちが、自分のいるコミュニティの中で大騒動を起こす、というのが基本なんですが――。本当に、底意地の悪い女の子のキャラが多いんです(笑)。
それなのに、なぜか彼女の作品を見ると、底意地の悪かった女の子たちが好きになっているから不思議。

「人間の一面だけを見て、切り捨てるのはもったいないかもしれない」というのが、ティナ・フェイさんの作品を見ていつも思うこと。

『アンブレイカブル キミー・シュミット』に出てくるキャラクターも、街にいたら絶対避けて歩くタイプなのですが、彼らも悩み、恋をし、喧嘩をして仲間になっていくことで、少しずつ互いの「いいところ」を見つけ合ったり、「私、変わらなきゃダメなんだ」と気づいて壁をよじ登っていきます。

人間って愛しいな、と思うんですよね。このドラマを見ると。
先ほど『世界一難しい恋』を挙げた時もそうなのですが、誰しもが持つ自分のどうしようもない部分を「世界は受け入れてくれるかも」と思えるような作品が、家に帰って観たいドラマだといつも考えています

自分が観たいなら、自分が書く物語もそうでなくっちゃ。
こういうところが頑固な私なので、もう少し大御所になってオリジナルをバンバン書けるようになったら、より不器用なキャラクターたちが大暴れしてわっはっはと幸せそうに過ごしているようなドラマが作りたいです。

以上が、脚本家である皐月彩が好きなドラマでした。
本当はもっと色々好きなドラマがあって、何度も観たり、DVD棚を神棚として祀り上げているのですが、今回はあくまでも「脚本家としての自分」がリスペクトしている作品をご紹介しました。

やっぱり好きなものについて語るって楽しいですね。

それでは、おやすみなさい。


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