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慰霊施設とウポポイ《民族共生象徴空間》3日目(2023/09/12)

ウポポイ《民族共生象徴空間》1日目(2023/09/09)
ウポポイ《民族共生象徴空間》2日目(2023/09/10)
の続きです。

よかったら、こちらもどうぞ↓
・【旅暮らし記】苫小牧・樽前と白老ウポポイ行ったり来たり(2023/09/08〜09/13)

慰霊施設の案内図

ウポポイからは少し離れた高台に、『ウポポイ慰霊施設(シンヌラッパ ウシ)』があります。
いったんウポポイのゲートを出て、約1.5km。徒歩だと上り坂だしちょっとキツイのでクルマで行きました。

参照サイト↓
Memorial Site 慰霊施設 - ウポポイ
ウポポイ(民族共生象徴空間)慰霊施設|国土交通省北海道開発局

利用案内

こちらも月曜日は休館です。駐車場のゲートも閉まります。

小高い丘の上に、こつ然と。

左のグレーの建物が墓所、真ん中が慰霊行事施設。
周囲は森に囲まれています。

管理人らしき人は見かけたけど、清掃作業をしていて施設の近くには誰もいませんでした。
不安になったけど、慰霊行事施設は開いてました。

慰霊施設の由来

アイヌの人々の遺骨やこれに付随する副葬品は、古くから人類学などの分野で研究対象とされてきました。
明治中期頃に日本人の起源をめぐる研究が盛んになり、研究者らによってアイヌの人骨の発掘・収集が行われ、それは昭和に入っても続けられました。
その結果、数カ所の大学などに研究資料などとしてアイヌの人骨が保管され、それらの中には、発掘・収集時にアイヌの人々の意に関わらず収集されたものも含まれていたと見られています。

日本政府は、アイヌの人々の遺骨などを巡る経緯や、先住民族にその遺骨を返還することが世界的な潮流となっていることに鑑み、関係者の理解および協力の下で、アイヌの人々への遺骨などの返還を進め、直ちに返還できない遺骨などについてはウポポイ「墓所」に集約し、アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現を図るとともに、アイヌの人々による受け入れ体制が整うまでの間の適切な管理を行うことを平成26年6月に決定しました。(ウポポイ慰霊施設は令和元年9月完成)

案内板および公式サイトより抜粋

要するに、乱暴に言えば「墓荒らし」されて先祖の遺骨も副葬品も持ち去られたのです。
それが遠い遠い、自分との繋がりも分からないくらい大昔の墓ではなくて、祖父母とか2〜3世代前の先祖も含まれていたというから驚きです。

『ジュネーブでの先住民族国際会議の報告』会でも同じように言われてましたけど、「世界的な潮流を鑑み」ってところがね。情けない。

出入り口の左右にイナウ

慰霊行事施設の出入口ドアの左右、高い位置にイナウが捧げられていました。
家の守り神=チセコロカムイとは違うようです(形状も違う)。こういうのを説明してくれる人がいないのは寂しい。

慰霊行事施設:西側を向いて撮影

施設の内部・内装はチセをイメージして造られています。
中央には囲炉裏。

慰霊行事施設:東側を向いて撮影

カムイノミ(神への祈り)やシンヌラッパ(先祖供養)などの儀式、舞踏などの慰霊行事を行うための広間(囲炉裏があるこの部屋)、収納室、調理場、トイレがあります。

神窓の向こうに祭壇

建物の東側には神窓が設けられており、正面に祭壇が祀られています。
(祭壇の方へ立ち入ることはできません)

墓所内の状況についての説明板

「慰霊施設」は慰霊(儀式催行)のため、「墓所」は遺骨などの管理および慰霊のための施設であり、保管している遺骨などを用いた調査や研究は行わない、と明記されています。

墓所

こちらの「墓所」が、大学などで保管されていたアイヌの人々の遺骨等々を、アイヌの人々による受け入れ体制が整うまでの間、適切に管理するための施設です。
きっと、もう誰に返還したらいいのか不明なものもたくさんあるのだと思います。

アイヌの墓標をイメージしたレリーフ

壁にはアイヌの墓標をイメージしたレリーフが壁に施されています。

遺骨および副葬品の保管室のほか、遺骨などの整理や返還に必要なスペースがあるそうです。こちらは扉が閉まっており、内部を見ることはできません。

扉の前に、お神酒をお供えしました。
献花台とか設けてくれたらいいのに、と思うけど管理も大変なのでしょうね。

イクパスィがモチーフ

この巨大なモニュメントは、高さ約30m。イクパスィという儀礼具がモチーフになっています。
「過去を忘れず、未来にわたり尊厳ある慰霊を実現するための礎とする」という慰霊施設のコンセプトに基づいて制作されました。

モニュメントについての説明板

イク(酒を飲む)パスィ(箸)は、アイヌの儀礼(カムイノミなど)の際に用いるもので、祈りの言葉と献酒をカムイや先祖に届けてくれる聖なる道具です。
地域差があるようですが、表面には彫刻とイトゥクパ=父系の祖印(家紋)、裏面にはシロシ=所有者印が刻まれます。

こちらのモニュメントは魔除けの意味を持つ棘のある紋様と、フクロウがデザインされていました。
なにフクロウかまでは分かりませんでしたが、シマフクロウなら「コタンコロカムイ(村の守り神)」としてイオマンテ(霊送り)の儀式が行われたほどヒグマと並ぶ最高位のカムイですから、勝手にシマフクロウだと思ってます。

裏面上部のデザインも、フクロウっぽかったです。

太平洋を眼下に望む

午前中は雷雨で、雨は止んだものの厚い雲が低くたちこめていて、いっそう厳かな雰囲気に包まれていました。

ここまで来る方は、ウポポイに比べてどれくらいいるのだろうか。
北海道内で知り合った方々の中には、アイヌに興味を持つこと自体に嫌悪感を示される人もいます。

対立は分断を生み、その悪循環はいったいいつまで継承されてしまうのか。
大なり小なり、世界中そこらじゅうで繰り返される諍いの原点は「自分」と「相手」を分けること。

相手の気持ちに寄り添えない。
自分が満たされていないから。

この世には圧倒的に思いやりが足りない。
(「愛」って書くと、とたんにチープに聞こえるくらい足りない。)


ウポポイの「光」の部分に戻ります。

ウポポイ案内図

だいぶ遅い時間(14時)になりましたが、三度目のウポポイです。
位置関係は把握できたけど、プログラムのタイムスケジュールは相変わらず頭に入っていません(笑)

律儀に毎日、記念撮影。

今日は特に目的もなかったんだけど、来れば何かあるだろうと思って。

ウポポイ内巡回バス

そしたら、時期としては中途半端な本日より園内巡回バスが運行を始めていました!
乗車券不要、無料です。特に時刻表もなくて、延々とピストン運行しています。

低速電動バスです

エントランス、体験交流ホール前、国立アイヌ民族博物館前(チキサニ広場)、管理運営施設前(伝統的チセ手前)、工房前に停車します。
後部には車椅子リフターを配備。

かなり広いから、小さなお子様連れのファミリーや足腰に不安がある方、お年寄りも助かりますね。

アイヌ式挨拶のポーズ?

ふらっと立ち寄ったポロチセの前で、係員さん?が「アイヌ民族衣装を着て記念撮影できますよ」と誘うので、旅行気分に浮かれてやってもらっちゃった。

中で案内していた男性が「あれっ? 3日目ですよね?」
覚えられてた(笑)

工房前に展示されている丸木舟

また、園内をぶらぶら。
工房前に展示されている丸木舟・イタオマチプに、つい目がいってしまう。一昨日までは、そうでもなかったんだけど…のぼりべつクマ牧場のイタオマチプ効果おそるべし。

・【写真記】のぼりべつクマ牧場(2023/09/11)

自動販売機もオリジナルデザイン

工房前の自動販売機。
イラストでアイヌ語の勉強になるデザインなのに、ゴミ箱で隠れてたのがもったいない。ちょっと引き離してから写真を撮りました。(そして、また元に戻しました。)

シジュウカラ

曇天の夕暮れ時、ちょっと肌寒かった。
広場の木立はポツリポツリという感じで寂しいんだけど、シジュウカラが飛来してました。すばしっこくて、なかなか写せない。

のんびりしてて忘れちゃってたけど、初日からのリベンジ案件『ウポポ アキ ロ』13時からだった。しまった、また外した。
まぁ入場したのが14時過ぎてたからなぁ…。

バスの折り返し地点

伝統的コタンと低速電動バス。意外と違和感がない?

図書室からの眺め

国立アイヌ民族博物館 1階にあるライブラリにも立ち寄ってみた。とにかく行ってないところは制覇しておきたい。

壁いっぱいの本棚

アイヌに関する専門的な学術書、図鑑、写真集、絵本など、幅広いジャンルを収蔵しています。
料理本や、江戸末期の大型絵図など面白い本もたくさんありました。

手に取った本は棚に戻さず「読み終えた本置き場」に持って行きます。
感染症対策なのかと思いきや、どんな本が興味を持たれているのかの集計用でした。チェックしたら、すぐ本棚に戻すそうです。

ここを利用する観光客はまばらで、ちょっと中を覗いていく程度でした。
近所だったら年間パスポートで通ってもいいかも知れません。静かで快適です。

これでラストと思ってた

今日は樽前方面に移動するため、早めの16時に退場。
足掛け3日間、満喫したね〜と、これでラストだと思うとセンチメンタルな気分で後にしたのですが、まさかの4日目も来ようとは、この時つゆ知らず。


11月3日(文化の日)は無料開放DAY!
11月3・4日には、各地のアーティストや工芸家によるアイヌ民工芸品およびアート作品の展示販売、アーティストトークなどのイベント『アイヌアートショー2023』が開催されます。

詳しくは『ウポポイ(民族共生象徴空間)』公式サイトへ。

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