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ウポポイ《民族共生象徴空間》1日目(2023/09/09)

はじめての『ウポポイ(民族共生象徴空間)』。
アイヌ文化に興味があって、様々な場所や人と見識を広げてきましたが、ウポポイに関しては賛否両論というより否定的な意見を聞くことが多かったので敬遠していました。

ですが先日、ご縁があって『ジュネーブでの先住民族国際会議の報告』会に参加させていただき、ウポポイで働いている若者と出会って、少し興味が湧いてきました。

一度も行くことなく否定はできませんよね。
この度、しっかりと見てきました!

ポストもアイヌ文様

10時、小雨降るウポポイへ。人もまばらです。

『いざないの回廊』

入口通路が真っ直ぐではなく、壁に遮られカクカクと曲がりながらエントランスへ。
高さ4mほどの石壁に施されたエンボス加工?のドット絵が、今日の曇り空とよく合う。ポロトの森をイメージしてるのかな。
こんな工法があったのね。うちにも飾りたい(笑)

動物の名前も小さく書いてあるといいな

森の中には、シマフクロウ、オオカミ、エゾシカ、キタキツネ、エゾリスなどなどの動物も描かれています。
混雑時には、これを眺めながら「あっ、あそこにもいるよ!」とかお喋りして待ち時間を楽しくやり過ごせそう。

カフェリムセ

『歓迎の広場』には、カフェレストラン『カフェリムセ』とスイーツカフェ『ななかまどイレンカ』があります。

はじめまして、トゥレッポん

エントランス前、ウポポイのPRキャラクター『トゥレッポん』がお出迎え。

これは何を模したキャラクターなんだろう?
アイヌに関連したものなんだろうけど… 玉ねぎじゃないだろうし、にんにく? カブ?(なぜか食べ物ばかり連想)

後になって、トゥレプ=オオウバユリだと判明しました。
オオウバユリの球根(鱗茎)がモチーフ。これは判らん!!

片手に花(実)や、トゥレプアカㇺ(平べったいドーナツ型をしたオオウバユリから作る保存食)を持ってるバージョンもあります。
予備知識がないと伝わらない… けど、それが狙い? このキャラクターだけで3つも4つも勉強になります。

エントランス棟

円形状のエントランス棟には、カフェ、レストラン、お土産屋さんなどが入っています。ここまではチケットがなくても利用可能です。

1日では回りきれないだろうと、年間パスポートを購入。入場料 大人1,200円に対して年間パスポートは2,000円なのでお得です。

顔写真を撮ったりして、意外としっかりしたカードが出来上がりました。ちょっと時間がかかったけど、いい記念品にもなります。

園内マップ

こちらがウポポイ場内全図。
想像していたよりも敷地面積は広くなかったけど(それでも約10万m2)、端から端まで歩くと10分はかかります。

体験交流ホール

国立アイヌ民族博物館』では、史料の展示のほかシアタープログラム(2作品×約20分)上映。(さらに1階にカフェとおみやげコーナー)

体験交流ホール(ウエカリ チセ)』では伝統芸能の上演や、「カムイ ユカㇻ」を題材にしたアニメの上映(2作品)。

体験学習館』ではアイヌ料理の調理体験(要予約)や、トンコリやムックリなどの楽器の解説と演奏。

体験学習館 別館』では動物(カムイ)の視点から見える世界を、上下左右の広角映像で体感できる『カムイ アイズ』の上映(2作品、約10分)。

工房』では実際に作家さんの手仕事が見られるほか刺繍・木彫り体験ができる。

伝統的コタン』では、文化解説や口承文芸実演、アイヌ語学習プログラム、ポン劇場(紙芝居)。

屋外においてはアㇰシノッ(弓矢体験)や丸木舟体験などなど…

むっちゃ多い。目が回る。
まず最初に各種プログラムのタイムテーブルと、会場の位置を把握しておく必要があると痛感しました。スケジュールを組むのが大変!

カムイアイズ

『体験交流ホール』での上演時間を調べて、空き時間に散策するか〜と『体験学習館 別館』の方へ歩いていたら、ちょうど上映時間が近くて所要時間も10分程度とのことで入場。
『カムイ アイズ』って何だ?、と訳も分からず(笑)

半円ドーム型のスクリーンが各テーブルごとに設置されてて、ロゴマークといい異様な雰囲気。
内容は、動物(カムイ)の視点から見える世界を、上下左右の広角映像で体感できるというもの。ドローン+360度カメラ映像なのかな。
酔いやすい体質の方は、あまり近づかないで観てください。

(確か)オジロワシとキタキツネの視点の2作品で、空からの映像、地を這う映像が四季を通じて映し出されます。
そして、最後は射たれる。
アイヌ(人間)にその体を恵みとして与えることによってカムイとして祀られ、動物は満足してカムイの世界に帰るわけですが、そのへんの説明が不足してると思う。

2作品とも、「ドシュッ」て効果音とともに倒れる映像で終わるんだもん。
「わたしはカムイ…」とかナレーションがあったように記憶してるけど、カムイノミしてもらわないとカムイになれないんじゃなかったっけ。
最後はカムイノミの映像で終わってほしかった。

植物園?

園内をお散歩。芝生広場や立派な建物群と対象的に、片手落ち感がぬぐえない植物園。もう少し、どうにかやりようがなかったのか。

国立アイヌ民族博物館

まだ時間があるので『国立アイヌ民族博物館』に入ってみる。小雨とは言え傘を差して歩くのも億劫だし。

パノラミックロビー

2階パノラミックロビーからの眺め。ポロト湖が一望できます。

1階にはミュージアムショップ、カフェ、図書館、シアターなどがありました。こちらは、また後ほどゆっくり。

様々な映像に導かれる

展示室へ続く廊下はスクリーンになっていて、アイヌの人々が自分たちの言葉や文化などを紹介しながら、入口へと案内するように映像が現れては消え、現れては消えます。
そして、それ(映像)がループするだけかと思っていたら、何パターンかあって手が込んでる。

展示室内は一部を除いて写真撮影可ですが、動画撮影は禁止です。

展示室マップ

案内にもアイヌ語が用いられています。
アイヌは文字を持っていないし、カタカナにはない発音もあるので(「ト」に「 ゜」がついてるのとか)表記には苦労したでしょうね。

展示室の様子

基本展示室と、特別展示室があります。
繋がっているので特に気にせずに見て回ったのですが、基本展示室ではアイヌ民族の視点で「わたしたち」を紹介するという展示方法を取っています。
だから一部のコーナーで「何で?」って思うような場面があったんだなと後になって知った。

ちなみに今更ですが、「アイヌ」とはアイヌ語で「(いい)人間」という意味です。よくない人間は「ウェンペ」。

アイヌ工芸の数々

あっ、あの方の作品も展示されてる〜!
新旧様々な工芸品、その高い芸術性は実用品を超えて美術品に昇華しています。ついつい魅入ってしまう。

ウィルタやニヴフの衣装

アイヌだけでなく、北方民族(樺太アイヌ、ウィルタ、ニヴフなど)に関する展示物もあります。

(左)ウパㇱクマの映像、(右)クイズもあった

写真:左の男性が語るウパㇱクマ(口伝)が、声といい発音といい素晴らしい。
(手前のアニメ映像とは連動している訳じゃなくて、まったく関係ない物語だった。)

子ども向けのクイズもありました。

アニメーション映像

堅苦しくなく、大人も子どもも楽しめるように工夫されてるようです。

イオマンテの衣装

ひときわ存在感のある、子熊のイオマンテ。どこか悲しげ。

イクパスイ

今まで見てきた資料館や博物館でも、お目にかかったことがないような形状のイクパスィがたくさん展示されていたのですが、個々の説明がまったく雑で…。
ひとつひとつに物語がありそうなのに。

和人とアイヌとの交易

学習コーナー。たくさんの交易品があるけど、和人・アイヌどっちのものかな?

「探求展示」とは?

こちらのコーナーは係員がいない時は入れません。お昼休みだったのかな。

ヒンナヒンナキッチン炎

13時を過ぎたところでランチへ。一度、ゲートを出ることになりますが再入場される方には「再入場券」が渡されます。(わたし達は年間パスポートなのでカードを見せるだけ)

焚火ダイニング・カフェ ハルランナ』は高級すぎたので、リーズナブルな『ヒンナヒンナキッチン炎』へ。

ホッケフライカレー

「ホッキ」フライと間違えてオーダーした、ホッケフライカレー。見た瞬間に「しまった!」ってテンション下がったのは否めない。いや、美味しかったけど。
やっぱり観光地価格、1,280円は高いなと思っちゃう。

向こう側に見える大きな建物は国立アイヌ民族博物館

食後に園内をお散歩。もう雨は上がっています。
池には白っぽい魚が泳いでいるのが見えたのですが、水が濁ってるし曇天でわかりにくかった。鯉でした。

上演・上映タイトルが多い!

『体験交流ホール』での上演・上映ラインナップ。見てるだけで頭に入ってこない、この情報量の多さよ。

特別プログラムもある

重要なのは、右の看板。まず真っ先に「これだけは押さえないと」というプログラムのチケットを取っておく必要があります。伝統芸能の上演は「指定席」です。(アニメ映画は自由席)

鳥用仕掛け罠や、エゾシカの構造など

また博物館に戻って、続きから見学。係員さんがいる時しか見れない、実際に触って体験できるコーナーも見ることができました。
常駐してくれるといいんだけど、人員不足なんでしょうね。

チセの模型

チセ(家屋)の構造がよくわかる模型。
そして、囲炉裏を囲んで家族の誰がどこに座るのかも決まってます。お客様が来たら、どこに座ってもらう? そんなクイズも。

伝統的コタン

『体験交流ホール』16:30の上演プログラム「シノッ」を観る。
ちなみに「シノッ」とは、「遊び」のことです。

公式サイトに<上演は 「シノッ」か「イメル」のいずれか>って書いてあるけど、その「シノッ」と「イメル」の違いとかは明記されてない。

上演の詳細は、看板に書いてありました。16:30は【E】。
前説、正式な挨拶(ウウェランカラプ)、帯広アイヌに伝わる「トドマツの踊り(フッタレ チュイ)」、旭川/帯広/白老/白糠/平取に伝わる「英雄叙事詩(ユカラ、サコロベ)」、ムックリの演奏、白老に伝わる「熊の霊送りの踊り(イヨマンテ リムセ)」。

全部で約20分。これだけ濃い内容を20分に収めるのはさすが。ツアー客など時間に追われている観光客でも「見てみよう」と思えるのは長くて30分までくらいでしょうから。

ポロト湖の対岸に見えるポロト自然休養林

ポロト湖は、周囲約4km、面積約33ha。「ポロ ト」とはアイヌ語で「大きな沼」という意味です。(「小さい」は「ポン」)

対岸に見えるのは『ポロト自然休養林』(ポロトの森)。
約6kmの散策路(サイクリングロード)や複数の遊歩道があり、望岳台からは樽前山、ホロホロ山、白老岳や太平洋まで望むことができるそう。来年はそちらも散策してみたい。

ポロトの森キャンプ場』も泊まってみたいけどキャンピングカーでは無理そうです。

冬はポロト湖が結氷し、わかさぎ釣りやスケートができるらしい!

写真奥の芝生スペースがチキサニ広場

今回、足掛け4日も訪れたのに丸木舟(チㇷ゚)実演・解説を見られなかった。夏季限定(5月~9月頃)で10:15と13:15の2回、所要時間 10分です。

晴れた日には、チキサニ広場でもアイヌ古式舞踊やムックリ演奏などが開催されます。こちらの上演時間は不明。

夜は夏季限定でプロジェクション・マッピング『夜のウポポイ』開催。冬はイルミネーションに彩られるそうです。

伝統的コタン

伝統的コタンも散策。大小5つのチセ(家屋)と、プ(貯蔵庫)やヘペレセッ(子熊の檻)などの施設が建っています。

写真:左下はチㇷ゚(丸木舟)の保管場所。さっき湖岸に置いてあった丸木舟は、ここにあったのかな?

チセと附属施設の説明板

チセの隣に、小さな畑がありました。12畳くらいかな?
収穫体験とかしないのかな。

ポロチセ(大きな家)

大小5つのチセのうち、公開されているのは『ポロ チセ』『シノッ チセ』の2棟。近代的な造りになっていますが、内装や囲炉裏、神窓などはしっかり再現されています。

いったん竈に火を入れると、アペフチカムイ(火の神)が宿るので火を絶やせないという事情もあります。
伝統的手法で再現された3棟は消防法により火を使えないようです。

囲炉裏には炭火

今日のラストは、17:30からの「ウパㇱクマ」。
ウパㇱクマとは本来、口伝とか言い伝えのことですが、ここではアイヌの暮らしぶりや習慣などの解説を行っています。

囲炉裏の上に吊るされている鮭は本物で、年に1度、この鮭を使ってオハウ(鍋料理)を振る舞うそうです!

ポロチセの内部

写真:左=シンタ(ゆりかご)。右上=ロルンプヤラ/カムイ・プヤラ(神窓)正面に祭壇。

右下=鮭の皮で作られた靴も本物です。かなり防水性が高いらしい。実用していた昔は、うっかりすると狐や犬に食べられることもあったらしい。

色々と質問にも答えてくれて、和気あいあいとした座談会のような雰囲気でした。
最後にムックリ演奏で締め。

また明日!

終わった頃には、すっかり日が暮れていました。

10時から18時まで、びっちり満喫!
でも、まだ半分は心残りがあります。続きはまた明日!


11月3日(文化の日)は無料開放DAY
11月3・4日には、各地のアーティストや工芸家によるアイヌ民工芸品およびアート作品の展示販売、アーティストトークなどのイベント『アイヌアートショー2023』が開催されます。

詳しくは『ウポポイ(民族共生象徴空間)』公式サイトへ。

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