#24【交換日記】

高校卒業の時に
三年間担任を持ってくれた先生が
クラスメイト一人一人に合う
漢字をプレゼントしてくれた。 
 
 
国語の先生だったので
言葉に対する感性は
人一倍強かったのだろう。
 
 
私に選んでくれた言葉は
「佐」という言葉だ。
 
 
訓読みでは"助ける"と同じ読みをする。
 
 
彼女が選んでくれた理由としては
「いつも忙しく走り回っていたけど、
その目的は、自分のためじゃなくて
人のためのことが圧倒的に多かった。
人を助けるために、手伝うために
労苦を厭わず走り回れる貴女だからこそ、
どんな時にも友達が助けてくれる、
そんな仲間がたくさんいたんだろうね」
 
 
と言ってもらって、卒業証書を
渡された記憶がある。
 
 
号泣だった。
 
 
その通りだとも思った。
見てくれてたことに心から感謝した。
 
 
そして、初めての点滴の晩、
珍しく見たいテレビ番組を見るために
遅くまで起きていた父と2人っきり、
リビングに居合わせた。
  
 
父とはとても仲がいい。
(もしかしたら私がそう思ってるだけかも笑)
 
 
私は父が好きだし、
というか家族全員が好きだけど笑
 
 
1時間、電車に揺られて、しかもそこから
最寄駅から20分歩きながら
計1時間半弱、
話が途切れることがないくらい
よく話すし、受け入れてくれる。
 
 
「見守ってくれている」
そんな感覚をひしひしと受けるような
関わり方をしてくれる人だった。
 
 
そんな父が、私に向かって
ボソッと呟いた。
 
 
「ちなつ、最近どうや」
 
「え、なんかむしろ答えにくいんやけど笑」
 
「いや、体力的にも疲れると思うけど
それ以上に気持ちがもっと疲れてるやろ。」
 
 
お父さん、怖い、、、
バレていました。
 
 
思わず泣きそうになり、
でも、涙をこらえて、
なにも言葉が出て来ませんでした。
 
 
2人とも、微塵も動かなかった。
 
 
しばらくたって、父が話し始めた。
 
 
「ちなつ、日記書いてるやろ。」
 
「うん、見せる気はさらさらないで」
 
「そうやなくて、お父さんと交換日記せんか?
覚えとる?ちなつが幼稚園の年長さんから
小学校1年生終わるまでの間、
お父さんと2人で交換日記してたん。」
 
「覚えてる!まだ持ってるで!
ピングーの交換日記な!」
 
「ちなつは、感受性強いし、
この環境はしんどいこと多いやろ。
お父さんは、日記書いてるん知ってるから、
それで発散できてるんやったらええかなって
思ってたけど、パンクしそうになってるやん。
やから、お父さんなんか手伝えへんかなって思って。」
 
 
ダメだった。
思わず、涙がこぼれた。
 
 
さすが、父親だと思ったし
当事者でありながら
ちょっとだけ部外者な父親だからこそ
私の異変に気付き、
私にぴったりな提案をしてくれた。
 
 
言葉に表せないぐらい、感謝した。
 
 
「ありがとう、でも、これは
私頑張って乗り越えたいねん。
やから、ほんまにあかんくなった時に
ちゃんと頼るから、頑張らせて。」
 
 
思わず、言葉になっていた。
私の眠っていた本音が、やっと出た。
 
 
辛かった。
とっても辛かった。
 
 
だけど、乗り越えたかった。
 
 
これを乗り越えたら、
私は強くなれる気がしていた。
 
 
それがやっと言葉になって
自分の中で認識できた。
 
 
お父さんは、そうか、頑張れよ。
といって、2階に上がって行った。

そして、その決断が、
結果的に私を強くした。
 
 
でも、父親のそのオファーがなければ
自分の本音に気づく事もできず
ただただ辛いだけだったと思う。


高校の担任が選んでくれた言葉、「佐」は
確実に父親譲りだと思った。
 
 
本当に、男気溢れる
かっこいい父親だ。

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