#23【家族愛の形】

そこからしばらくして、
祖母の喉に点滴用の蓋を
取り付け、
初めて自宅で点滴をする
というある意味医療行為を
することになった。
 
 
1回目の点滴の時は
不安だったので
病院から看護師さんが
来てくれて、コツなどを
指導してくれながら
なんとかつなぐことができた。
 
 
「この薬は、使い捨ててね、
これは、1日2回分あるから
夜も使えるから取っておいて」
  
「この薬の分量間違えたら
大変なことになるから、
もし間違えたらすぐに電話してね」
  
 
思ったより、大変だった。
 
 
リビングで指導を受けていたので
ソファでハナを撫でながら祖母が
「大変そうやなぁ〜」
と呑気に言っていた。
 
「誰の点滴やと思ってんのよ〜笑」
 
 
先日の話の通り
母にも祖母にも味方にならないと
むしろその方が母にも祖母にも
精神が安定するだろうということで
中間地点にいることに決めてから、
その覚悟が育ってからは
穏やかな気持ちで
祖母と話ができるようになっていた。
 
 
「点滴を1日に2回するから
一応、何も食べないでも
いきていけるぐらいの
カロリーは入ってるからね。
サチコさん、無理して食べることは
ないけど、食べたいものは
食べたほうがいいからね」
 
 
と言い残して看護師さんは
帰って行った。
 
 
基本的にもう、固形のものは
食べれなくなっていた祖母。
 
 
当時は、もうすでに
消化、排泄の体内器官が
全てがんに侵されていた。
 
 
だから、入れることもできなければ
出すこともできない。
 
 
妊娠6ヶ月並みのお腹の
膨れ方をしていた。(祖母、母曰く)
 
 
「子供が入ってた時は
このぽっこりお腹が
愛しくて仕方なかったんやけどなぁ〜笑」
 
「無理やわ、だって今入ってんの
子供やなくてう●こやもん笑」
 
 
この祖母と母のやりとり、
何回聞いたものか笑
 
 
祖母の母に対する素直に表現できない
愛情を、ちゃんと理解し、
それに合わせて回答する母親。
 
 
こんな風に関係性ができているからこそ
いがみ合っていても
放置できると判断した。
 
 
うちの家族は、みんながみんな
とっても照れ屋だ。
 
 
だから、まっすぐ愛情表現できないし
時々投げても、まっすぐ飛ばないから
訳のわからない方向にファールする。
 
 
でも、それで生活してきちゃったもんだから
ファールしても、ちゃんと受け止めて
またファールしながらも返球するのだ。
 
 
そんな不器用な家族が、好きだった。
 
 
世の中いろんな家族愛の形があるけど
我が家は、今も昔もこうだった。
 
 
もう、数ヶ月後には
この家族愛の形から
物理的に、1人抜けてしまうのだ。
 
 
この形が好きだからこそ
その喪失感の大きさに
その予想だけで毎晩泣いていたのは
家族にも内緒にしていた当時の私の秘密だ。

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