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~Here with you~マギーズ東京 秋山 正子さん

マギーズ東京センター長 秋山 正子さん
実姉のがんの在宅ケア経験から訪問看護師に。医療や介護について気軽に相談できる場をと、暮らしの保健室を開設。マギーズ東京を、共同代表の鈴木美穂さんとともに設立し牽引。2019年、赤十字国際員会からナイチンゲール記章を受賞。

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マギーズ東京本館とアネックス館の間には、木柱が静かに立ち、建物内でも気持ちの良い林の中にいるよう。視線を先に向けると周囲の方々と育てられているガーデンが見える。ガーデンのすぐ先には運河の水の流れがゆったりと見渡せる。視界の中には思い思いの時間を過ごす利用者の姿や声を感じることができる。訪れる私たちを心から受け入れて、無条件に寄り添ってくださるセンター長の秋山正子さんや看護師の岩城典子さんからお話を伺いました。

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マギーズ東京について

認定NPO法人 マギーズ東京は、がんになった人とその家族や友人などが、とまどい孤独なとき、無料で利用できる場です。看護師・心理士がいて、友人のようにお話を聴いていただけ、グループプログラムなども通じて、再び自分の力を取り戻す一歩を一緒に探します。英国マギーズセンターの正式国際ネットワークとして運営されています。チャリティ(寄付や協力)だけで支援相談が行われています。


Here with you

筆者がマギーズ東京の秋山さんのご講演をCancerXにて拝聴した際、Here with youの考えに深く共鳴しました。
Here with youに込められたメッセージとは、「私たちはここで、いつも、あなたとともにいますよ」もし私たちに寄りかかりたいときは寄りかかって大丈夫ですよ、ということ。「治療でも暮らしでも何をどのようにするかを決めるのは本人、だからマギーズでは本人が決めるために必要なことを一緒にサポートする姿勢を大切にしています。」(秋山さん)

講演では同時に、「たくさんの語りの中から、どう生きるかを学ばせてもらう」との言葉もいただきました。それは、死生観を持つこと、考えることは死に近い人々だけでなく全ての人に有用な可能性があり、Well-beingにも繋がっていくのではという私達の想いと重なりを感じました。


(CancerX: がんと言われても動揺しない社会を目指す産学官民医といった多様な立場の人が力をかけ合わせ、がんの社会課題の解決に取り組む組織, https://cancerx.jp/)


マギーズ東京に2度訪問し、センター長の秋山さんならびに看護師の岩城さんから、センターで大切にしている価値観や死生観についてお話を伺いました。

どう生きるかを支援する

最期の時まで元気に、もっと豊かに過ごせないか、という秋山さんの想い。
がん治療中は治療に専念しているから、先に起こることにはあまり目を向けないもの。でも、がんは最期のところが慌ただしくなり、突然治療から突き放されるように感じることもあるとのこと。
準備をしていないと、緩和ケアやホスピスの選択肢をとれないこともあるそうです。
「もっと手前からケアできないか。」
「がんケアの道筋がもっと分かるようになれば、本人がどういうことを選択するか、本人の意思を引き出すことができると思う」とおっしゃる秋山さんの表情には普段の穏やかな中に強い想いが感じられました。

世間話と雑談から始まる


質問:自分の大切なことや死生観を話すきっかけ作りをどうしてますか?


自分でシナリオを作るのではなく、相手が言うのを待っています。
世間話と雑談から始まることがほとんどです。
高齢になると死の話もタブーではなくなってきます。
例えば、ご近所さんが亡くなったとか、どうしてるかなとか心配している。そんなときに、もし自分だったらどうしたい?と聞くきっかけになるかもしれないですね。

第3者と話すことで、自分の中で整理ができる。そうすると家族と話せるようになることもあります。

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必要な人に必要な情報が届くように

死生観の現実味が変わってくる
高齢者を親に持つ子供世代(40-60代)はそろそろ自分事化が必要かもしれない。青天の霹靂にならないように。
親が本当は家に帰りたいのに、救急になったときに救急車で運ばれてしまうこともあります。
東京都福祉保健局の「東京フィフティ・アップBOOK」には、年を重ねても安心して暮らすための情報が書かれています。筆者たちに自然な形で冊子を紹介くださりました。
必要な人に必要な情報が届くように、秋山さんの心遣いを感じる瞬間です。


長く生きるとはどういうことなのか?

人生の先輩方のライフスタイル(衣食住、趣味)やこだわりを感じることができ、色々な発見がある。

とても面白いよ、と2240歳スタイル冊子を勧めてくださりました。
冊子に丁寧に綴られた、総勢29人の先輩方の自分なりの生き方や健康を維持して暮らす生き方を垣間見ることができます。
先輩方が大切にしているライフスタイルが純粋に面白く、尊重したいと想いを馳せました。
秋田県秋田市の地域づくりの活動で開催されたもので、秋田市のエイジフレンドリー事業など盛んにおこなわれている温かい街づくりに関心が湧きます。

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https://www.city.akita.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/231/2240yo_chirashi.pdf


豊洲に決まったのもドラマ

「水の流れを感じながらお茶をして時間を過ごす方も多いです。」
マギーズ東京は有明がんセンターが近く、来院の際に立ち寄る利用者も多い。
はじめ病院近くの敷地に建てられないかと画策したけれど使用できるスペースはなかった。
縁があって利用できることになった現在の豊洲のエリア。
一番奥の場所になったが、それがかえって良かった。
マギーズと運河(水の流れ)の間には何も建物がたっていない。
自分を取り戻すスペース。
イギリス・マギーズセンターの創始者マギーさんの病院で得られなかった自分の力を取り戻す場所を創りたいとの想い。
水の流れを見るのはとても良い。
晴れていると東京スカイツリーもその先に見える。

言葉でその価値を伝えることは簡単ではないけれど、整った環境で、セルフコントロールを取り戻す価値は、現場で体験してこそ感じるものです

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「環境」と「対話」の両輪を大切に

マギーズ東京はコロナ禍でも安全に注意して相談の場を開け続けています。
安心安全な場を作るために、「環境を整えること」「看護師や心理士との対話」の両輪を大切にしている。
本物の素材やデザインのあるスペースでお話を聴くという環境設計のスタイルがグローバルルールになっている。
患者さんの中には自己肯定感が下がっている方もいらっしゃる。患者さんが大切にされていると感じて、何を話してもよい雰囲気を重視している(看護師の岩城さん)

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トイレにトイレと書いていない第2の我が家

「トイレには、トイレと書いていないんです。病院ではなく、第2の我が家の雰囲気が感じていただくためです。」
確かに家のトイレにはトイレって書いてないですね。
トイレ部屋の中は広いスペースが設けられていて、お祈りをしたり、泣きに来られる人も多いのだそうです。


マギーズ支援のやり方は色々あります

世界が注目する新星ヴァイオリニストとNHK交響楽団によるチャリティーコンサート
〜チケット代が無料のがん相談支援を行う「マギーズ東京」の運営費に〜
2022年4月26日@東京芸術劇場コンサートホール(池袋)

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執筆者あとがき
ただただエンパワーメントしていただきました。
周囲の自然や花のある環境で秋山さんや岩城さんに歓迎され受け入れられてお話をさせて頂いているうちに、私自身も話をさせていただきたい気持ちになりました。そして自然な流れで自身が抱えている悩みをしっかり聴いていただきました。病気と共に生きる家族や友人として自分の力を取り戻すことをサポートいただきました。大切な人がより良く豊かに生きることに深くかかわろうと想いを強めました。ありがとうございました。
これからも様々な形で応援します。

執筆者紹介

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