[本・レビュー]マルシェのつくり方・使い方 脇坂真吏著

え?商売を始めたいけど、地代や店代が払えない?だったらマルシェはいかが?


マルシェとは『テント等の仮設設備による直売の売り場』です。モールのテラスや通路の両側などでみかけるおしゃれな「あれ」です。

著書の脇坂さんのプロフィールです。

脇坂真吏(わきさか・まさと)
株式会社AgriInnovationDesign代表取締役。株式会社東神楽アグリラボ代表取締役会長。株式会社DKdo代表取締役/東京代表。一般社団法人マルシェ・マーケット研究所 代表理事。1983年生まれ。東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科卒業。「小学生のなりたい農業1位を農家にする」をモットーに大学4年時に企業。その後、NPO法人農家のこせがれネットワークの設立をはじめ、農業活性に関わるプロデュースを全国で展開。2009年から「ヒルズマルシェ」の運営に関わり、以降東京で「ワテラスマルシェ」「浜町マルシェ」「KITTE前地下広場マルシェ」、北海道で「SouseiMarche」の運営に携わる。

脇坂さんは10年以上マルシェの運営、経営に携わっておられますが、始める以前にはマルシェの存在には否定的だったようです。その理由として

①農家が自ら販売することは容易ではない
②日本の流通システムはハイレベル
③消費者が関心を寄せるのは商品の価格と品質で、農家ではない

の三つを挙げられています。何も農家に限らず、これは他の業種(本、靴、服、アクセサリーなどなんでも)でも当てはまると考えられます。

私はオンラインで本屋を開くべく、調整中ですが
①本屋が自ら販売することは容易ではない
②日本の流通システムはハイレベル
③消費者が関心を寄せるのは商品の価格と品質で本屋ではない
と完全に置き換えられます。
しかしながら、10年が経過して、脇坂さんのマルシェへの評価は完全に変わったようです。

脇坂さんはマルシェには四つの楽しみがあるとおっしゃられています。
「見つける楽しみ」「会話する楽しみ」「食べる楽しみ」「また会う楽しみ」の四つです。

脇坂さんはマルシェを『コミュニケーション型移動小売業』と定義されています。

店先に直接たつために、お客さんとのコミュニケーションが必要であり、そのコミュニケーションをうまく活かすことで売上倍増、マーケティング調査も可能となります。お客さんにしても、ただ「物を買う」だけでなく「いきつけの親しい店主から納得の品をゲット」できるという「ただの買い物」以上の体験が可能となります。

ただ野菜や食品を買うだけならスーパーだけで事足ります。しかしながら、店主やそこで扱っている商品、商品に関する店主の知識などにお客さんが興味をもてば、そのマルシェは他の店との差別化が可能となります。

本を売るだけならアマゾンや大手の本屋に適う余地はありません。しかしながら、ブログなどで私に興味をもっていただける方がいれば、私から本を買ってもいいという方がでてくるかもしれません。

これは野菜や本に限ったことではなく、アクセサリーや衣類でも同じことです。別に安くなくても(もしかしたら通常より高くても!?)、その売り手から買いたいと思ってもらえれば商品は売れるのです。

ではマルシェではどのような費用・備品が必要となるのでしょうか。
『マルシェの開催にかかる費用』
①設備・備品代(イニシャルコスト/一部消耗品はランニングコスト)
②運営費用(ランニングコスト)

『具体的な備品』
・テント(およびそれに関わる備品)
・机(およびそれに関わる備品)
・販売用備品
・事務局備品

マルシェによっても異なりますが、1回あたり、5000円程度からマルシェでの出店は可能なようです。新型コロナ感染症では自粛要請が出されましたが、店舗が休業しても、家賃や地代などの固定費がかかることが大きな問題となっています。マルシェを利用すれば、この固定費を大きく抑えることが可能となります。

また、マルシェは主催者、運営者、出店者、カスタマーが存在するため、それぞれの組み合わせによって、新たな企画も可能となります。

『マルシェに吸引されてくる取り組み例』
①企業や自治体が商品のプロモーションなどで活用
②民間団体の社会貢献活動などの発表・実践の場として活用
③施設テナントや近隣店舗などとのコラボレーション

マルシェ内で子どもが一人でおつかいデビューできる「おつかい大作戦」という企画も紹介されています。実際のお店を通じて子供たちが実社会を安全に体験できる機会は非常に貴重です。自分がまだ保育園児の頃に、紙のお金をもって、紙の肉や魚を買い物できるイベントがあってどきどきしたのを思い出しました(お金も食品も大人からしてみたらひどい落書き程度のものでしたが、大人になった今、実際の買い物でもあれほどドキドキしたことはないかもしれません。いや、初めてファミコン買ってもらえた時はもっとドキドキしたかな)。

本書では、マルシェを運営する際のポイント、マルシェで出店する際のポイントなど、マルシェに関わる様々な側面からの戦略やアイデアが満載です。
これらの知識はマルシェに限らず、小売業でも役立つと考えます。

例えば

『売れる店のシンプルな四つの法則』
①「売り場」という前提を理解している
②「何屋」かすぐにわかる
③目玉商品/売れ筋を用意している
④マーケティングを理解し実施できている

『売れない店の三つの理由』
①お客を見ていない
②商品が正しくない
③周りが見えていない

脇坂さんは『マルシェの良さ(コミュニケーション・開催頻度・低コスト)を上手に活用し、マーケティングの制度を高めていく』ことが重要だと述べられています。

本書でも触れられていますが、BaseやStoresなどの出現により、ネット上でビジネスを行うことが以前より格段に容易になりました。オンラインビジネスの最たる成功例がアマゾンだと考えますが、オンラインショップにないメリットをもつものとして対比されるのが実店舗です。土地をかりたり、店を建てるのは大きな資金が必要ですが、マルシェではそういった資金負担を軽減することが可能です。

実店舗を出す前に、マルシェで試行錯誤するのも有意義だと思われます。

もちろん、比較的手軽に運営できるからといって、「マルシェは儲かる」とか「マルシェは簡単」というわけではありません。

甘くみてはいけないけど、やっぱり魅力が満載。マルシェに関する運営や出店のことを知れるのが本書です。私的には読んだかいは大いにありました。気になった方は是非一読してみてください。新たなビジネスチャンスが開けるかもしれません。


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