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生い立ち【毒親・第1話】

僕は関西のとある治安の悪いと言われている町に生まれた。

父は今は上場企業にまで成長した会社の総合職。

当時はまだ中小企業だったので薄給だったようだ。

母は幼い僕と弟の子育てに専念するため専業主婦だった。


記憶では僕が幼稚園の年長になる頃までは、ごく普通の家庭だった。

何事もなければ父の会社も事業規模が大きくなり、もう少し環境が良い地区に家を買って家庭円満に暮らせていたかもしれない。


そんな生活が、父の元婚約者だった女性の夫が焼身自殺を図った事で歯車がどんどん狂っていった。

自殺の原因は不明、元婚約者の女性には子供が二人。

父は傷心の元婚約者の相談相手になっていたようだ。

もちろん母には内緒で…

はじめは出張という嘘をついて会っていたようだ。

ところが出張日数が多いわりに給料に全く反映されておらず、不審に思った母が会社に連絡した。


会社には休まず出社していたようだが、家には帰らずに元婚約者宅に入り浸っていた事が解った。

上司が家にやってきて、父と母と三者で何とか解決策を話し合ったようだ。

馬鹿な父は解決するどころか、会社を退職し元婚約者宅に転がり込んだ。

会社も母も改心するチャンスを十分に与えたようだが、全て無駄にした。


母は祖父母にも相談したようだが、祖父母がまた0か100かという性格で、裁判で慰謝料を貰えだの真剣に問題視している様子ではなかった。

父は若い頃に両親を亡くしていたため身寄りもなく、慰謝料など払える甲斐性がないのに。

母も自己中心的な性格で親の反対を押し切って結婚した事もあったようで、母方は祖父母も親戚も近隣県に住んでいたが一家の一大事に誰も手を差し伸べなかった。


弟は父が連れていった。

僕は子供なりに父が悪い事をしたのは解っており、母の元に残った。


僕の小学校の入学式には誰も来なかった。

治安が悪い地区にある小学校だったためか、僕と同じような境遇の子供もちらほらいて寂しくはなかった。

母からは毎日のように父を憎めと言われ、怒りのエネルギーが僕の小さな体を支えていた。

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