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殺菌シリーズ第一弾:非アルコール性マウスウォッシュ探検

殺菌シリーズ第一弾としてお口クチュクチュ、モンダミンでおなじみのマウスウォッシュの世界をちょっと見ていきましょう。本シリーズは科学者向けに書いており、専門用語も飛び出しますがなるべく解説してわかり易くしますのでお付き合いください。

アメリカではリステリンが普及しており、口をゆすいで口臭予防という習慣がありました。そこへ目をつけて日本人向けのマウスウォッシュを開発ということでアース製薬によりモンダミンが開発されたのだそうです。まあ、日本人でも知っているこの定番2つを先ずは見ていきましょう。

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こちらモンダミンとリステリンのカンジタ菌への殺菌作用を比較した白井やよい氏(奥羽大学歯学部)らの論文によるとどちらも十分な殺菌作用をもっているようです。

リステリンの方が殺菌作用は強いようで、その有効成分をみてみると:

リステリンは精油であるチモール,メンソール,ユーカリプトールとサリチル酸メチルを含んでいる10)。最近,精油の中でもレモングラス,タイム,パチュリ,シダーウッドがinvitroにC.albicansの菌糸形発育を抑制することが報告されている11)。したがって,リステリンに含有されているチモール,メンソール,ユーカリプトールがC.albicansに殺菌作用を示すことが考えられる。

あれ?マウスウォッシュというといつもかなりのアルコールが入っていて、運悪く検問の直前にマウスウォッシュを使用すると呼気の検査で余裕で基準値を越えてしまう問題が各製品で確認されていますが、実は有効成分としては関係ないんですね。厳密にはOHを示唆するオールが語尾にあるのはアルコールでしょうけども、高濃度のアルコールでやっつけるという感じじゃないようです。

モンダミンの方も見てみましょう。

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ふむふむ。溶剤としてエタノール入ってますね。でも洗浄補助剤は三リン酸5Naとあり、アルコールじゃないですね。

ちょっと調べると、実はアルコールって有効成分ではないらしいんですね。歯科衛生士さんの意見を見てみましょう。

こんにちは。歯科衛生士高松です。アルコール入りのマウスウォッシュを使用して、ピリピリと痛い思いをしたことはありませんか?アルコールを含んだマウスウォッシュは、初心者の方にはすこし刺激が強いかもしれません。しかも、アルコールは口の中の唾液を減少させてしまい、唾液が少なくなると口臭の原因にもつながります。では、なぜアルコール入りのマウスウォッシュがあるのか、気になりませんか?慣れるまでは、ピリピリと刺激が強いアルコール含有のマウスウォッシュ。なぜアルコールを入れるのかというと、実は“味のため”なのです。マウスウォッシュに含まれている成分が一般的に味があまりよくないとされているためアルコールを入れることで本来の味を隠そうとしているのです。

これは納得です。生物学者の方ならご存知でしょうけども、エタノールのようなアルコールには確かに殺菌作用がありますが、効果がある濃度は70%付近とかなり高いのです(殺菌用エタノールで高性能検索エンジンDuckDuckGoなどで検索してみてください。全部70%付近のはずです)。

掃除サイトMEGAMI様から画像を拝借しますが、消毒用は76-81%となっていますね。手が濡れている時や蒸発することを考えるとちょっと70%より高めの方が便利だと思うのでやや高めですが、これ以上強くしても殺菌力は増えません。

s-エタノールの種類や違いエタノールの濃度-

アルコール殺菌には水が重用です。アルコールが水よりも沢山あると菌の細胞膜を水が通過して細胞内へとどんどん逃げ込んでしまい、しまいには水が入り過ぎて破裂することで殺菌するのです。だから無水アルコール(100%)では肝心の水が周りにありませんから効果がないんですね。そして疎水性のエタノールが水を追いやって細胞内へと押し込む程度には高濃度でないといけないので70%が丁度よいのです。しかし、そんな高濃度のアルコールはマウスウォッシュには入ってませんのでやっぱり匂い消しや味の調整のためなんですね。

マウスウォッシュにアルコールはよく入っている割には、殺菌という機能には重用じゃないことがわかりました。そこで、いよいよタイトルにある非アルコール性のマウスウォッシュの話題です。

まずはこのCloSYS Oral Careを見てみましょう。1980年代に創始者であるペリー・ラトクリフ博士(Perry Ratcliff)が市場にあるマウスウォッシュのヒリヒリ感と効果の薄さに疑問を呈して、自身の考案したCloralstan®という有効成分を発明して、アルコールの全く入っていないマウスウォッシュを実現したのです。Cloralstan®というのは唾液と反応することで二酸化塩素を発生するように工夫した成分で、発生する二酸化塩素Chlorine Dioxideが殺菌作用を担っているようです。

All CloSYS products contain Cloralstan®, a powerful antimicrobial ingredient (chlorine dioxide) in a patented formula that is highly effective yet pleasantly gentle to use. Naturally activated by your saliva, CloSYS kills bad bacteria in 10 seconds without the burn you've come to expect.

二酸化塩素?あまり聞いたことのない殺菌剤ですね。ちゃんと効くのでしょうか?安全性はどうでしょう?

上のリンクに解説されている内容によると二酸化塩素というのは水道水の殺菌や食品産業で長年使われているようで、その用途では安全性が知られているようです。

Cloralstan® or ClO2 is a highly effective oxidant and has long been recognized as a very effective antimicrobial for its disinfection and sterilizing properties.
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The active ingredient Cloralstan®, is a stabilized molecular form of chlorine dioxide. Chlorine dioxide is one of the safest ingredients used in the food industry today. This active ingredient in CloSYS is an effective and safe antimicrobial agent that requires no mixing to activate.

ホームページでは他の製品は口臭予防にアルコールなどで匂いを隠すのに必死だけど、おれらの製品は本当に殺菌してニオイの元から断つんや!とイキっています。

なかなか製品や技術に自身のある会社で面白いですね。しかし、ちょっと聞いたことのない会社ですし、大手とはいえません。信頼してよいのでしょうか?

P&G傘下のOra-Bはご存知ですか?歯ブラシで有名ですよね。実はP&GにはCrestというマウスウォッシュのブランドもあり、二酸化塩素入りのマウスウォッシュを販売しているようです。

Crestの公式サイトで二酸化塩素の安全性、効果について解説しているページを見てみましょう。

Chlorine dioxide has been used in drinking water to safely disinfect and deodorize it, so small amounts of the ingredient are usually harmless if ingested. If you’re rinsing with a mouthwash containing chlorine dioxide be sure it does not exceed the recommended dose of .8 milligrams per liter.

なるほど。やっぱり水道水の殺菌に使われていて、除臭効果もあるって書いてありますね。あと、安全性に関しては、製品化する時点で誤飲したときの安全性をチェックしているはずですから市場に長くあるということはきっと大丈夫なんでしょうけども、ここにも少量なら飲んでも大丈夫とありますね。一リットルにつき0.8 mg程度の濃度なら大丈夫ということです。

なるほど、安全性は大丈夫そうですが、効くのでしょうか?リステリンやモンダミンが除去できる口内炎などの原因になるカンジタ菌で見てみましょう。このオハイオ州立歯科大学のAdbelらの実験では二酸化塩素で入れ歯をした老人たちで萎縮性口内炎に悩む方を被験者に、二酸化塩素でのうがいと入れ歯の掃除をしてもらい効果を確認しています。

Results showed marked improvement in the clinical appearance of the tissues after 10 days, with total resolution in the majority of cases. The total CFU/ml ranged from 15,000-53,000 at baseline and was reduced to < or = 500 after 10 days of treatment (p < 0.001).

その結果、大成功。見事に口内炎の症状回復とカンジタ菌の検出数低下を達成しています。

第四弾で触れますが、酸化ストレスで殺菌する作用機序からいって好気性の真菌は二酸化塩素への耐性が嫌気性であるウイルスや細菌よりも強そうです。なのでこの結果は非常に意義があります。

まとめ

本記事ではヒリヒリ痛いアルコール系のマウスウォッシュに入っているアルコールって実は殺菌には意味ない!ということを学びました。そして、殺菌作用の主成分にはいろいろと各製品で違いがあることを見てきました。二酸化塩素Chlorine Dioxideという弱い酸化剤が食品産業や水道水の除菌、除臭に使われていることも学びました。二酸化塩素すごいっ👍

最後にCloSYSのホームページにあった特許のページが漢だったので、スクリーンショットをおいて、シリーズ第一弾は終わりにしたいと思います。駄文にお付き合いして頂きありがとうございます。

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