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力のつりあい ~木構造のための構造力学~2

 普通、構造力学だと、ここからはじめますね。ただ今回は前の事例を見てもらったので、一応「ふ~ん」って感じに少し理解していただいたと思います。 このトピックでは力のつりあいという、日常生活でごく「当たり前」な事象について解説します。簡単な割に、見落とす可能性がある分野です。しっかり学んでいきましょう。

目次
第1回 計算書を読んでみよう
第2回 力のつりあい(今回)
第3回 モーメントとは?
第4回 反力
第5回 応力
第6回 断面について
第7回 図心・断面一時モーメント
第8回 断面二次モーメント
第9回 断面係数
第10回 許容応力度

力のつりあい

 前の例では、もぐらんと分銅の重さと、それを支える重さが釣り合っているという一番わかりやすい例を見てきました。ではほかの例を見てきましょう。

お相撲

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 まず横の力です。お相撲さんが、ぶつかり合った時、一時的に動きが止まっているように見えますね(上図参照)。これは双方のお相撲さんが押している力が釣り合っているからです。もしどちらかの力が上回ったら、弱いほうに向かって押されていきますね。動かないということは、力がつりあっている!という事です。

綱引き

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 同じように、綱引きの例では引き合っている時に、左右とも動かないシーンがあります。この状態を釣り合っている、といいます。こちらもどちらかの力が強かったら、その方向に引っ張られ勝負あり!になります。ちなみに相撲の例を「圧縮」、綱引きの例を「引張」ということです。

天秤

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 そのほかにも、力のつりあいがあります。上皿天秤を思い出してください。左右の皿に同じ重さの分銅を乗せるとつりあいますね。上の図の例では、もぐらんとわるっきーの重さが同じという意味です。非常にわかりやすいですが、圧縮と引張のように、もぐらんとわるっきーは力を入れていませんね。なのにつりあうということはどういうことでしょうか?

ちからとその表示

 今まで見た力は、頭の中で理解できても実際に目に見えませんね。そこで構造力学では、誰でもわかるように図示するルールを定めています。

 力には3つの要素があります(力の3要素)。「大きさ」「向き(方向・角度)」「作用点」です。気をつけなければならないのは、すべてが同じでないと、「同じ力」とはいいません。大きさだけにとらわれてはいけません。表記は以下の通りです。

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 このように矢印で表記します。上の図の場合、力の向きは左側です。もちろん右側や上側の場合もあります。作用線は力の向きと同じ方向の直線で、力が作用しているラインです。力学では非常に重要になりますが、向きと同じ方向上の線ですのでお忘れなく。力の大きさは→の長さです。しかし長さだけでは分からないので、通常は数字で表記します。矢印の根元は重要です。上の図では力の作用点と書きました。力の作用点は実際に力を入れているポイントです。先端の場合もあるので、ケースバイケースで考えていきましょう。

 力の単位は注意が必要です。重さの単位は皆さんご存じのKg(キログラム)やg(グラム)、t(トン)などです。これも力の単位ではありますが、国際的にはバラバラでイマイチ使い勝手が良くありません。そこで、建築の分野では全世界共通の力の単位であるN(ニュートン)、kN(キロニュートン)を使うようになりました。

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 国際単位系(SI単位) ちなみに国際単位系(SI単位という)で、名前の由来は、あの有名なイギリスの物理学者のニュートンからとられています。もっとも1904年頃に提唱された単位なので、ニュートンがつけた名前ではありません。1ニュートンは1キログラムの質量をもつ物体に1m/s2の加速度を生じさせる力のことです。また重量の単位でもあります。構造力学では重量の単位と割り切って使った方がわかりやすいです。

 地球表面では1キログラムの物体の重量は約9.8ニュートンです。計算上はNを使いますが、常にキログラム単位系との比較を行い、実際の重さを想像出来るようにしておきましょう。

力の基本原則

 力にはいろいろな原則があります。

 たとえば体重計に60キロのAさんと50キロのBさんが載ったら何キロでしょうか?という問題があったら、皆さんは迷わず「110キロ!」と答えると思います。正解です。力は足し合わせができる力なのです。

 逆に引き算することも出来ます。上記の例で、上から誰かがAさんを30キロの力で引っ張ったら、80キロになります。これは下向きの力(体重)が合計110キロ、上向きの力(引っ張っている力)が30キロで、110-30=80キロとなります。このパターンでは、下向きの力をプラスに、上向きの力をマイナスに仮定しています。もちろん逆でもかまいません。どちらかを正(プラス)の数としたら逆向きは負(マイナス)の数になります。

 ただし、力の作用する空間は3次元です。上下方向だけでなく前後左右どの方向にも作用します。もちろん斜め方向もあります。

合力

 合力とは、力を足し算することです。前の章でも二人で体重計に載ったケースを紹介しましたが、あれも合力です。合力の基本は複数の力が同一線上にあれば、単純に足し合わせればいいのです。

 他のケースを考えてみましょう。

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 AとBは同じ二つの力で引っ張っています。Aのほうが開きが広いですね。同じ力で引っ張っていても作用線の交点にかかる力は異なると思いませんか?直感的に考えてもAよりBのほうが力の効率が良さそうだということは分かると思います。構造力学ではそのような直感は大事です。ただし、その直感を数式で証明できるようにしなければなりません。それを後ほど解説します。ここでは開きが狭い方が効率的に引っ張れそうだな!と思ってくれれば十分です。

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 数式はともかく、どのような理論になっているかは上図でわかります。力の合成された合力(上図では赤い矢印)は、平行四辺形を作る要領で求められます。AよりBのほうが長いですね?ちょっと数学が出来れば解法できます。ただし2級建築士の構造力学ではあまり計算しなくてもわかるようなものばかりです。

次回は、モーメントです。力の中で比較的わかりにくい力ですが、構造計算ではたくさん使いますので、ぜひ次回も頑張ってお読みください。

第3回 モーメントとは?

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