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許容応力度 ~木構造のための構造力学~10

目次
第1回 計算書を読んでみよう
第2回 力のつりあい
第3回 モーメントとは?
第4回 反力
第5回 応力
第6回 断面について
第7回 図心・断面一時モーメント
第8回 断面二次モーメント
第9回 断面係数
第10回 許容応力度(今回)

許容応力度

 構造計算の中では非常によく聞く言葉です。材料がこれ以上持たない限界値より小さい値が許容値として定められており、これを許容応力度といいます。材料によって異なります。構造設計では、構造物に発生する応力度が、許容応力度以下であれば安全であると判断します。前の章までで学んだ、応力度を出して、それが許容応力度以下であれば・・・といったほうがわかりやすいでしょう。

 構造で使う材料には、すべて基準の強さが建築基準法等で定められています。許容応力度も、この強さを元にしますが、使用材料の不均一性や、長期使用、施工精度、荷重計算の精度などから、安全率で割って指定します。

許容応力度=基準の強さ(F)÷安全率(n)

 この安全率も法令で定められています。コンクリートの場合の安全率は、圧縮は3,引張・せん断は30です。つまりコンクリートは圧縮に強く、引張、せん断は非常に弱い設定になっています(現実もそうでしょう)。そのため鉄筋を入れて強くしていますね。

許容応力度の単位

許容圧縮応力度:fc (c:compressive)
許容引張応力度:ft (t:tensile)
許容せん断応力度:fs (s:shear)
許容曲げ応力度:fb (b:bending)

 記号は、fです。それぞれの応力度によってcやtなどをつけます。
 単位は、N/mm² などです。

使い方

 各応力度の計算で出たσc、σt、τmax、σbが、上記のfc、ft、fs、fb以下であれば、安全!ということです。つまり構造計算の結果(応力度)と許容応力度を比較し、許容応力度以下であれば安全なのです。

σc(圧縮応力度)≦fc
σt(引張応力度)≦ft
τmax(最大せん断応力度)≦fs
σb(最大曲げ応力度)≦fb

 ここまでくれば簡単ですね。つまり応力度までが構造計算の勝負になります。

ここでは、計算はおいておいて、許容応力度計算、つまり構造計算は、部材の許容応力度を、算出した応力が超えていないか?を確認する作業だと思ってください。部材の強度(許容応力度)は、基本的に断面が大小、部材の強弱で決まります。強い力がかかる部材には、断面を大きくし強い材料を使えば良い、という当たり前のことなのです。その当たり前を数値化して計算するのが許容応力度計算なのです。

第10回まで、できるだけ簡単に書きました。また木造構造計算をする方向けに書いていきました。第1回に一つの構造計算の数式を書きましたが、それを振り返ってみてください。だいぶ理解ができるようになったはずです。ならない部分はあらためて、読み直すか、他のもう少し詳細が書いている構造力学の本を読んでみてください。きっと理解できるはずです。

構造計算ソフトで計算するにしても、基本的な構造力学は不可欠です。マスターできることを願ってこの講座を終わらせていただきたいと思います。

続編は、建築士試験の知識でマスターする木造構造計算です。こちらではも少し上級の実務に役に立つ内容を連載しています。マガジン登録もよろしくお願いします。

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