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断面係数 ~木構造のための構造力学~9

目次
第1回 計算書を読んでみよう
第2回 力のつりあい
第3回 モーメントとは?
第4回 反力
第5回 応力
第6回 断面について
第7回 図心・断面一時モーメント
第8回 断面二次モーメント
第9回 断面係数(今回)
第10回 許容応力度

 いよいよ基本的な力学の大詰めになってきました。断面係数と断面2次モーメントは非常に似ている公式ですが使う場面が異なりますし、性質も異なります。必ず比較しながら間違えないように覚えましょう。

断面係数(記号はZ)

 断面係数とは、部材の曲げ強さで、大きいほど曲げ強さも強くなります。記号はZ、単位は長さの3乗で、ミリの場合「 mm³ 」のように表記します。断面2次モーメントの記号はI、単位は「 mm⁴ 」なので混同しないように。

用途

・部材の曲げ性能を決定するための曲げ応力度を求めるため

 です。断面2次モーメントと異なりシンプルで、わかりやすいです。ただ部材の性能で重要な役割を果たす曲げ性能に関する係数なのでしっかり覚えておきましょう。

公式

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 断面係数も、断面1次モーメント・断面2次モーメントと同様に、X軸、Y軸別に求める必要があります。X軸に関する断面係数は

Zx= bh2²/ 6

 Y軸に関する断面係数は

ZY= hb² / 6

 となります。断面2次モーメントと似ていますね。このX軸とY軸どちらを求めているのか、常に頭にいれておいてください。

 なぜ似ているか?というと、断面係数とは、図心を通る軸についての断面2次モーメントを、図心軸から縁までの距離で割ったものだからです。

bh²/6 を図心軸から縁までの距離(つまり全長の半分 h/2)で割ると、bh² /6 になる。

 です。ただ、実際には覚えてしまった方が簡単です。

断面2次モーメントとの違い

 性質も用途も違うのですが、公式は似ています。しかし計算値の扱いが全く違います。断面2次モーメントは、足し算、引き算ができます。つまり異なった部材を合計する事ができます。しかし断面係数は、原則、足し算引き算ができません!というわけで、複雑な形状の断面の断面係数を求めるためには、断面2次モーメントを求めてから、図心軸から縁までの距離で割ってあげる必要があります。要注意です。

断面係数の特徴

 断面係数は曲げ性能を決定づける係数です。大きければ大きいほど強くなります。断面2次モーメントに比べて単純なので安心?してください。

 余談ですが、mm³ のように長さの3乗の単位には、「容積」「体積」「剛度」「断面1次モーメント」があります。それぞれ意味が違うので混同しないように(建築士試験では問われることが多いです)。

次回はこのシリーズの最終回の許容応力度です。よく聞く名前ですが、実際何のことやら・・・と感じている方が多いはず。概念は簡単です。きちんと覚えて今後の仕事に活かしていきましょう。

第10回 許容応力度

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