祖父の老い
私の実家はお店を営んでいる。
いわゆる個人商店というやつだ。
お店は祖父のそのまた前から続くお店だが、私は今年に入りそのお店を継ぐことになった。
お店は道路に面しており、数台の自動販売機が並べられている。蝉が鳴きだしてきたこともあり、冷たいドリンクの売れ行きが良い。
売切となってしまったドリンクの補充をしようと、私は倉庫から台車にいくつかのドリンクケースを積み、自販機の扉を開けてドリンクを詰めていた。
するとそこへ祖父がやってきた。
「おう、お疲れさま」そう声を掛けてきた「お疲れ」私もそう返した
するとなぜか開いてる自販機にお金を入れはじめる祖父。そしておもむろに自販機のボタンを押した
当然ドリンクが降ってきた。
ドリンクは本来入るべきはずの受け出し口には入らず、コンクリートにごとんと音を立てて落ちて、少しだけ転がった
「エナジードリンクを飲もうと思って、おお、開いてたか」そう言った
凹んだ缶の表面に結露で纏わりついた砂を指先で拭いながら「暑いから、美味しそうだ」
そう言って去っていく祖父の背中を、私はただ見ていた。
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