巷で話題のトコジラミに喰われたリアルレポート
日本にいたら大丈夫。
とも言えなくなってきたのが、最近山手線で見つかったことで騒ぎになったトコジラミだ。
しかしまさか、トコジラミに喰われた人はそうそういなかろう…。
ギャラが良い治験薬のバイトはいつも何となくチェックしているわたしだが、このトコジラミに関しては、報酬ゼロで自らが実験台となって実態を突き止めた。
そのリアルな声(叫び)をどうぞ。
世界中どこにでもいるトコジラミ、そう…あなたの後ろにも…
トコジラミ、別名は南京虫である吸血性の昆虫だ。
いかにも中国にいそうな気がするのは名前による弊害・偏見であり、実際には世界の至る場所に生息している。
こういった特定の地域名を含む名付けは、よいイメージの対象は別として、避けた方がよさそうだ。
仮に「いもくささ」を表す言葉を「埼玉臭」としたなら、川越あたりでデモが起きて大問題になるか、自虐に寛容な埼玉県民たちが黙認して「翔⚪︎で埼玉」のように流行るかどちらかだろう。
話が逸れた。
まず、噛み跡について、人にはよるが、噛まれてすぐは見た目にあらわれないことが多いらしい。
わたしの場合は原因と思われる場所を離れてから1.5〜2日後に赤い発疹が出た。
そのため、最初は発疹があらわれた際にいた場所、(居候させてもらっている身でありながらその恩義を忘れて)上海の友人「サアヤ」の家に疑いの目を向けたのだ。
しかし、時計のネジを巻き戻してみると、どうしたってその憎きトコジラミがいた場所は、浙江省・杭州のとある民宿なのである。
杭州は悪くない
わたしは杭州が好きだ。
これはトコジラミを話題にしてイメージダウンを助長したことに対するフォローではない。
中国には「上有天堂、下有蘇杭」という諺があって、意味としては「上に天国あり、下には蘇州・杭州がある」という、蘇州・杭州がいかに美しいかを讃美した言葉である。
その言葉の通り、二つの都市は中国を代表する、古都の趣を持った美しい水郷の街だ。
実際、蘇州には数年住んでいたこともあり、その魅力を十分理解しているのだが、杭州は杭州で日本で同僚だった中国人の友人がいることもあって、よく訪れてはその風光明媚な景色を満喫している。
トコジラミ地獄への入り口
2022年6月某日、長い隔離生活を終えたわたしは自分への労いを兼ねて杭州を訪れ、ひとけが少ない崖の上の小さな民宿に泊まった。
この時点で、サスペンスドラマなら死亡フラグが出ていたはずだ。
いや、わたしの身にも、本人にだけ見えないはっきりとしたトコジラミフラグが出ていたのかもしれない。
気づかなかった自分が甘かった。
部屋は手狭だが、空に面した壁が一面ガラス張りになっていて、わたしはその部屋の大胆なつくりがすぐに気に入った。
ベッドに寝そべると窓越しに近隣の古い建物の瓦屋根が見え、その先には霞がたなびいた初夏の白い空が広がっている。
戸の鍵を閉めていてもどこからか入ってくる羽蟻など、気密性の低さは少し気になったが、大パノラマの借景窓を有したこの部屋に、わたしはひどく感動したのである。
民宿に食事の用意はなく、また、近場にひとりで入れるようなレストランもなかったため、中国では老いも若きも皆こぞって利用するフードデリバリーサービスを使ってパンとチーズとワインを頼んだ。
霞がかったままにぼんやりと暮れゆくグラデーション色の空、安いがうまいワイン、もうこのまま、下の天国(杭州)といわずに上の天国に行ったって構いやしない…と思いながら、わたしは眠りについた。
早朝、トイレに目覚めるとわたしはベッドの上に小さな茶色い点を見つけた。
酔って寝ている間に、はなく⚪︎を掘ったのだろうか。
いや、まさか、淑女のわたしに限ってそんなことをするわけがない。
その点は、トイレから戻ると消えていた。
今となれば、それが憎きあいつに違いないのだが、その時のわたしは知る由もなかったのである…。
民宿を離れて2日後、私の膝小僧から下、くるぶしまでが、痒みと共に一面の赤い斑点で覆われた。
そう、徳の低い者が向かった先は、天国ではなくトコジラミ地獄だったのだ。
(なお、わたしはドット恐怖症の傾向があるため、この時の貴重な症状写真を残しておかなかったことを、トコジラミ研究者のみなさまにはどうかお許しいただきたい)
半年続いた長ズボン生活
「もう夏なのに、そもそも誰も見たがらないけど、とにかくこんな脚、絶対に晒せない…」
くるぶしまで隠れるズボンを一枚しか所持していなかったわたしは、ミディ丈のスカートで慌てて上海・南京西路のユニクロに駆け込んだ。
すると、皆がこちらを怪訝そうな顔で見るのである。
決して魯迅の「狂人日記」のような妄想などではなく、はっきりとした事実として、だ。
恐らく、大都会上海の街中で、トコジラミに脚を喰いつくされた人間がいるなどと想像する者はおらず、もっとヤバい病気に感染していると思われたのかもしれない。
実際、当時世界では予想不可な変異を繰り返すコロナだって流行していたのだ。
わたしはズボンを1枚買うと、ひったくるように袋を受け取ってトイレに入り、それに履き替えた。
……
その後、わたしは実に半年もの間、毎日長ズボン生活を送ることになった。
トコジラミ経験者が語るトコジラミの真実
「夜も眠れないほどのかゆみ」と書いてあるのをよく見かけるが、わたしの場合、確かに5日間ほどは猛烈に痒かったが、ムヒなどで誤魔化せば眠れないということはなかった。
「発疹は1〜2週間経っても消えないことも多く…」
これもわたしの場合ではあるが、2週間どころではなく、3か月はまず完全なるキズモノ状態で、ベビ子(娘)から「気持ち悪いから一時であっても肌を晒すな」と言われ続け、赤みが完全にひいたのは6か月後だったと思う。
赤みを消す為にハイドロキノンやトレチノインを試したが、効いたのかは不明だ。
わたしの肌は比較的白い方ではあるが、特に色白の方は気をつけられた方がよかろう。
「噛まれたら気付くのか」
酒を飲んでいたため、記憶はない。這って移動し、蚊のような羽音も出さないため、恐らくは気づかないものと思われる。
ただ、5mmくらいあって意外とデカいので目視できる。
トコジラミを避けるには?
さまざまな場所を旅しているが、トコジラミに喰われたのはたぶんこの一回である。
この民宿は、そこまで古くないのだが、ファブリックの長いソファがあり年季が入って見えたのを覚えている。
また、ホテルと違って個人が営む民宿なので、掃除など、やや手入れが行き届いていない感はあった。
基本的なことではあるが、国を問わず、掃除や害虫対策がしっかり行われていることが大前提だと思う。
これからトコジラミが多い都市へ果敢にも旅立たれる皆さまへ
痒さや、掻きむしることによる二次感染も大きな問題だが、なんと言っても見た目的に自分で風呂に入るたびに不快な気持ちになるので、トコジラミには絶対に喰われないよう、十分にご注意いただきたい。
特に皮膚が柔らかい傾向にある女性の皆さまは、失恋した自分を鼓舞するためだとか、自分探しとかで安易にバックパッカーになったとしても、トコジラミがいそうな安宿は避けるべきである。
もちろん値段の問題ではないが、室内で虫を見つけたり、掃除が行き届いてないなど衛生面に疑問を持ったら十分な警戒を。
空港で野宿をするおばさんが声を大にして言おう。
「不衛生な安宿はやめよう! さもないと半年間、自分の脚をみてサブイボが立つことになるから!」
また、ネットで既出の情報ではあるが、わたしが最近は実行している、もしかすると有効かもしれないトコジラミ対策を以下に紹介しておこうと思う。
わたしのネバーモア トコジラミ対策
1️⃣虫除けスプレーを体中にする→ディートという成分を含んだトコジラミ対応商品が良さそうだ
2️⃣防ダニスプレーを寝具や部屋にまく→気休めかもしれないが…念の為
3️⃣衣類用防虫剤をお守りにする→パラジクロロベンゼンの匂いが嫌いらしい
4️⃣シルクのトラベルシーツを敷いて寝る→ヤツは意外と不甲斐なくて、つるつるしたところを歩けないらしい
5️⃣寝る時は灯りをつけたまま寝る→犯罪行為はもっぱら暗闇で行われる…明るい場所が苦手らしい
それでは皆さま安全で良い旅を✈️
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?