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【最終回】しろくまさんと僕(7)

最終話「しろくまさんと南極」

「犯人はポーラーストリートを北へ逃走、現在追跡中!応援をたのむ!」

強盗団の一人が乗った車を僕と相棒が見つけたのだ。僕は無線連絡を手短にすませる。応援は車のGPSを追ってくれるはずだ。

「落ち着いて、マニュアルどおりにいこう」

僕は運転席の相棒に声をかける。

少し前、爆弾を持った男たちに街の銀行が襲われた。

通報で駆けつけた警官たちの手により犯人は逮捕され、爆弾らしきものは目覚まし時計とラップの芯だとすぐにわかった。けれど強盗団の一人が車を奪って逃走。それを僕らが追跡しているというわけだ。

犯人の車は街を通り抜けて山の奥へ向かい、いつしか舗装された道もあやしくなってきた。車を何度も見失いかけたが、このあたりに抜け道があるとは思えなかった。

「ほらあそこ!犯人の車です」

山奥にある廃工場の前で乗り捨てられた車を見つけた。どうやら犯人を追い詰めたようだった。

無線連絡もいれたし、応援はまもなく来る。このあと、しろくまさんならどうするか。考えるまでもなかった。犯人を逃さないようにしなければ。僕らは中に入ることにした。

※※

キュンッ

それた弾丸が工場の鉄骨に跳ね返ってどこかに飛んでいった。僕と相棒はすばやく左右に分かれてコンテナの影に身をかくした。まさか犯人が銃を持っているとは思っていなかった。

相棒が犯人との距離をつめようと、コンテナの影から出ようとしたとき犯人の姿が見えた。身体は勝手に動いていた。飛べない黒い羽をパタパタ泳がせながら、僕は相棒のほうに向かって全力でヨチヨチ走っていた。 

銃声が響く。

僕は相棒を押し倒した。胸のあたりに熱いものがひろがってくる。

「ぺ、ぺんぎんさん?ぺんぎんさんっ!?」

相棒の声を聞きながら僕は意識を失った。

※※※

※※※※

気がつくと僕は、背のひくい鉄柵で覆われた広い芝生の美しい墓地にいた。

僕のいる木立の陰から少し離れたところに、葬儀に参列している相棒の姿がみえた。彼に手をふると、キョロキョロして自分を指差してからこちらにやってきた。

近づくにつれて、相棒の口がだんだん大きく開いていく。

「ぺ、ぺんぎんさんっ!?」

眼の前に来たときにはパクパクしながら僕を指差して言った。

「おどろかせてすまない。どうやら化けて出ちゃったみたいなんだ」

そのとき僕は、本当にすまないと思っていたんだ。

おわり


【新連載開始?!】

最後までお付き合いいただきありがとうございます。「しろくまさんと僕」はこれにて幕を閉じます。楽屋トークはツイキャスで近日配信する予定です。おたのしみに!

…してください…、お願いします。


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