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解の公式でも解けない…Ep11

受験生活を経て
合格した高校の
入学式前の
補習

緊張した10日間
最終日の数学
しかも終業の3分前
竹で作った指示棒を持った…
ギラリと厳しいまなざしの先生と
なぜか
目が合った

この10日間
私は緊張の連続だった

優しかった中学校の先生
たぶん…
…いい子だった私に
どんな先生も
優しかった
誰も厳しい目を
向ける人など…いなかった

ある課題の作文を書けば…
合唱コンクールの歌を歌えば…
ポスターのデザイン図を考えれば…
50メートル走を走れば…
生徒会の会議を進行すれば…

どの先生も
同じように
私を見て
ウンウン…とうなずいていた

私は
どんな時も
認められている
でも
そんな
…気がしていただけ?

そして
中学校を卒業し
迎えた
この10日間
高校には
そんな先生は
一人もいなかった

高校の先生は
とても
恐かった

「あなたは
何のために
ここに来たのですか?」と
拒絶されたかのようだ

そうなると
もう私はダメだ

あと数分で
この緊張も溶ける
高校が
なんだか
不安な場所に思えてきたけれど
とにかく
この時間だけでも
終えれば
楽しいことも待っているはず
…そう思った時

…目が合った
「はい、あなた、立って」
突然指さされた私は
膝を
ガクッとさせながら
席からとび立った
先生はこう言った
「解の公式」を言ってみなさい」


「はっ??
「解の公式」なんて誰でも言える」
でも
その時の私は…
言えなかった
そんな…
まさかの自分自身に
ショックを受ける

追い打ちをかけるように
先生はこういう
「ふーん この高校に入学した生徒で
「解の公式」を言えないのは
あなただけですよ」

この言葉は
高校の3年間
ずっと私を苦しめる

勉強してきた感覚が一変した
そして
すべての生活をも脅かした

漢字の構成がわからない
英語のスペルも綴れない
楽器のチューニングも出来ない
歩く時、走る時に
手と足の出し方が
わからない
そして
好きだった数学が…解けない

「解の公式」が言えない人は
何をも解くことが出来ないんだと
思いこむ

すべてが
「解の公式」で解けるモノでもないのに
「解の公式」は
私のすべてを支配していた

私が関わるすべてのことは
「解の公式」でも解けなった

でも
そうではないことを知るのは
ずっとずっと
先のことになる






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