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最初で最後の手紙…Ep1(A様)

心の奥で
いったい幾度
あなたの名前を呼んだだろう

今になって
今更
気づく
あー本当にあなたが好きだった

あの放課後の昇降口の柱の陰で
あなたを待った
あなたとぶつかりそうになるシーンは
「偶然」でなければならない

「偶然」という「時」の魔法に
かかってこそ
「出逢い」は彩られ
そして
それから輝きを放つのです

あなたは
そんな私の作為を
知っていましたか?

「偶然」ではなかったことに
気づいていましたか?

わかって許してくれましたか?

二人の時は始まりました
分かち合う時間は恐ろしいほどに
あっという間に過ぎました
でも私は
少しずつ
あれもこれもと
欲張りました

それを誰が見ていたというのでしょう?

時はいつの間にか
満たされるものではなく
通り過ぎていくものになりました

あなたは
振り向かなくて
よかったのです
私が呼んでも
通り過ぎれば
よかったのに…

今どうしていますか?
あの時は言えませんでした

出逢ってくれて
「ありがとう」


あなたはどこで
吐息を感じていますか
私は
ここにこうして
ゆく時を
掌にすくっています