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サルスベリ(百日紅)を見ると想い出す…強い生命力に上を向いて頑張った夏

毎日、うだるような暑さ。
雑草たちは相変わらず憎たらしいくらい元気。
とうとう、先週末に除草剤をぶっかけられて茶色になってたはずなのに、
その横からコリもせずに生えてくるあのヤツら。

緑がうっそうとしてくるこの季節、
パッと華やいだ色で咲き、華やいでくれるのがサルスベリ。
"今年もこの季節が来たか……"

「あんたはコレを病院に持ってきたんやけんねぇ」
と笑われた。

実家の庭には、祖父が持ってきてくれたサルスベリの木があった。
ツルツルした白っぽい枝の先に、
ブドウの実を逆さまにしたような房状に
ピンク色の花がびっしりと咲いていた。

暑くて、もう咲く花もない庭の中で、
ギラギラの太陽の下、ぐったり気味のまわりの緑たちに囲まれ
ふさふさと咲く花びらは、それはもう美しかった。

「みゆきちゃん、ちょっとコレ、触ってみて」
と触れてみた母の胸に、しこりがあった。
私がまだ短大の夏だった。

その夏は、母にとって、
そして家族みんなにとって、乗り越えるに厳しい夏だった。

私は、家のことなど何にもできなかった。
お嬢様でもないのに、
お嬢様のように母に何でもしてもらっていた。
それは父も、妹も同じ事。
とにかく母が、何でもしてくれていた。


手術の日のことは、あまり覚えてない。
病室に戻ってきた母の顔が真っ青で、あまりにもビックリして、
一人部屋を出た。

毎日、病院へ通った。
毎日、みんなのご飯の用意をした。
ご飯はどれくらいの予算で作るものかもわからなくて、
父はとにかくお金を渡してくれた。
私はとにかくご飯を作り続けた。

そんなズブズブのどんぶり勘定の毎日。
母が食べられるようになると、
値段もよく見ず、大好きなマスカットもよく持って行ったものだった。

大事なお金を預かっているというのに、
病院のランドリーコーナーに財布を置き忘れたことがあった。
スグ気が付いて取りに行ったのに、もう、なかった。

どこで気持ちの折り合いをつけたか覚えていないけれど、
《健康》がどれほどありがたいものかを感じる日々だったので、
元気な自分がお財布を失ったことなど、
いつまでもグチグチする気には、なれなかったのだろう。

記憶は遙か遠いものになったけれど、
サルスベリの花を見ると、
庭に咲いたサルスベリを母にも見せたい…と、枝を切って、
病室に持っていったことを思い出す。

枝がツルツル、サルも落ちる…
と言われるところから、
運気が落ちる…と、あまり縁起がいいとはされない花らしい。
こんなものを病室に持ってきた娘を恥ずかしく思ったでしょうに、
母は何も言わなかった(苦笑)


母はそれからもいろいろ大病しましたが、
必ず復活する‼という強い人でした。


サルスベリを百日紅と、書くように、
夏に「百日」もの間、花を咲かせるような強い木。
その生命力は、生きるための良いエネルギーを降り注いでくれる
と風水で解釈されているものを、読んだことがあります。

庭にあったあのサルスベリが、
そのエネルギーを、母にも分け与えてくれたのでしょう。

今年の夏の厳しさは例年以上ですが、
あのかわいい花を愛でて、何とか乗り越えましょう。 


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