【2000字小説】【童話】『ねこのおちゃかい』
ミカはぱっちりとめをあけてベッドのうえにいました。ここはうすぐらいへやのなか。でも、カーテンのむこうでおひさまがひかっているのがわかります。
おひるねよってママにいわれてミカはねたふりをしたけれど、ほんとうはちっともねむくないのです。
「あ、マル。マル、どこにいくの」
ドアのしたにあるねこようとびらから、しろねこのマルがやってきました。
「おちゃかいにいくのよ。ミカちゃんはねてなさい」
「ミカねむくないもん、いっしょにつれてって」
「だめよ。だって、このとびらとおるんだから。ミカちゃんはできないでしょ」
マルはまどのしたにあるねこようとびらをしっぽでさしました。ほんとうだ。ミカがとびらをくぐろうとすると、おむつがはまってとおれません。ミカがもどると、マルはしっぽをゆらゆらさせ、ねこようとびらからそとへいってしまいました。
「マルまって! ミカできるもん!」
ミカはいそいでおむつからパンツにはきかえました。ねこようとびらをくぐると、こんどはとおりぬけることができました。
「ほーら、ミカできたよ!」
マルはとくいげなミカをめをまるくしてみあげていましたが、すぐにピョンっとたかいへいのうえにのぼってしまいました。
「でもミカちゃんはこんなふうに、へいをのぼっておりるのはできないでしょ」
「ミカできるもん!」
ミカがキョロキョロとあたりをみわたすと、おおきなうえきばちがめにとまりました。そうだ、このあいだ、ママがうえきばちでへいのあなをかくしてた!
おもいうえきばちをどかしてあなからでてきたミカをみて、マルはくちをあんぐりあけました。
「まあ、ミカちゃんたら。でもこのくらいしげみのなかへいくのは、できないでしょ」
マルはぼうぼうとくさがはえたさきへいってしまいました。すぐにマルのしっぽはしげみにかくれてみえなくなります。
「マル! まってよう」
「ミカちゃんはおうちにおかえんなさい」
マルのこえだけがきこえます。
ミカのせよりもたかいしげみは、おおきなくさのかべにみえました。
このなかにはいったら、くさがチクチクしていたそうだし、くらくてこわそう。
ミカはどきどきしてしげみをみていると、しげみのおくで、たのしそうなこえがします。
ミカもいきたいのに!
「そうだ、いいことかんがえた!」
ミカはおおいそぎでへいのあなをくぐり、いえにもどると、おおきなバケツをてにしました。バケツはへいのあなをとおらなかったので、えいやっとなげて、へいのむこうがわにおとしました。
おとしたバケツをてにしたミカはもういちど、しげみのまえにたちました。
ミカできるもん!
こころのなかでつぶやくと、ミカはあたまからすっぽりとバケツをかぶり、しゃがみました。そのまましげみのなかにとつにゅうです。
ガサガサとバケツのそとをくさがこすれるおとがします。みえるのはミカのはだしのあしと、じめんだけ。ぐいぐいとくさのなかをおしいっていくと、ふいにおとがやみました。あしもとからすずしいかぜがふいてきます。
ミカはそっとバケツをぬぎました。するとそこはくちをあけて、まるいめをしたマルがいました。ほかにもくろねこと、みけねこがいて、さんびきはおちゃかいをしていました。しろいクロスがひいてあるテーブルのうえには、ミルクやクッキーがならべてあります。
「ほらね、ミカできたもん」
ミカがわらうと、まずくろねこがわっはっはとわらいました。つぎにみけねこがふふふ、とわらい、さいごにマルがためいきをつきました。
「ミカちゃんのかちだな。ミルクとクッキーをめしあがれ」
くろねこがすすめてくれたいすにすわり、ミカはミルクとクッキーをいただきました。そのおいしかったこと。ミカがいえにもどり、まっくろになったあしをママにしかられても、おちゃかいのことををおもいだせばへっちゃらでした。それくらい、すてきなねこのおちゃかいでしたからね。
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