見出し画像

夢の中ですら自由じゃない

2年前に別れた元彼の夢を見た。

私は彼の家に行くときに利用していた電車に乗ろうとしていた。

ホームに向かう途中、車掌とすれ違った。それが彼だった。

私は「ああ、私と会うためにこの電車の車掌になったんだな」と思った。私に伸ばしてきた彼の手を、咄嗟に振り払って走って逃げた。

逃げても逃げても、追いかけてくる。逃げてるときにすれ違った人が、彼になっていたりする。

私に関わらないで、と叫んで目を覚ました。

辛い思い出だ。最近ようやく人に話すことができるようになった。

人には笑い話として話すようにしている。全部を話したら引かれると思うから。

2年半付き合った。最後の1年半は付き合って別れてを繰り返した。

幸せだったのは最初の1か月だけだった。彼は私の過去を責めるようになり、私は謝り続けた。友達と遊ぶと言うと、男か、と言われるようになった。彼に出会う前の過去を全て話せと言われて、話すまで家に帰してくれなかった。

懺悔の日々だった。私が彼の思い通りにすれば、彼は優しいけれど、私が言うことを聞かないとイライラすることが増えていった。

別れる前日の電話。話していると、彼の機嫌が悪くなった。昼間は仲良く過ごしていたのに。私は「死にたい」と口にしていた。その言葉を口にしたのは生まれてから初めてだった。

彼は叫んだ。電話越しでもわかる大きな声だった。近所の人が通報したのか、警察が来た。私も電話越しに警察と話をした。

もう、だめだった。彼に会うのが怖い。でも、別れるのも怖い。それでも、今別れないと私の人生が取り返しのつかないものになると、強く思った。

直接会うのが怖くて、別れをラインで伝えた。返事は「待ってるからな」だった。

彼は、私がすぐに別れ話を撤回すると思っていただろう。これまでも、彼の「別れたくない」と言いながら縋り付くのを振り払うことができず、何度もやり直していたからだ。

その後、私が全く連絡しないことにしびれを切らして、何度も連続で電話が鳴った。「お願いだから話がしたい」とラインが届いた。私はそれに応えなかった。

今でも、道行く人の背格好が彼に似ていると、身構えたりする。風の噂で、10歳以上年上の女性と付き合っていると聞いた。彼が幸せなら大丈夫だと思うのに、時たま彼の夢を見る。

その夢は、いつも悲しい。辛い。怖い。会いたくなくて、「来ないで」と叫ぶ。伸ばしてくる手を振り払う。

今は幸せなはずなのに。自分を取り戻して、自分の好きな人と会って、何も言われず安心しているはずなのに。忘れた頃に彼の夢を見る。

彼と付き合った2年半、彼と別れた2年間。まだ、忘れてはならないのだろうか。いつまで、彼は私に懺悔を求めるのだろうか。

今日の夢には彼が出てこないことを願って。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?