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土曜日課の給食

冬耕起とは厳しい冬が来る前に土を耕す作業である。
毎年12月初旬、土が凍っていないこの時期は冬耕起を行う農家で田畑は大変賑わっていた。
私が通っていた岩村田北保育は周囲を畑に囲まれており、この日は朝から多くの農家が野良仕事をしていた。
風もなく日差しも穏やかな午前でしたので、絶好の野良仕事日和でもある。
この日は土曜日であった為、半日保育であり週末のワクワク感が朝から絶えなかった。
登園して朝のルーティーンを終えると、クラスのみんなと一緒に先生の指示のもと画用紙を使った工作をする。
先生たちの工夫を凝らした楽しい工作の時間は皆夢中になった。
それに土曜日は平日より30分早い昼食となる為、あっという間に午前の保育時間は終わった。
調理時間も30分短い為、土曜日は軽食っぽいメニューである傾向だ。
この日はコッペパンとナポリタンとサラダであった。
私の席は園庭に近い窓際だったため、お外の景色を眺めながら給食を食べる。
やわらかな黄色い日差しが、年の暮れを予感させる。
近所の畑から聞こえてくる耕運機の柔らかい単気筒エンジン音が、今日の天気と相まって心地よく聞こえる。
先生がある友達にコッペパンにフォークで切れ込みを入れ、ナポリタンを挟んでナポリタンサンドを作ってあげたようだ。
これを見て他の園児たちも自分自身でナポリタンサンドに挑戦してみるが、なかなか難しく上手くできない。
大人であれば簡単なことであっても、4歳の園児にはナポリタンサンドを作ることは至難の業であった。
私も挑戦したが、フォークでコッペパンに真っすぐ切れ込みを入れるところが難しく、ナポリタンの量が少ししか入れられなかった。
他の園児たちもナポリタンサンドをそれぞれに作ったが、やはりきれいにはできていなかった。
やがて窓の外の園庭には、一台のタクシーが乗り入れてくる。
保育園バスの運転手さんである。
昼食を終えると、お帰りの挨拶をして玄関先に待機している保育園バスに乗り込む。
保育園の正門を左折し、住吉町の農協選果場の前を右折する。
長土呂の信号を右折し、その先の墓地前が私が降りる停車場である。
母親がいつものように迎えに来ていた。
家に到着すると父親もお昼を食べ終えてテレビを観ていた。
まだナポリタンの美味しそうな匂いが手の甲から漂っている。

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