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【本】うつくしい人

夏の暑さで一日に読める言葉の量が激減してしまった。その中でズズズと引き込まれるように西加奈子さんの本を読み終えた。もう一度、じっくり読み返したい一冊。

「他人の目を気にして、誰かに羨まれる自分でなくては」とがんじがらめになる主人公。息が詰まって読みすすめる気持ちが何度も挫けそうになった。それはきっと、自分を重ねたから。この数ヶ月でだいぶ緩んだけれど、自分で自分に多くの枷を課していた気がする。

他人や社会の尺度に見合う自分でなければ。仕事のできる大人で居なければ。きょうだいで唯一四大を卒業して、教員免許を取得したんだから教員にならなければ。相手に嫌な気持ちをさせないように心を配らなければ。常に笑顔で居なければ。辛くても人に頼らず、自分の課題は自力で乗り切らなければ…

その為に、自分は我慢しなければならない。そういつの間にか自分をぐるぐると縛って、ついには呼吸さえままならなくなっていた。

主人公が少しずつ錘を外していく姿が、今の自分に重なった。自分がそのままで在ること。それを認めてあげることの難しさと尊さを感じつつ、もがきながら日常を生きていきたいと思う。自分の弱さを認められるから、他人の弱さにも寛容になれるはず。

昨年12月の自分より、今の自分は1センチくらい「うつくしい人」に近づいた。そんな気がする。