シェア
白鉛筆
2023年10月27日 06:28
珈琲と泥水を大差ないとする嗜好は英国人のそれであるらしく、それは紅茶を愛す彼の国における矜持の表れでもあるらしい。とは言え『泥水』とは手厳しい。その歴史とお国柄から窺える誇り高さ、その一端を垣間見る思いだ。よく言えば、孤高。悪く言えば、排他的。この全国に名を馳せる有名進学校で、かつて起こった壮絶ないじめ。その末路たる凄惨な事件もまた、それら強固なプライドから生み出された、排他精神がひとつ
2023年10月20日 06:18
りんご箱というのだろうか。板を貼り合わせただけ、今にも朽ち果てそうな古ぼけた木箱に、君は座って待っている。「ここで集合と約束したんです」丘の上からの眺望は広い。かつて災害がつけた傷痕を、見るものが見れば感じさせる程にまで和らげ、復興した街並み。目を細め、それを眺めながら、君は言う。「引越してきてすぐ、家族三人で近所を散策しよう、と足を伸ばして。娘がこの丘に登りたい、と言って聞かないもの
2023年10月15日 06:42
秋桜って、残酷な名前よね。開いた窓。少し冷たくなった風に吹かれながら、しかしその長い髪を一本たりとも乱すことなく、君は言った。「残酷?」正面に立つ僕は問い返す。「秋に咲く桜。思いついた者の感性を称えたいほどに、風流で趣のある名じゃないか」安直。赤黒く染まった左手首をそのままに、君。「だって、桜が無ければ、この名前は成立しないでしょう。桜は美しく素晴らしい。その前提があって初めて、こ