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SHINONOME

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連作短編のSHINONOMEシリーズをまとめています。
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2022年12月の記事一覧

【短編】HITOKAGE ⑥

【短編】HITOKAGE ⑥

「お久しぶりです、影山さん」

待ち合わせのテラス席に現れた瀧本は、前回のリクルートスーツ姿から一転して、白いシャツの上にモスグリーンのニット、黒のタイトパンツという学生然とした出立ちだった。

「お久しぶり。どうぞ」

席を勧める。円形のテーブルを挟んで向こう側、椅子を引いて瀧本は腰掛けた。

「ご足労いただき、ありがとうございます」
「いや。私もT大は初めてだったからね。採用の担当として一度見

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【短編】HITOKAGE ⑤

【短編】HITOKAGE ⑤

「飲みに行きましょう」と予約した店は、会社から歩いて二十分近くを要する個室居酒屋だった。よく利用される社屋近辺の店ではなく、しかも個室。加えて繁忙真っ只中での誘いともあり、南原部長も比嘉もどこか訝しげな様子であった。

「この三人で飲むだなんて、初めてのことじゃないか」
上着を脱ぎながら、部長が言う。
「しかも影山さんから声がかかるなんて、めずらしいですよね」
その上着を受け取り、ハンガーに掛けな

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【短編】HITOKAGE ④

【短編】HITOKAGE ④

突然ながら赤裸々な告白をさせていただくと、この能力を持つことで、殊更に困るタイミングがある。

女性を抱くときだ。

先述のとおり、私の持つ"異能"は単に「指の力が強い」というもの。それ以上でも以下でもない。
指。銃やナイフとは違い、この身と不可分であるところに問題がある。角砂糖を摘むのも、鉄棒をへし折るのも、意識的に力を加減しなくてはならない。
当然ながら、不本意に人や物を傷つけ、壊してしまうこ

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【短編】HITOKAGE ③

【短編】HITOKAGE ③

『比嘉繭子さんのストーカーは、そちらにいらっしゃる南原部長です』

瀧本さらさからその連絡が来たのは、一度彼女と会ったあの日から、およそニ週間が経過した頃だった。

あれからと言うもの、予想通り業務は輻輳し、終電を逃しタクシーで帰る日もあるほどだった。瀧本の存在など記憶から抜け落ちるほどの忙しさ。「影山さん、お電話です」。そう呼ばれ、受話器を耳に当ててようやく、そう言えばT大の学生と話をしたな、と

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【短編】HITOKAGE ②

【短編】HITOKAGE ②

一人の学生相手に会議室ひとつ貸し切っての対応は異例だが、瀧本さらさにはそのように手配した。手頃な部屋が空いてなかったこと、説明用のVTRを試聴する設備を要すること、などそれらしい理由を書き連ねて申請したが、彼女が属する大学のネームバリューに寄るところが大きいのは、暗黙の了解であった。

瀧本一人のために、壁際のスクリーンを下ろし、採用説明用のDVDを流す。ロの字型にセットされた机の一角から、瀧本は

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【短編】HITOKAGE ①

【短編】HITOKAGE ①

「実は、ストーカー被害に遭っているんです」

比嘉繭子がそう口にしたとき、私は個室ブースの戸締りをあらためて確認した。システムで管理されたドアは問題なく施錠されており、パスを持つ限られた者しか入室できない。

「ストーカー?」
訊ね返すと、比嘉は呟くように続けた。

「先月の合同説明会に登壇した後、しばらくしてアパートの郵便受けに封筒が届いていたんです」
「何が入っていたんですか」
「写真です。ス

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