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意匠と構造のストーリーを理解する その1

全4章

勉強会の趣旨

白矩/SHIRAKU Inc.では主な業務として、設計支援生産設計支援を行なってます。その中のよくある出来事で、意匠と構造の不整合があります。この原因については、意匠の変更と構造の変更とのタイムラグが設計期間中に大きくなるからです。そのことに関しては、意匠と構造のやり取りで紹介しました。白矩/SHIRAKU Inc.が呼ばれるようなプロジェクトの大半は、意匠側が様々な検討をしたとしても、すべての不整合を修正しきれず、最終的には構造を正として意匠を調整しなおすことがほとんどです。 このような状況は発注者(建築主)や設計者、施工者などのステークホルダーにとっても様々なトラブルの原因となりえます。これをどうしたら軽減できるのだろうか?と常々頭を悩ませていたのですが、まずは構造設計者がどのような業務をしているかを知ろうということになりました。これは意外なことと思われるかもしれませんが、現代では建築に関わる業種がそれぞれに高い専門性を持ち、分業化しているため、意匠、構造、設備ではお互いにどのような業務を行っているか知らないということが少なくありません。
そこで今回は、組織設計事務所で構造設計者として勤務した経験があり、現在はNature Architects, Inc.構造とコンピュテーショナルを使ったデザイン支援を行っている夏目さんに、構造設計者がどのような業務をしているのかわかるようなワークショップを社内で勉強会としてやりたいと相談しました。 初回のミーティングで 「意匠にストーリーがあるように構造にもストーリーがある。それらのストーリーを事前にすり合わせて進むことが大事」とのヒントをいただき、参考として建築画法344号を紹介いただきました。ここで言うストーリーは、意匠がファサードをオープンにしたい等の思いがあったとき、構造としてはそれに合わせ柱を細くし、後ろで構造を確保しましょうとなる。これらを繰り返し、大まかな意匠と構造の方向性をお互いに共有することを指します。
設計初期段階で意匠と構造のストーリーを共有し、この部分は意匠を優先し、この部分は構造を優先するなどを決め、意匠と構造のストーリが融和した大きなストーリーを作ることで、結果的にその後の工程がスムーズになります。

我々が関わってきたプロジェクトで普段感じている意匠と構造の不整合の問題が、意匠のストーリーと構造のストーリーをあらかじめ決めたうえで設計検討が行われていないために、最後のほうになって、これまでのストーリーから逸脱してしまい結果取集がつかなくなるということがわかってきました。しかし、このままでは具体的にどうすれば意匠と構造の融和したストーリーが作れるのかわからないため、「仮想でSHIRAKU Incが設計を行い夏目さんは構造設計者として対話してもらうオンラインワークショップをすることにしました。」このワークショップを行うことで、ストーリーの構築と共有がどのようになされていくのかや、普段見えない構造設計者の業務を知ることができました。ワークショップとしては、意匠設計経験があるスタッフがいるため、リアリティのあるものになったと思います。
その後、たまたまではありますが、株式会社久米設計様新人研修2022にカリキュラムを少し変更を加え採用させていただきました。
この場を借りて久米設計様に感謝申し上げます。

こんな人におすすめ

建築がどうやって設計されているか知りたい人
実務的に意匠と構造がどんなやり取りをするか知りたい人

※この記事は有料記事として4本立てとしています。

オンラインワークショップ

せっかくなので以下のようなポジションで取り組みました。
PM:押山 設計者:高橋、宮崎 構造設計者:夏目
このワークショップでは、建築の意匠計画のストーリーに沿った構造計画の大枠のストーリーを掴めるようになることが大切だと思います。
・まず構造は何から検討し始めるのか
・着目点や問題点はどこなのか
・意匠側で考えた計画についてどのように考えているのか

意匠と構造でお互いに理解を深めることが、計画のクオリティや、設計のスピード・精度を高めるうえで大切になると考えています。
意匠と構造のやりとりや構造側の着目点などを見ていただけるといいと思います。

設計内容

設計対象は体育館とし、一級建築士試験を模したかたちで、プランニングし、それに合わせた構造を考えていきます。構造検討に幅を持たせるために、同じ仕様・諸室条件にて2案考えて進めていきました。

建物の仕様_諸室条件

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