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フラッシュバックに飲み込まれる

私は今、とても幸せで、
恵まれた人生を歩んでいるとすら思っていて、
道端に生えている草にも感謝の気持ちを表したい気持ちでいっぱいの日々を過ごしている。

くだんの優しい彼と新しい家族となったのだ。

でも、気付いたのだ。
それは、過去の辛い思い出、忘れたい思い出に必死に蓋をしたその上に築かれている、ということを。

世間は年末のイベントごとで大忙しだ。
もともと体質的にお酒が飲めない私には、
全く縁がないことも多いし、
第一、プライベートに時間を作ってまで会うような人間がいない私にはただ淡々と過ぎて行くだけにすぎない。
仕事をして、習い事に出かけ、
母にお尻を叩かれながら掃除をしたり片付けをしたりする。

だが、優しい彼のおうちはそうではないらしい。
しょっちゅう、テイクアウトでいろいろ買って来たり、出かけた先で購入したお酒を家族で楽しんだり、何かと忙しいようだ。
なかでも,彼にはお姉さまがいるのだが、
シングルであるがゆえか、家族の面倒見がいい。
弟である,優しい彼に対してもそうで、
良過ぎてなんだか、過保護なんじゃないの、とも思ってしまう。
今週の金曜日、彼のおうちは前倒しでクリスマス会を催したようだ。
おそらく,推測でしかないのだけれど、
優しい彼は私が金曜日は習い事に行くのを知っている。
そして、最近は仕事が忙しくてなかなか行けないことも知っている。
だから、私の予定を優先してくれたのだと思いたい。
もしくは、悪意にとるとするならば、まるっきり頭になかったのか。
本当の血縁だけで過ごしたかったのか。
要は誘われなかったのだ。
打診すら無かったと言ってもいい。

同じことをする人間を私は知っている。
かつて、義理の姉だった人間だ。
親のお金で店屋物を頼んだり、テイクアウトを買ってきても、同じ敷地内に住む私たち夫婦には一切声を掛けず、自分たちだけで楽しんでいた。
気が向いてお裾分けを寄越すこともあったけれど、自分たちが苦手なものとか、子供たちが食べ残したものとかそんな感じだった。
イベントごとにも呼ばれたこともなかったし。
お祝いだけは渡していたから形ばかりのお返しはもらったけれど,
気持ちがこもっていないことは一目瞭然だった。
どうして好きになれようか。
怒りと嫌悪感を押し殺し、
耐えていた日々だった。

優しい彼曰く、入籍した日も、
お姉さまから
「お寿司でも取ろうか」
と打診があったらしい。
彼は私と母と過ごすことを選んでくれたので、
その日は母と私と三人で食事をしたのだけれど、
彼がそれはいいね、とお返事していたら、
私と母はいつも通り、二人でいつも通りの食事をしていてのではないだろうか、というところまで疑ってしまうのだ。
(実際、二人でおいで、とは言われていない。)

トラウマの海は暗くて深い。
全く光の届かない暗黒の闇だ。
一度飲み込まれたが最後、なかなか抜け出すことができない。
傍目には向け出せたかのように見えるかもしれないけれど、
必死の力で思い出してしまったつらい気持ちに蓋が出来ただけの事なのだ。

優しい彼のお姉さまは本当は優しい人なのかもしれなくて、私が思っているように気持ちではないのかもしれない。
恨むべきは、元夫の長姉たる人間だし、
それに何も言ってくれなかった義理の母たる人間と、見て見ぬ振りを決め込んでいた元夫である。
穿った目でしか、人を見ることができない人間に私をした人たち。

いつもは蓋をして見てはいけないもの、見ないようにしているものが、蓋を押し上げ、私に襲いかかってきた。
そのどろどろの真っ黒いものに、
飲み込まれそうになるのを必死で耐えている。
優しい彼は仕事に行っている。
帰ってきてから話をする予定だ。
ドロドロと真っ黒いものが渦巻く私の気持ちが、
少しでも凪ぎますように。


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