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鳥たちの鎖に 【詩】

早朝に目覚め
青味がかった空を見て
もう少しすれば
明瞭になるだろう
この世のこと
あの世界のこと
昨日の
夕暮れ時の
バルコニーのざわめきが
思い出せない
なぜあそこにいたのか
思い出せない
クロワッサンをちぎる
ボロボロと零れ落ちる
そろそろ虹がかかる時刻
そんな感情は
自分のものではないと
子どもらの遊戯のように
森の枝にからまっていく
純粋な光が
夏の蝶を追って
くさはらを行った先には
ニッコウキスゲが揺れている
そればかりが揺れている
湖は遠く
胞子がゆるやかに飛び
その鳥の影に
僕らの記憶はなく
雲の向こうに
もうひとつの世界があるように
鎖となって
鳥たちはどこへ
可聴域の外へ
もうちりぢりになって
鳥たちの鎖は
どこかへ消えてしまい
遠雷が聞こえている

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