実存

教授のウワゴト
今日もつまらなかった
汗がジトジト
この電車　冷房が効いてない
ボーっとして
降車駅を逃した
カラダが動かない
もう限界　終着駅まで行く
この先は海
もう線路がない
車掌がジロジロ見ている
重量級のカラダを持ち上げ
アシを引きずる　改札を出る
太陽がギラギラ

（あたしのカラダ、パンクしそう）

海のにおいがする
いや　アタシのにおいか
ウエ　気持ちわるい
塩が吹き出して
ワカメがこびり付いている
ああ　ここは海水浴場か
でも右手は高層ビル
ハワイみたいだ
腐敗したイソギンチャク
太陽ギラギラ

（あたしのカラダ、パンクしそう）

ここの海の家
客が誰もいない
メニューは3種類
塩ラーメンでもいただくか
ああ　ダメダメ
ほんとうにパンクしてしまう
けれどアタシの欲望は限りない
七転八倒するタコみたい
けれど我慢強い
ものすごいエネルギーで抑圧してる
圧力鍋みたい

（あたしのカラダ、パンクしかけてる）

フランス文学に
こんな登場人物いたかな
ハハ
フランス文学専攻だなんて
笑われそう
就職できそうもない
アタシは虚構の世界でイキル
詩や小説を書いて
現実世界に対抗する
それにしてもスゴイお天気
太陽ギラギラ　汗ジトジト

（あたしのカラダ、パンクしかけてる）

喉が渇いた
お腹が空いた
もう行き場を失ってる
出口なし
実存は本質に先立つ
教授がそう言ってたけど
気分サイアク

（あたしのカラダ、もうパンクする）

あ
嘔吐がはじまる
そう
実存
実存には勝てない
太陽ギラギラ　汗ジトジト
これってサルトル
つまりゲロ
もうカラッポなのに
気持ち悪い
これがアタシの実存なの？
カラダじゅうに悪いデンキが溜まってる
現存在
アタシに触れたものみんなカンデンシ
世界内存在者
それも重量級
教授の言葉がヨミガエル
これってスゴイ
嘔吐するアタシは哲学者
哲学者