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繭 【幻想詩】

雨ズカズカ

僕たちは
繭を眺めていた

縁側で
ふたりきりで
眺めていると
耳がこだました

雨ドボドボ

君の背に
触れてみると
妖しい感触の
糸状のものに
触れる
湿っている

耳をつんざいていく
雨音

バサラのヤカタ
クレイジイなオサムライたちが
静かに
暴れていた
そのお屋敷で

 姫さまが
 虎の声を出してみたり

 お坊さまが
 鶯の毛皮をかぶっていたり

雨シュラシュラ

襖紙に
咲き乱れる蘭の花の
その向こうには鶴がいて
糸を紡いでいる
いろんな動物の影が吠えていて
刀を振りまわしているオサムライの
影も見えた

(お茶をお入れしますか)

ドカドカ ドカドカ

(そこらを駆けずりまわっているのは
 お大名の方でしょうか)

雨しゅわしゅわ

襖を開けたのは
ベンガルから来た白い巨象

(おふざけがすぎますよ お殿さま)

光球が
トビチガッテイルノデ
もう夜でしょうか
あれはホウタルでしょうか
ヒトダマでしょうか

 みんなガラクタ

あなたの口からほとばしる
繭が
ほんのり染まっていて
あたたかい

 オサムライたちは
 みんな壊れていた

(着物を取っていただける?)

(あたたかいものが見えます)

(あれは繭ですか)

(そのうちに わかります)

なんだか
あちこちで
フワフワしています

(雨は止んだのですか)

仏間に舞っている
むすうの糸屑
バサラヤカタに集まってくる
塵のような幼虫

(背中が破れていますよ
 お姉さま
 何かが出てきますよ)

粉が舞いはじめていた

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