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自由な形式で書かれた詩を収めています。幻想的な詩、物語的な詩、ナンセンスな詩など。
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記事一覧

円 【詩】

さいきんは 社会というものに興味をなくして 円を描いています 裏庭にきつねがおりましてね …

汐田大輝
2日前
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高地は晴れている 【詩/環境文学】

さわやかな朝 吹き抜ける風 (今日も夏日の予想) こころをしずめて 明るい丘陵を崩してい…

汐田大輝
4日前
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マルゲリータ 【詩/現代詩】

見えない矢が かたちのない速度が 光の束になって (どきゅん どきゅん) 純正の イロガミ…

汐田大輝
8日前
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花の下 【詩】

火曜日 満開だった 自動車整備工場の裏 市役所も知らない 名所に ことし最後の 花が咲き 壊…

汐田大輝
13日前
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測量 【詩】

まみやりんは 電柱に張りついたまま すれ違っていく電車を 眺めていたものだった それは ある…

汐田大輝
2週間前
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円環 【詩/現代詩】

少しずつ 始まりに 近づいている (君もその一部なのだから) 朝になると 数知れない鳥が 空…

汐田大輝
3週間前
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世界 【詩/ショート神話】

1. この世界がまだ クリームスープだった頃 神々の夢は かたちを持たなかった オノマトペの豪雨は果てしもなく 顔のない妖怪みたいだった 2. この世界がまだ やわらかなスパゲティだった頃 バター漬けにされた 頭や指 眼や鼻や唇 喉元に心臓 毛むくじゃらの胴体や 脚の爪の先までもが あぶらの臭いをさせて 原初の海に呑まれていった 3. この世界がまだ 山盛りのアスパラガスだった頃 ミコトノリが 寄り集まって さばえなすざわめいた 岩礁にはりついた ハマボウフラ

ケー子先生 【詩/現代詩】

僕らの州都は 地面から 3メートルは低かった 晴れの日でもうす暗く 気温は かがんだまま推移…

汐田大輝
3週間前
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ゆでたまご 【幻想詩】

春うららかな一日 街じゅうの頭の中が ビー玉のように鳴っている おかしなすり鉢の中に入れて …

汐田大輝
1か月前
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京都 【詩/現代詩】

ブリキのアパートをくぐり抜け 藪医者の表札をやり過ごせば お屋敷の並ぶ界隈 お寺も神社もな…

汐田大輝
1か月前
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日本の深層 【詩/現代詩】

(月光仮面は  まがいものであった  黄金バットとともに  子どもたちをだまくらかし  昭和…

汐田大輝
1か月前
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視力 【詩/現代詩】

僕の視力は 標準視力なので だいたい 1.5はあります (ほんとをいえば  平均よりはだいぶ…

汐田大輝
1か月前
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春の一日 【幻想詩】

晩春の路面電車は 半分透きとおっていて もうほとんど レールを踏み外して とろり とろりと …

汐田大輝
1か月前
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夜から来るキカイ 【詩/現代詩】

いつの頃からか 毎夜のように 訪れるようになった あの方が カシャカシャと音を立てて 月のない夜になると 長い砂浜を這って 砂まみれになって 真っ暗な方から 海の方向から 見えない波音が 少しずつ輪郭をあらわし 月のように冷たく だんだん数が増えて コールタールのように 黒い水のように わたしの眠る方へ 眠りかけの小屋の方へ カシャカシャと音を立てて 壊れかけた機械の音 それは毎夜のように カマキリに似たかたちの 6本脚の影 コールタールのにおい わたしの眠る部屋に 静かに忍