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電車 【幻想詩】

その時刻になると
僕たちは
床にはりついて
夕方の音を聴いていたのです

(ガタン ゴトン ガタン ゴトン)

電柱の影が
よぎっていき 薄暗い
銀座のカフェから漏れる
明かりみたいでした

(ガタン ガタガタ ガタゴトン)

とても巨きくなったり
小さくなったり
伸び縮みする
烏賊のようでありました
子どもらは甘い桃を食べています
甘い汁が窓を濡らすのです

(ポワン ポワン ポワン)

警笛が
枕木に寝転んだ
仔豚を追い払おうとしています
乗客はみな
居眠りをしているので
子守唄のように聞いていたのです

だけどこの先には

もう線路はないのです
真っ暗な海です

(ザザザザザ ザブン)

巨きな蛸が
絡みついていて
動けないでいるのです

(2024.5.11 修正)

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