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書道合宿の教え ~ 3本の「一」


以前、書道合宿にはまっていた。合宿形式でしか指導しないという謎の先生に興味を持ち、何回か参加していたのだ。

先生の書道は、「一」を一枚の半紙に3つ並べて書くのが基本の練習だ。単純にみえてこれが非常に奥深い。「一」がうまくなると、練習していない他の字も自然とうまく書けるようになるのが不思議だ。線がすべての文字の基本だということがよくわかる。

そして一枚の半紙の中に、上下左右の余白が均等になるように3本の「一」を配置しなければならないため、バランス感覚も磨かれる。また、墨汁は最初に1回しかつけてはならず、すっすっすっとよどみなく3本の線を引く筆さばきも要求される。

先生の書道の教えは「くせのない文字を書く」ということだ。「美しい」とは「くせがないこと」だと、キムタクを例にあげて説明してくれた。キムタクの顔が美しいといわれるのは、左右対称でバランスが整っており、くせのない顔であることがその要因だという。へえ、なるほど、と思った。

そういえば、小林正観さんも「最高級の日本酒」の話で同じことをいっていた。最高級の日本酒といわれる「越乃寒梅」は、飲んでみると水のようでまるで特徴がないのだそうだ。人間も同じで、人格者とよばれるような人ほどくせがない、と。

「一」は、たった1本の線を横に引くだけなのに、筆の入りや引っ張り方、最後のトメなどにくせがでる。力が入ると、線が右肩上がりになる。すっとまっすぐな横線をひく、これが思いのほか難しい。先生の「一」は、まったく力が入っておらず太さも均等でまっすぐだ。

「一」を書きながら、ひとつひとつ自分の中のくせをなくしていく。この試みがなかなか楽しい。


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