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きらきら

※小川糸さんの著書「ツバキ文具店」のネタバレあります

ことしはすっかり小川糸さんに心酔している。

昨日、「ツバキ文具店」を読み終えた。
NHKでドラマ化もしていたので、タイトルはよく知っていたのだが
映像化されたものはなんとなく敬遠するという意味のない性質のせいで、こんな名作から自ら遠ざかっていたとはなんとももったいない。

鎌倉で小さな文具店を営む鳩子は、その傍ら、先代(もとい祖母)に厳しく仕込まれた”代書”の生業もしている。ときに恋文、かつての恋人への手紙、絶縁状から亡き人からの便りまで。あらゆる依頼に応じて、描く文字から筆記具や切手そして文面を考え抜いて、世界でたったひとつの手紙をしたためていく。

まず手紙フェチのわたしとしては、悶絶ものの仕事である。
代書屋さんなんて!響だけで最高!

この鳩子の代書業が話の中心となっていて、これだけでもかなりの読み応えなのだけど、主人公自身がちょっと謎めいていてそこがまたいい。

詳しくは明かされないが時折ほのめかされる海外放蕩の黒歴史、先代との確執、生き別れとなった母の行方・・・

次々と登場する人物たちも、いい意味で実態がはっきりしすぎない、鎌倉の精霊たちのような不思議な存在感を放っているのだ。
小川さんの作品やエッセイは、ニックネームの付け方にすごく愛とユーモアが溢れていて好きだなぁといつも思うのだけど、本作もその本領が遺憾なく発揮されていたと思う。

バーバラ婦人に始まり、マダムカルピスとこけしちゃん、パンティーなんてトリッキーなお名前も。
なかでも鳩子のよき友であり人生の大先輩でもあるバーバラ婦人が語った大好きな”魔法”が、表題の「キラキラ」だった。

心のなかで「キラキラ」と唱えるだけで、気分がよくなるという魔法。

わたしからのプレゼントよ、という粋な一言を添えて、主人公に話す婦人のかっこよさも相まって、大好きな場面になった。

きらきら、きらきら

次作の「キラキラ共和国」をはやく読まなくちゃ。


2020.10.6   shiori

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