私がイギリスの大学院にオンライン留学した理由 ②(学校探し編)
こんにちは。岸 志帆莉です。
私は2014年から2016年までの2年間、オンラインでイギリスの大学院に通い、教育学修士号(MA in Education)を取得しました。
今でこそ外出自粛の影響などもあり、オンライン学習はかつてないほどの注目を集めています。しかし私が大学院探しをしていた2013年当時は、オンラインはもとよりデジタルラーニング自体がまだあまり普及していませんでした。ましてや大学院にオンラインで通うなど、周囲はおろかインターネット上ですらほぼ前例がない状態でした。まさしく孤軍奮闘で幕を開けた挑戦でしたが、しぶとく2年間通い続け、2016年に無事修了することができました。
今後、学びのオンライン化はさらに加速していくことが予想されます。そんな中で、私のささやかな経験が今後誰かの役に立つこともあるかと思い、当時の経験を振り返ってみることにしました。
本記事では、私がそもそも大学院に進むことを決めた動機から、イギリスのオンライン大学院という選択肢に落ち着いた理由、さらに最終的にコースを決定するまでの道のりを全3回のシリーズに分けてお届けします。
2回目となる今回は「学校探し編」として、当時海外で徐々に広がりを見せていたオンライン大学院の中でも、とりわけイギリスの大学院に魅力を感じた理由についてお話ししたいと思います。
なお前回の記事はこちらです:
では本編に参ります。
私が修了したプログラムはこちら
UCL Institute of Education - MA in Education
(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン教育大学院 教育学修士課程)
http://www.ucl.ac.uk/ioe/courses/graduate-taught/education-ma
まずは私が修了したプログラムについて簡単にご紹介しておきます。
UCL Institute of Educationは、イギリスの名門大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)傘下の教職専門大学院です。イギリスの大学評価機関であるQS世界大学ランキングでは、教育学部門において、2014年から毎年連続で世界第1位にランクされています(2020年現在)。同大学では教育学に関するプログラムが多数開講されており、そのうちほとんどが完全オンラインによる受講に対応しています。私が修了したのは、そのうち最も包括的かつスタンダードな教育学修士号(MA in Education)というプログラムです。
なぜ海外の大学院にしたのか
今回大学院選びをするにあたり、私の中で譲れないポイントが3つありました。それは、
1.オンライン完結型(=通学の必要が一切ない)プログラムであること
2.世界で通用する学位が得られること
3.出願プロセスがシンプルであること
これら3つのポイントを優先して大学選びをした結果、海外の大学院に選択肢が絞られていきました。これら3つが当時の自分にとって譲れないポイントであった理由と、そこから海外大学院に目を向けるようになった経緯について説明していきます。
1.海外大学院はオンライン完結型プログラムの選択肢が豊富
2013年当時、海外ではイギリスなどの英語圏を中心に、既にオンラインで卒業できるプログラムが多数開講されていました。オンラインで卒業できるということは、すなわち通学の必要が一切ないということです。普段の授業はもちろんのこと、試験や担当教官との面談等も基本的に全てオンラインで完結します。最初から最後までキャンパスに通学する必要が一切ないという、多忙な社会人に優しいシステムとなっています。
そもそも今回私がオンライン完結型に強くこだわった理由は、前回の記事でお話しした通り、当時既に社会人で家庭を持っていた私にとって、夜間に毎日通学することは実質不可能であったためです。毎日仕事の後に疲労困憊の体にムチを打って通学することは負担に思われましたし、家庭のことを考えても、夜の貴重な家族の時間を犠牲にしたくはありませんでした。
この時点で実は、国内の選択肢がほぼ消滅してしまいました。というのも、2013年当時、オンラインで卒業できる教育学分野の修士コースは私が調べた限り日本に存在しませんでした。郵送による通信教育型(テキスト配布+論文執筆)のコースはわずかに開講されていましたが、当時の私はあくまで「オンライン」という形態にこだわりたいと思っていました。当時、MOOCs等に代表される大学授業のインターネット配信がスタートし、注目を浴び始めていました。オンラインで講義を視聴したり、他の生徒達とオンラインでディスカッションをしたり、共に課題やプロジェクトに取り組んだりといったオンラインならではのアクティブな学び方に大きな可能性を感じ、同じような形式で学位も目指せるのではないか?という考えがあったからです。そこでリサーチしたところ、海外大学を中心にそのようなプログラムが多数開講されていることを知りました。そこから海外大学のオンラインコースに目を向けるようになりました。
2.世界で通用する学位が得られる
グローバル化が加速していく現代社会において、国内だけでなく海外でも通用する学位を持つことは非常にパワフルな選択肢です。私の場合、勤務先が外資系企業であることや、将来海外生活を余儀なくされる可能性がゼロではないことなどから、これから目指すなら国内外で通用する学位が望ましいと考えました。
しかし今現在そのような環境にない方でも、世界で通用する学位を持っておくことに損はないと思われます。仮に今後ずっと日本国内のみで働いていくつもりでも、それは例外ではありません。様々な業界で、海外企業との資本提携や経営統合などの動きが進んでいます。また昨今、かつてないスピードで外国人労働者が日本国内に流入しています。今後、外国籍の人々が上司やお客様になるということが起こるかもしれません。学位のあるなしに関わらず、海外の教育機関で一定期間学んだ経験を持っていれば、その経験やスキルは今後多くの場面で活かしていけると思います。
3.出願プロセスがシンプルである
この点の重要性については、多忙な社会人ならば説明の必要はないかもしれません。 大学院への出願には多大な時間と労力を要します。一つ一つの出願先に合わせて入念にリサーチを行い、受験対策を練り、必要書類を揃え、願書やエッセイの内容を出願先に合わせて一つ一つカスタマイズする等々……。社会人でなくとも骨の折れるプロセスです。そう考えると、出願プロセスはシンプルであるに越したことはありません。
海外大学の場合、国によっては公的機関などが間に入って各大学への出願プロセスを一元管理していることがあります。例えば後述するイギリスの場合、「UCAS」というシステムによってイギリス国内の殆どの大学への出願プロセスが一元化されています。また隣国フランスでも、キャンパスフランスという政府機関が窓口となって、フランス国内の各大学への出願手続きを一元化しています。このような場合、出願にかかる一連の手間が大いに省略できるので、多忙な社会人にとっては時間と労力の節約になります。
なぜイギリスの大学院にしたのか
ここまで、海外大学院を検討するメリットについてお話してきました。前述の通り、当時すでにオンライン大学院が徐々に海外で広まりを見せていたわけですが、私は最終的にイギリスの大学院のみに絞って受験をすることにしました。ここからは、海外大学院の中でも特に私がイギリスの大学院に惹かれた理由についてお話していきます。理由は大きく分けて二つあります。
1.オンライン教育の体制が他国と比べて圧倒的に充実している
2.出願プロセスがとにかくシンプル
という二点です。
イギリス大学院のメリット①:オンライン教育の体制が充実している
イギリスは通信教育大国といえるほど通信教育に関して長い歴史を持つ国です。イギリスの高等教育機関は、過去数百年にわたり世界中で通信教育を提供してきました。その原型は大航海時代まで遡ることができますが、現代の私たちがよく知る通信教育の形が始まったのは19世紀中頃のことです。第二次産業革命の混乱期の中で、当時イギリスの地方都市には、高等教育を受ける機会に恵まれなかった労働者たちが大勢いました。そのような状況を憂慮したオックスフォード大学やケンブリッジ大学の一部の教員たちが、自主的に各地方都市を訪れ、拡張講義(extension lectures)を提供する活動を始めました。以来現代に至るまで、遠隔教育に関する膨大なノウハウがイギリス国内の教育機関に蓄積されていきました。21世紀の現在、それらのノウハウはオンライン教育という形で花開くことになります。
私が大学探しをしていた2013年時点で、既にイギリスには100%オンライン完結型の大学院プログラムが多くの分野に存在していました。日本の放送大学にあたるOpen Universityだけでなく、オックスフォード大学やケンブリッジ大学といった世界に名立たる名門大学までもが、オンライン完結型のプログラムを数多く開講していました。(※なお、多くの大学のオンラインコースは厳格な基準のもと運営されていますが、中にはディプロマミルといわれる無認可の教育機関によるコースもありますのでご注意ください。これから学校選びをする場合は、検討している大学がいわゆるディプロマミルにあたらないかどうかきちんと確認されることをおすすめします。)
ただしオンライン完結型のプログラムが魅力的とはいえ、教育の質が保証されていなければ意味がありません。その点、イギリスの大学が提供するプログラムの多くは、教育の内容および質についても納得の行くものが多い印象でした。多くの大学において、オンライン受講を理由とした採点基準の緩和や、授業数の免除といった特例は一切設けられていません。プログラム構成から必要単位数、採点基準に至るまで、通学制の場合と何ら違いはありません。逆に言えば、オンラインだからといって手加減や容赦などは一切ないということになります。厳しい環境であるとも言えますが、裏を返せば、それだけ質・評価ともに保証された環境で学ぶことができるということです。
オンライン授業を実施する上で欠かせないテクノロジー面においても、イギリスの大学院では先進的な取り組みが多く見られました。リアルタイムに講義を視聴出来るのはもちろんのこと、他の生徒とオンライン上でディスカッションをしたり、協働のプロジェクトや作品に取り組んだりなど、2020年の現在でこそ当たり前と思われるようなことも、2013年当時の社会では決して当たり前ではありませんでした。このような最先端の教育テクノロジーを学習者として実際に体感してみたいと思ったのも、イギリスの大学院を志した大きな理由です。
イギリス大学院のメリット②:出願プロセスがとにかくシンプル
私がイギリスの大学院に惹かれた最後の理由は、他国と比べて圧倒的にシンプルな出願プロセスです。その理由の一つが、前述した「UCAS」と呼ばれる大学出願の一元管理システムです。これにはイギリス国内のほとんどの大学が参加しており、受験者は各大学へ願書を都度送付しなくとも、一つのシステムから複数の大学に併願することができるようになっています。個人情報や履歴書などの必要書類を最初に登録しておけば、全ての大学に対してその情報を使用できることになります(※ただし、志望動機はもちろん大学ごとに用意する必要があります)。
また多くのイギリスの大学では、推薦状の提出が二通で済む点も魅力でした。「そもそも推薦状とは?」という方のために簡単にご説明すると、欧米の大学院では出願の際、他者からの推薦状の提出が複数求められるのが一般的です。通常、学部時代の恩師や会社の上司などからもらうことになります。これが中々骨の折れる作業で、大学の先生だとご所属が変わられていたり、ご高齢の先生だとご退職されていたりと、一筋縄ではいかない場合があります。また多忙な上司に推薦状を用意していただくのも実際気を遣います。実際に経験がおありになる方は、二通の推薦状をかき集めるだけでもわりと大変だという事にご同意頂けるのではないかと思います。日本の大学院の場合、推薦状は必須でない場合があるのでこの点はメリットです。逆に、アメリカなどは三通が基本のところが多いので、推薦状集めは一つの関門になりそうです。
UCL Institute of Educationに決めた
大学選びにおいて譲れない3つのポイントを軸に、時間をかけて理想の大学院を探し求めた結果、3つのプログラムが最終候補に挙がりました。一つは、レスター大学のMA International Education、そしてバース大学のMA Education、そしてUCL Institute of Education のMA Educationです。この中で私は、最終的にUCL Institute of Education のMA Educationを選択しました。今振り返ると、私にとっては最良の選択だったと思っています。
次回の「学校決め編」では、これら3つのプログラムの中から私が最終的にUCLのプログラムを選んだ理由について、詳しくお話ししていきます。
ちなみに2020年現在、日本国内でもオンラインで卒業できる大学の選択肢が随分と増えてきています。もしもご自身が目指す分野で日本の大学の選択肢が見つかるようであれば、それらも含めて比較検討をされるのが一番良い方法だと思います。国内外両方の選択肢を比較できる現在は、大学院進学を検討される人々にとってとても恵まれた時代だと思います。可能であれば、日本と海外両方の選択肢を比較して、是非ご自身にとって納得のいく選択をして下さい。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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つづき「学校決め編」はこちら:
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