見出し画像

間違いの街の天邪鬼

 僕の住んでいる街は色々とおかしい。

 お兄ちゃんがいる子は、必ず忘れ物をしてお兄ちゃんが自転車で追いかけてきてくれるし、お姉ちゃんがいる子は、姉妹で別方向に池の周りをぐるぐる回って何回顔を合わせるか数えている。

 ご近所さんの中にはウサギの番の数を数える人がいたり、パイナップルを見て興奮する人がいたり、5回に1回の確率で帽子を忘れてくる女の子がいたりと、とにかく変な人が多いのだ。

 テレビでやっているのはいつも3つのドアから景品のあるドアを選ぶゲーム番組である。出演者は必ず、答えを変え続けるから終わることがない。

 碁盤の目のようにきっちりと区画整理されたこの街では、常に人々は最短経路で目的地へと向かう。そのくせ皆ずっと同じ速度で歩いたり走ったりするのだ。もっと急いだらいいのに。

 周りの人は皆、生まれも育ちもこの街らしいが、僕は違う。隣街からぶらぶらと歩いていたら分かれ道に出会って、そこで謎々に付き合わされた結果、この「正確な街」に辿り着いたのだ。

 僕は悪戯心のままに、街で一番目立つところに看板を立てた。そこは、街のルールや議会で決まったことなどが書かれる掲示板のような役割をしているため、多くの人がその区画で1分間足を止める。

「間違いの街の人間は皆嘘つきである、と間違いの街の人間が言った。」

 僕は颯爽と家に帰った。その日の夜、街中から狂った叫び声や喧嘩の声が聞こえ、しばらくして止んだ。

 翌朝、僕はいつも通り家を出ると、街中が血の海となり、全員が死んでしまったことに気づく。「正確な街」は壊れてしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?